2019年11月06日

無伴奏の普遍性と融通性、ハーゼルゼットのトラヴェルソによるバッハ


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このディスクにはオランダのトラヴェルソ奏者ウィルベルト・ハーゼルゼットの演奏によるバッハの無伴奏チェロ組曲第1番から第3番までの3曲と、無伴奏フルートのためのパルティータイ短調の都合4曲が収録されている。

この中でバッハがトラヴェルソ用に書いた作品は後者の1曲のみで、その他はハーゼルゼット自身の編曲になる。

チェロ組曲はその優れた対位法的な骨格から他の楽器でもしばしば演奏される曲集で、フルート用にアレンジされた楽譜も出版されているが、それは現代のベーム式フルートのために編曲されたものだ。

バロック時代のトラヴェルソで演奏する場合にはその調性に適った選曲と音域に合わせて手を入れることが不可欠になってくる。

ここでは6曲の組曲の前半3曲が選ばれ、ハーゼルゼットのアレンジによって、和音を分散形にしたり音域を適宜オクターヴ移動させることによって原曲の持ち味を活かしながら、楽器に無理のない音楽表現ができるように工夫されている。

編曲物であってもバッハの音楽の普遍性とその融通性に改めて納得させられる演奏だ。

使用楽器は組曲ト長調BWV1007にはクヴァンツのポツダム・モデルを使用している。

これは2キー・タイプでピッチはa'=387Hz、ニューヨークの製作家C.フォルカース&A.ポウェルの手になるコピーだ。

また組曲ロ短調BWV1008ではベルギーのデ・ヴィンネのコピーになるデンナー・モデルのワン・キー・タイプでこちらのピッチはa'=392。

そして組曲ハ長調BWV1009及びパルティータBWV1013はアラン・ヴェーマルス製作のI.H.ロッテンブルグのワン・キー・タイプというように楽器の選択にもかなり凝っている。

それはそれぞれの曲の調性と音域に見合ったトラヴェルソの機能を充分に発揮させるためにハーゼルゼットが使い分けたためだろうが、結果的に三種の笛の音色を堪能できるという趣向にもなっている。

最後に置かれたパルティータイ短調は第1楽章のアルマンドでトラヴェルソの最高音a'''が出てくる難曲だが、ハーゼルゼットは後半部の繰り返しを省略して、最後の最高音を老獪とも言える絶妙なテクニックで消え入るように演奏している。

この方法によって、この音だけが突出して組曲としての継続感を妨げることを避けている。

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classicalmusic at 12:08コメント(0)バッハ  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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