2020年10月02日
反体制的作品とコンドラシン、ショスタコーヴィチ演奏集
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コンドラシン、モスクワ・フィルによるショスタコーヴィチ交響曲全集は本家メロディア盤が既に製造中止になっている。
法外なプレミアム価格を覚悟するか、個別売りで見つける以外にコレクションする方法がないのが残念だ。
ウラニアのリイシュー盤も再販の予定はないようで、いずれこのディスクも入手困難になるだろう。
ここに収録された3曲はいずれも当時のソヴィエト当局から睨まれたいわくつきの作品である。
大作の交響曲第4番はショスタコーヴィチ自身が初演撤回をした後、1965年にコンドラシンによって初演されているし、第9番はジダーノフ批判に曝されて汚名を着せられた。
また併録されたバス・ソロとコーラス付のカンタータ風バラード『ステンカ・ラージンの処刑』も隠された体制批判という印象を与える。
全曲音質にも恵まれたステレオ録音なので、コンドラシン・ファンには欠かせないコレクションに違いない。
今後これらのブルーレイ・オーディオ・ディスクなどの高音質盤が企画されることを期待したい。
亡命前のコンドラシンはモスクワ・フィルとショスタコーヴィチ交響曲全集を完成させた。
ムラヴィンスキーが第13番『バビ・ヤール』の初演を辞退してからは、その後の多くの作品の初演を飾った作曲家の最も良き理解者による演奏として価値の高い全集だ。
このディスクではムラヴィンスキー、レニングラード・フィルの恐るべき推進力とは異なった解釈で、ショスタコーヴィチの精緻なオーケストレーションと生々しいサウンドが忠実かつ明瞭に再現されている。
ムラヴィンスキーは反体制的な作品の演奏には消極的だったことが想像されるが、第13番では当局の検閲や初演への圧力で、目まぐるしいメンバーの交代があり、コンドラシンの全集でも歌詞を変更した改訂版での演奏を余儀なくされた。
『ステンカ・ラージンの処刑』もストーリーからすればかなり際どい内容を持っている。
逮捕されたコサックの首領ステパン・ラージン、彼はやはり反体制の象徴でもあるわけだが、その公開処刑の場面を劇的に描いた作品で、民衆は当初曳き回された彼に唾を吐きかけるが、次第にこの処刑に懐疑的になる。
秘密裡に亡命の機会を探っていたコンドラシンの下でタイトルロールを歌っているのが『バビ・ヤール』初演の筋金入りのバス歌手ヴィタリー・グロマツキーというのも決して奇遇とは言えない。
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