2020年05月30日
コンドラシン、コンセルトヘボウによる『英雄』ライヴ
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コンドラシンは修行時代に劇場指揮者としてのキャリアを積んだので、オペラやバレエなどの舞台用作品には百戦錬磨の手腕を持っていたが、モスクワ・フィルに移って初めて彼の本領が発揮されるオーケストラル・ワークへの研鑽の機会を掴んだと言えるだろう。
ディスコグラフィーを見る限り、彼のベートーヴェンの交響曲はここに収録された第3番『英雄』と第4番及び第8番の3曲しか見当たらない。
しかしここでは大曲としての構造を完全に掌握した明晰な解釈と堂々たる風格を備えた演奏は、ベートーヴェン指揮者としても第一級の腕を持っていたことを証明している。
第1楽章の颯爽とした開始と緻密なオーケストレーションの再現からも、彼の充実した音楽的構想を聴き取ることができる。
また対照的で劇的な変化が印象に残る第2楽章『葬送』は、通常比較的快速で進めるコンドラシンには珍しく15分ほどかけた、じっくりと構えたアプローチが特筆される。
ちなみに全楽章の演奏時間は約50分に及んでいる。
スケルツォのトリオでは特にホルンに聴かれる特徴だが、終楽章でも古色蒼然としたコンセルトヘボウの音色が生かされて、深みのあるスケールの大きなフィナーレを飾っている。
彼らが古い伝統を引っ提げたプライドの高い名門オーケストラだけに、この共演でもアンサンブルの安定感と共に気品を備えた拡張の高さが面目躍如だ。
コンドラシンがコンセルトヘボウ管弦楽団を振った一連のライヴは、当時オランダ国営放送協会によって録音され、音源の権利をフィリップスが買い取って当初9枚のLPでリリースされた後、8枚のCDにリカップリングして再発になったが、残念ながら現在総てが廃盤になっている。
いずれも客席からの雑音が若干混入しているが、音質の良好なステレオ録音なので是非グレードアップしたセットで復活して欲しいシリーズだ。
ちなみにこれらとは別に仏ターラから同メンバーによる3枚のCDが入手可能で、音源も幸い前者とだぶりがない。
尚このベートーヴェンの交響曲第3番『英雄』は、1979年3月11日に彼らの本拠地アムステルダム・コンセルトヘボウで行われたコンサートからのライヴで、コンドラシンが西側で遺した2曲しかないベートーヴェンの交響曲のレコーディングだ。
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