2019年07月27日
ライスター全盛期のクールな超絶技巧を堪能、シュポーアのクラリネット協奏曲全集
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オルフェオ・レーベルが始めた廉価盤シリーズの新譜になり、これまで個別売りだったシュポーアのクラリネット協奏曲全4曲を纏めた2枚組になる。
カール・ライスターのソロ、ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス指揮、南ドイツ・シュトゥットガルト放送交響楽団による1983年のセッション録音である。
音質も良くデ・ブルゴスの巧みなサポートで、ライスター全盛期のクールな超絶技巧が堪能できるセットだ。
こうしたパガニーニばりのヴィルトゥオジティを前面に出した作品は、カリスマ性を持った名人が演奏するのでなければ、これでもかというテクニック誇示の連続にうんざりしてしまう。
流石にライスターの流暢で目の醒めるようなソロには聴き手を飽きさせないだけの音楽性の裏付けがある。
ルイ・シュポーア(1784-1859)の作曲家、ヴァイオリニストとしての活動期間は、ほぼヴェーバーやシューベルトのそれと一致しているが、この2人に比べると傑出した大作に欠けているために、いわゆる大作曲家とは見做されていない。
しかしこの4曲のクラリネット協奏曲では彼の多彩な感性を名人芸の中に織り込み、クラリネットの表現力を最大限発揮できるように作曲されている。
勿論モーツァルトやヴェーバーの協奏曲に比較すれば、いくらか饒舌な面が無きにしも非ずだか、愛好家のための楽しみの音楽としては第一級の作品と言えるだろう。
また彼は室内楽のジャンルでも天性の器用さを発揮して、アンサンブルのためのレパートリーを充実させる魅力的な作品群を遺している。
カール・ライスター(1934-)は1959年にベルリン・フィルに入団して以来、カラヤンの下でオーケストラの黄金時代を築いたスター・プレイヤーの1人で、1993年の退団まで同楽団の首席クラリネット奏者として君臨した。
ウィーン・フィルのプリンツが亡くなって久しい現在では、現役クラリネッティストとしてはおそらく最長老だろう。
筆者が彼の演奏を最後に聴いたのは2014年で、ライプツィヒにあるメンデルスゾーンの家で毎週催される日曜コンサートにたまたま出演していた。
その時はベートーヴェンのピアノ・トリオ『街の歌』を演奏したが、音色にはやや翳りが出ていたにも拘らず、切れの良いテクニックは相変わらずだったことが思い出される。
ちなみにこのベートーヴェンの作品はフルニエ、ケンプとのキャスティングによるセッション録音がドイツ・グラモフォンからリリースされたベートーヴェン・エディションに組み込まれた。
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