2020年05月09日
前代未聞の粘着的官能的ロマンティシズムの世界、バーンスタイン唯一のワーグナー・オペラ録音《トリスタンとイゾルデ》
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バーンスタインによるワーグナー・オペラ初録音にして唯一の録音。
またフィリップスへの初録音で、演奏会式上演のライヴ録音。
1984年度レコード・アカデミー大賞受賞盤。
バーンスタインは限られた場合にしかオペラのピットに入らない指揮者だった。
特別な機会だからこそそれと並行してレコーディングが行なわれることが多く、そのようにして作られた全曲盤がいくつかある。
この《トリスタンとイゾルデ》はコンサート・ホールのセミ・ステージ形式でライヴ録音されたもの。
バーンスタインは極端に遅いテンポによって、舞台上演では不可能なデフォルムされた音楽を聞かせる。
演奏会形式に近いだけに指揮者の個性が強く出て、遅めのテンポで濃厚な演奏が展開される。
この指揮者ならではの特異な解釈だが、一旦波長が合うときわめて大きな感動をもたらしてくれる。
これほど陶酔的なロマンティシズムで貫かれた《トリスタンとイゾルデ》演奏もあるまい。
バーンスタインの徹底した思い入れによって構築され尽くしたこの演奏は、まさにその思い入れの徹底性そのものによって一個の超然たる宇宙を形成している感。
テンポも桁外れなまでにに遅く、時として殆ど無テンポに近くなることさえある。
ここまで主情的なアプローチには異論も多かろうが、そこに醸成されるロマンは前代未聞の粘着的官能的ロマンティシズムの世界を浮き上がらせている。
ホフマン、ベーレンスの両主役の歌唱も見事、ヴァイクルのクルヴェナール、ミントンのブランゲーネもそれに劣らぬ名唱を披露している。
当時のドイツを代表するワーグナー歌手が集められているのだが、とにもかくにも「バーンスタインの」《トリスタン》である。
同時期の《ボエーム》も同傾向の演奏で、ファンにはたまらない。
まさにバーンスタインの魔力の極みといってよいアルバムだ。
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