2020年11月05日
グランド・マナーで聴かせるベームのフィガロ
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フリッチャイの『フィガロ』が人間劇を見せるオペラとすれば、ベームのそれはグランド・マナーで聴かせる洗練された手法が際立っている。
それゆえ実際の舞台での上演を比較するなら、前者はとんとん拍子に進む喜劇としての側面が最大限に生かされているし、後者は芝居の面白みよりも、むしろ音楽をじっくり聴かせる玄人向けの演奏だろう。
ベームはモーツァルトが書き記した音符を忠実に再現することに腐心していて、そのために習慣的に省略される第4幕のマルチェッリーナとドン・バジリオそれぞれのアリアも収録している。
マルチェッリーナのアリアの後半はコロラトゥーラの技巧がちりばめられた難曲なので、単なる脇役としてのキャスティングでは済まされない。
確かにモーツァルトの時代は総ての登場人物に最低1曲のアリアが与えられていたのも事実だ。
だから最終幕はバルバリーナの短いアリアから始まってマルチェッリーナ、ドン・バジリオ、フィガロそしてスザンナとアリアが連なっていて壮観だが、舞台での芝居の展開は緩慢になる。
しかしベームはとにかく音楽自体に語らせることに神経を集中させているようだ。
それだけに表現を歌手の自主性に任せることは避けているように思われる。
彼にとって『フィガロ』はそれほど思い入れのある、また熟練を要する作品として厳しく取り組んでいる姿が想像される。
1968年の録音で会場はベルリンのイエス・キリスト教会だが、音質はリマスタリングの効果もあってクリアーだ。
ベルリン・ドイツ・オペラの決して重くならない伴奏も舞台作品で鍛えた実力を示している。
歌手陣も当時のオール・スター・キャストを実現したもので、タイトル・ロールのヘルマン・プライ、フィッシャー=ディースカウの伯爵、ヤノヴィッツの伯爵夫人、エディット・マティスのスザンナ、トロヤノスのケルビーノなど現在では望めないような豪華な顔ぶれを揃えているのも魅力だ。
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