2020年06月19日
フランス音楽で聴かせるシェリングのダンディズム
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総てが1969年の録音で、シェリング円熟期の至芸が堪能できる1枚としてお薦めしたい。
また音質が驚くほど鮮明で、当時のフィリップスの録音技術の高さも示している。
収録曲目はサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番変ロ短調Op.61、『アヴァネーズ』Op.83、『序奏とロンド・カプリッチョーソ』Op.28及びラヴェルの『ツィガーヌ』の4曲でエドゥアルド・ヴァン・レモーテル指揮、モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団との協演になる。
ヴァイオリン協奏曲第3番は、この曲にぴったりの清らかさが音にも表情にも出て、懐かしさが心にしみこんでくるようだ。
ヴァイオリン協奏曲の第2楽章や『アヴァネーズ』に聴かれるようにそれほどロマンティックで甘美な演奏ではないし、ことさら異国情緒を歌い上げたものでもない。
凛とした音色と表現には好感が持てるが、少々まじめすぎもう少し遊びやゆとりがほしい。
しかし完璧主義者のシェリングらしい隙のない緊張感を漂わせた癖のない奏法と、毅然とした覇気や彼ならではのダンディズムが面目躍如たるセッションだ。
サン=サーンス、ラヴェルともにヴァイオリンのヴィルトゥオーソを示す超絶技巧を駆使してこれらの曲を書いている。
ダブル・ストップの連続やフラジオレットなどが、シェリングの余裕あるテクニックによって少しの曖昧さもなく実に几帳面に決まっているのは流石だ。
惜しむらくはオーケストラに高度のアンサンブルが要求される箇所では、指揮者についていけないところが聴き取れることだ。
特に『ツィガーヌ』の後半部はソロに対してオーケストラ・パートの歯がゆさを感じる。
シェリングの出来が申し分真摯で素晴らしいだけに、いくらか足を引っ張っている感じは否めないだろう。
それはともすれば指揮者ヴァン・レモーテルの力量不足なのかもしれないが、シェリング全盛期のレパートリーとして貴重な記録には違いない。
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