2021年08月12日

バスティアニーニを聴くための『外套』


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1953年ハンブルクにおいてバスティアニーニはプッチーニ3部作のひとつ『外套』のミケーレ役を歌った。

彼がこの役柄をレパートリーに加えたのはこの時が初めてだったが、これ以外にセッションは勿論、ライヴにも残された録音が見当たらないので、その後もこのオペラを歌う機会には恵まれなかったようだ。

このディスクはその折にハンブルクで収録されたラジオ放送用のモノラル・ソースから制作されたらしく音質は決して悪くはない。

当然モノラル音源になるが、ライヴ特有の雑音や拍手は全くないので、おそらく同地でバスティアニーニのデビュー公演があった時のセッションと思われる。

メンバーは流しの歌手役のルイジ・アルヴァを除いてイタリア勢で固めている。

しかしアルヴァとバスティアニーニ以外は二流どまりの歌手で、演技としての歌唱という意味でもいまひとつというのが正直な感想だ。

シチリア出身のサルヴァトーレ・プーマはドラマティックな声を持っているが、いくらか融通の利かないところがあって表現も一辺倒だ。

トリエステのソプラノ、ノーラ・デ・ローザもこうしたキャラクターの心理や表情の変化を歌い出すには非力のそしりを免れないだろう。

コルドーネの指揮は職人的だが、そつなくこのオペラのドラマ性を描いているのは評価できる。

言ってみれば彼らはバスティアニーニを引き立てるために揃えられたスタッフという印象だ。

勿論彼のこの曲の唯一の音源でもあり、ファンであれば聴き逃せないコレクションに成り得るだろう。

録音当時のバスティアニーニは32才で、若い妻に裏切られた初老の男の愛憎をリアルに理解することはなかっただろう。

おそらく彼は非常にインスピレーションに優れていて、主人公ミケーレの旋律をどのように歌えばキャラクターの心理や作品のテーマを最も効果的に表現できるのか知悉していたのではないだろうか。

特に終盤で歌われるモノローグ「Nulla!...Silenzio!」は、若い頃から性格的な役柄に優れていたバスティアニーニの声と表現力が、ミケーレのおぞましい殺意に収斂していく心理を抉り出していて秀逸だ。

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classicalmusic at 14:27コメント(0)プッチーニ  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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