2020年07月08日
ヴィエンナ・スクール、伝統的音楽性(7)
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ウエストミンスターのリマスターUHQCD盤の1枚で、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の主体になるブラームスの2曲が収録されている。
映画『恋人たち』にも使用されたことでも知られる、若きブラームスの情熱と豊かな叙情を歌い上げる弦楽六重奏曲第1番。
イェルク・デムスを迎え、ドラマティックに歌い上げるピアノ五重奏曲。
ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団によるブラームスの内面世界を見事に描き上げた演奏だ。
この手の音源は殆どがモノラル録音であることを覚悟しなければならないが、弦楽六重奏曲第1番は1950年の録音で、やはり音色もいくらかセピア調の感が否めない。
一方ピアノ五重奏曲は1952年で、当時の技術的な改善が音質にも表れている。
いずれもノイズはごく少ないので鑑賞には差し支えない。
録音会場はウィーン・コンツェルトハウスの小ホール、モーツァルトザールで音響も悪くないが、弦楽部とピアノのバランスは必ずしも理想的とは言えない。
またピアノの音色が籠り気味で、高音部の輝かしさに不足している。
モノラルながら、もう少し分離状態が良ければさらにこの演奏の価値を高めていただろう。
この2曲にもウィーンの伝統的音楽性が横溢している。
アントン・カンパー率いるウィーン・コンツェルトハウスの繊細な音色と柔軟な歌心、そして現代ではもはや廃れてしまったロマンティックな感性は得難いものがある。
時代遅れと言ってしまえばそれまでだが、決して懐古趣味の耽美的な表現ではなく、アンサンブルに良い意味での古き良き時代のテクニックを残しつつ沈潜することなく、むしろ生気に溢れている。
若き日のウィーンの名手、イェルク・デムスのピアノには彼らの影響を受けてはいるが、よりクールな一面が新鮮な印象を与えている。
いずれにしても、まだ戦後の混乱期にあって音楽に飢えていたアーティスト達の、情熱の結晶として高く評価したい。
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