2020年03月23日
生涯をバッハに捧げた人の演奏がここにある、ヴァルヒャ『平均律』再録音
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ヴァルヒャの演奏は一切の饒舌を避けた、バッハ音楽の真髄だけが光を放っているようなシンプルなもので、あたかも平均律の原典譜を目の前に提示されたかの感さえある。
それだけに解釈は断固として明瞭で一点の翳りも戸惑いもない。
それはあの伝説的な暗譜方法、つまり各声部を別々に暗記してそれらを頭の中で再構成するという驚異的な暗譜法に由来しているのかも知れない。
理知的でありながら冷淡でなく、彼特有の突き進むような情熱で満たされていて聴く者に幸福感を与える稀有な演奏だ。
彼がバッハオルガン音楽の権威であることは無視できないし、チェンバロの演奏表現にもそれが反映しているのは事実だ。
ただ彼の演奏はバッハの音楽の媒介者としてひたすら奉仕するという目的で、楽器の持つ特性や能力を超越したところで成り立っているように思う。
そうした意味では1回目の録音時と基本的な姿勢は変わっていない。
勿論彼がこの2回目の録音の為にオリジナル楽器を選んでくれたのは幸いではあるが。
ちなみにこのセッションに使われたチェンバロだが、第1巻ではヤン・ルッカースが1640年にアントワープで製作したものでピッチはa'=415Hz、フレミッシュ特有のシンプルで立ち上がりの良い、しかも輪郭の明瞭な音色が対位法の音楽に適している。
第2巻はジャン=アンリ・エムシュが1755年から56年にかけてパリで製作し、1970年にクロード・メルシエ=イティエによって修復された楽器でピッチはa'=440Hz。
こちらはバロック盛期の華麗な響きを持っている。
ヴァルヒャがヒストリカル・チェンバロを使用したのはこの『平均律』を含めてわずか2例で、もうひとつがシェリングと組んだバッハのヴァイオリン・ソナタ集になる。
それは当時博物館に収容されていた古楽器の大掛かりな修復が余儀なくされていた事情によるものと思われる。
音源は1974年9月に行われたアナログ録音だが、音質はそれぞれのチェンバロの音質の特色を良く捉えた優れたものだ。
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