2019年08月15日
ドビュッシーがオペラ化したメーテルランク『ペレアスとメリザンド』、カラー挿絵で復活させたい魅力的な対訳
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岩波文庫が企画した対訳本の第一冊目として1988年に出版された。
訳者杉本秀太郎氏が本書の追記でも述べているように、ここに掲載された対訳は1978年に湯浅書房版のために訳出したものからの改訳ということだ。
この作品の神秘と幻想性を良く捉えた、質の高い、しかも平易で分かりやすい自然な文体に訳者の力量が感じられる。
難解な表現や単語を一切避けて、あくまでも日本語の口語体の散文に相応しい会話に訳し出されているところを高く評価したい。
オペラのリブレットの対訳と同様、見開きの左側に原作、右側に訳文が置かれ、両文の内容的な整合性も2ページの中でぴったり収まっている。
欲を言えばこの戯曲の雰囲気をイメージさせる挿絵をカラーにして欲しかった。
廉価な文庫本に多くを求めることはできないが、1922年にカルロス・シュワップによって描かれた挿絵専用のオリジナル原画は、寡黙なこの作品に良く合っている。
またその時代のアール・ヌーヴォー調の作風には特有の懐かしさがある。
尚これも追記に明らかだが、ドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』に使われているリブレットとは若干の差異がある。
狩で森に迷いこんだ王子ゴローは、泉の傍で泣いているメリザンドを見つけ、妻とした。
ゴローの弟のペレアスもまたメリザンドに惹かれる。
彼らは互いの心に、二人だけの夢が宿っているのに気づくのだった。
いらだつゴロー…。
メーテルランク(1862‐1949)のこの戯曲に、ドビュッシーは美しい音を与えてオペラ化した。
オペラでは1幕一場、2幕四場、3幕一場、そして5幕一場が省略されているし、逆に3幕冒頭のメリザンドのアリア「私は日曜日に生まれた」はこの訳本にはない。
いずれにしてもそれは些細な改変で、ドビュッシーはかなり忠実に原作を音楽化しているので、オペラの対訳としても利用できるだろう。
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