2020年04月19日
ブルーレイの音質がひときわ鮮やかなミケランジェリのドビュッシー
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レギュラー・フォ−マットのCD2枚にブルーレイ・オ−ディオ・ディスクを付けた3枚組で、勿論CDも新規にリマスタリングされている。
できればこうした抱き合わせ商法ではなく、ブルーレイ盤を単独でリリースして欲しかった。
音源は『映像』と『子供の領分』が1971年、前奏曲集第1集が78年、同第2集が88年なので第2集のみが初期デジタルで、その他はすべてアナログ録音だが、ブルーレイ盤では孤高の巨匠ミケランジェリが開拓した研ぎ澄まされたピアノの音色を鮮やかに再現している。
特に彼が得意としたドビュッシーでは、前奏曲集での千変万化する表現、移ろいゆく音色やクリスタリックな透明感から煌めくような輝きなどが次から次へと披露されていく。
ミケランジェリは、ピアノという楽器をいっそう繊細に響かせることにとりわけ熱心なピアニストだ。
その彼が持前の魔術を最高に発揮するのは、著しく制限の多い演奏会よりもむしろレコーディングにおいてなのだが、肝心の録音の数は非常に少ない。
このドビュッシーは堂々とした風格を湛えており、ピアノ的美観の極致を示している。
前奏曲集第1集での第2曲「帆」や第10曲「沈める寺」ではシュ−ルレアリズム的な感性が見事だし、後者の大伽藍を浮かび上がらせる造形的な奏法は感動的だ。
終曲「ミンストレル」のコミカルなタッチも彼の自在な表現力を示している。
第2集第3曲「ワインの門」のユ−モラスな酩酊をイメージさせる解釈も面白い。
『映像』からの「水の反映」では水の表面に輝く光彩を見るようだ。
また「金色の魚」の鋭利な感性を表出した描写も彼らしい。
『子供の領分』は実際子供達を楽しませるというより、高度な音楽的シアターといった趣を持っていて、この作品でもミケランジェリによって洗練し尽くされた奏法が駆使されている。
ピアノのソノリティに対して、特別に鋭敏な感覚をもったミケランジェリならではの名演である。
ミケランジェリのピアノを一言で評するなら、やはり《透徹のピアノ》であろうか。
彼はあらゆる音、あらゆるフレーズを明晰に奏でる。
加えて彼のピアノはしばしば誤解されがちな冷たいものではなく、時にしたたるような官能美を湛え、ドビュッシー一流のユーモアも十全に伝える。
タッチ、ペダリングなど技巧上の工夫と練磨が最高度であればこそ、このような名演が生み出されることは言うまでもない。
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