2020年05月09日
モノラル時代のケンペ、シュターツカペレ・ドレスデン
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演奏水準から言うのであれば、この2枚組に収録された3曲も最高評価にしたいところだが、録音状態が他のレーベルからリリースされているケンペの代表的な音源に比べるとかなり劣っているのは事実だ。
このために入門者にはファースト・チョイスとしてお薦めできないが、ケンペの音楽やそのスタイルを既に知っているファンにとっては貴重なコレクションになり得るセットだろう。
彼は1950年からシュターツカペレ・ドレスデンのカペルマイスターに就任するが、彼らの録音活動は皮肉にもケンペがバイエルン移籍以降の客演という形が圧倒的に多い。
それは家庭へのオーディオ普及時代の到来と丁度一致している。
一方このディスクの3曲はいずれもケンペ在任中の数少ないモノラル音源で、メンデルスゾーンの交響曲第3番『スコットランド』は1952年、シューベルトの交響曲第9番『ザ・グレイト』は50年、ワーグナーの歌劇『ローエングリン』第1幕への前奏曲が49年の録音になり、仏ターラ・レーベルからの復刻盤。
音質に関しては恵まれていないが、この2枚のアルバムにはケンペ若き日の覇気に満ちた一途な情熱を感じさせる推進力がある。
シューベルトの『 ザ・グレイト』ではミュンヘン・フィルハーモニーを指揮した1968年のステレオ録音が名盤として知られていて、彼の円熟した指揮法が縦横無尽に発揮されているが、この旧録音は意外にも全体的なテンポは新録音より遅い。
しかし比較的素朴な解釈の中に瑞々しさと同時に第1楽章の終盤でみせるような情念の燃え上がるような激しさを伝えている。
ちなみに彼の振ったシューベルトの交響曲には他にバンベルク響との63年の『未完成』がある。
一方メンデルスゾーンの『スコットランド』はスプラフォンのオリジナル・レコーディングの表記があり、ケンペによる同曲のオフィシャル録音では唯一のようで貴重な復刻盤なのだが、やはり音質が欠点で特に第2楽章にはヒス・ノイズが多く含まれている。
バグパイプを模したクラリネット・ソロで始まる軽妙な曲想が颯爽と表現されているだけに惜しまれるし、最後の『ローエングリン』は鑑賞に堪える殆んどぎりぎりの貧しい音質なのが残念だ。
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