2020年01月27日

カーネギー・ホールのリヒテル、ベールを脱いだ幻のピアニスト


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このセットには正規音源からの初のCD化による1960年秋のリヒテル・カーネギー・ホール・ライヴ全曲がCD2から10に収録されている。

モノラル録音だがドレミ・レーベルの低音域ノイズとスクラッチ・ノイズが煩わしいCDに較べると全く別物だし、それに続く同年12月のステレオ・ライヴCD13から16の4枚をあわせた13枚だけでもリヒテル・ファンにとっては垂涎の的になるコレクションだろう。

これらは彼が45歳でアメリカ・デビューを飾った時の都合7晩のアンコールも含めた全リサイタルの記録で、会場に集まった聴衆の熱気が曲を追うごとに次第に高揚していく生々しいライヴだ。

当時のアメリカではまだ伝説的にしか伝えられていなかったリヒテルへの期待感が嫌が上にも高まっていたことは想像に難くない。

そうした期待に応えるかのように、この年の10月から始まった演奏旅行で彼は瞬く間に大陸を席巻し、堂々たる凱旋を飾ってそれまで西側諸国では幻のピアニストだったリヒテルの評価を決定的なものにした。

リヒテル壮年期の類い稀な覇気と、ややデッドだがオン・マイクで採音されたピアノの臨場感溢れる音響が直に伝わって来て、その後の彼が常に目指したライヴの理想的な姿を具現しているかのようだ。

プログラムの特徴は、20世紀ロシアのピアノ曲を多く採り入れていることで、それは自国の作曲家の作品に対する彼の自負でもあった筈だ。

たとえばプロコフィエフのピアノ・ソナタ第6番第1楽章では鉄杭を大地に打ち込むような強靭な打鍵に貫かれたパワフルなテーマが象徴的だ。

欲を言えばこのセットには5年後にリヒテルがカーネギー・ホールに戻って来た65年のライヴが欠けていることだろう。

版権が異なるためか現在入手できるCDは、4月15日のシューベルト、ブラームス、ショパン・リサイタルがドレミ・レーベルから、5月18日のリストのソナタロ短調がプラガ・ディジタルスからSACDで、それぞれリリースされているものの、聴衆の雑音は致し方ないとしても音源の質自体は海賊盤の域を出ていないのが残念だ。

勿論セッション録音の方も決して劣るものではなく、CD1の1曲目を飾るブラームスのピアノ協奏曲第2番は鮮烈なリマスタリングでこの演奏の価値を再び問い直している。

シカゴ交響楽団はラインスドルフによって緻密にコントロールされ、リヒテルは雄渾なスケールで力強いピアニズムを展開しているが、両者の張り詰めた緊張感の中に溢れんばかりのリリシズムを湛えている。

18枚の内訳は幸いこのページに総て掲載されているが、12月26日カーネギー・ホール・ライヴ全曲と28日のモスク・シアターでのアンコールを収録した既出のリヒテル・リディスカヴァード2枚組との曲名表記の違いがある。

既出盤のハイドンのピアノ・ソナタ第60番ハ長調はランドン版番号で、ホーボーケン第50番と表記されている同一曲だ。

尚バジェット価格盤にしては焼き直しではない英、独、仏語による写真入54ページの充実したライナー・ノーツが付いている。

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classicalmusic at 00:11コメント(0)リヒテル  

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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