2021年01月05日
コーガンとリヒター、両者の音楽上の一致に乏しいバッハ
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濃厚なコーガンのヴァイオリン、重厚なリヒターのチェンバロ、ねっとりたっぷりと歌うロマン的情緒濃密なバッハ。
これはこれですごくいいんだけども、コーガンのヴァイオリンは時にあまりにソリスティックすぎて、リヒターのチェンバロを覆い隠してしまうほどに主張が前面に出過ぎるときがある。
つまりコーガンのブラームスのような超スタイリッシュな演奏がバッハらしくなく違和感を感じざるを得ない。
それでもバッハの音楽の融通性から考えれば、肯定的なセッションではあるが、ロシア人演奏家はどんなに優れた巨匠でも、ドイツ音楽においてはこのような不適格さを露呈してしまう傾向があり、このCDもその好例である。
この曲集は基本的にヴァイオリン、そしてチェンバロの右手と左手がそれぞれ一声部ずつを受け持つ、トリオの手法で書かれているので、ソロ・ヴァイオリンがあまりに突出すると声部間のバランスが崩れてしまう。
ここでのコーガンはひたすら自己の妥協せざる音楽を堅持しているようで、その点峻厳な印象を与えることに成功している。
しかしリヒターは伴奏に追いやられているようにも聞こえる。
彼はノイぺルトのモダン・チェンバロを使っているが、この楽器のやや金属的で耳障りな音色が録音で助長されているのも好きになれない。
全体的にこうした理由で演奏が鈍重なものになっているのは残念だ。
はっきり言えば2人の間に音楽で一致するところが見えない演奏ということになる。
個人的にはこの6曲のベストはシェリング、ヴァルヒャ盤だが、リヒターがシュナイダーハンと組んだ1966年のセッションも好ましい。
この演奏は最近リリースされたリヒターのコンプリート・レコーディング集に復活している。
またラインホルト・バルヒェット、ロベール・ヴェイロン=ラ・クロワによる60年代初期のヴァイオリン・ソナタ全集もシンプルかつバランスの良い演奏でお薦めだ。
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