2021年05月26日

誤解を招きやすいトスカニーニの真価について


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まず、熱心な読者の方(S・Kさん)からメールが届いた。次の通り(抜粋)。

「和田さん,辻井伸行のラフマニノフ2番 (BBC)とショパン2番を未聴ならビデオで見て下さい。これはもう勇気100倍の感動ものです。後はメンデルスゾーンの弦楽八重奏曲を聴いて元気をもらいましょう。メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲はベルリン(ズスケ)+ゲヴァントハウスがピカイチです。フィナーレは圧巻です。他の演奏は録音が悪かったり,サロン的だったりします。」

ということで、辻井伸行のビデオは後回しにすることにして、早速メンデルスゾーンのディスクを取り出して聴いたのだが、ふとトスカニーニの同曲の録音を思い出して聴いてみて、以下の質問を返信した。

「たった今ズスケ&ゲヴァントハウスのメンデルスゾーン聴き終えたところです。私は特に第3楽章が気に入ったので、トスカニーニがこの楽章を録音していたことを思い出して聴きました。貴殿はヴァント以上にトスカニーニ嫌いのイメージがありますが、それはやはりオーケストラを罵倒してつくりあげた演奏だからでしょうか?」

以下、S・Kさんより
「おはようございます。流石に速攻ですね。また私が両端楽章を特に気に入っているのに対し,第3楽章と指摘するのも和田さんらしい。第1楽章は多彩な織物を縫い上げる様な感触が秀逸,フィナーレは気分が次第に高揚していく様で,落ち込んだ時は格好のカンフル剤です。第3楽章だけトスカニーニのオーケストラ版があることは知りませんでした。そのトスカニーニですが,オーケストラを罵倒して作り上げるとはいささか過言でしょう。トスカノーノ―と言われ,自分の気に入った歌手や奏者を重用することは問題ありですが。私が彼の演奏を嫌うのは即物的で,いつもアップテンポ。これではブラームスやブルックナーを聴く気になりません。私はLP期に彼のブラ1を持っていましたが,これがひどくてガッカリしたことが有りました。ところが徳岡直樹氏によるとトスカニーニが アップテンポになったのは戦後で,戦前は悠長で抒情的な演奏をする指揮者だったということです。従って,NBC期のトスカニーニは本来の姿ではないとの事。でも今更1930年代の演奏を聴く気にならず,今後耳を傾ける事は無いでしょう。」

以下、筆者のコメント
「私はまだLP期にトスカニーニを聴いた時、一聴して驚き、失望し、あきれた経験があります。情緒もへったくれもない、ギチギチのフレージング、せかせかとしたテンポ、うるおいのない硬い響き。こんな演奏の何がいいのか?その後トスカニーニをほめたり、推薦したりする文章を目にするたび、この輩は一体何を言っているのか、不思議でしかたがありませんでした。さらに彼らばかりでなく、歴史を振り返ってみても、トスカニーニの人気は凄いものだったらしく、あんな演奏を往時の聴衆が楽しんだり、興奮していたのだということが、私には全然理解できませんでした。しかし今は、私にとってトスカニーニは、もっとも大切な演奏家のひとりです。いくつかのきっかけがあって、しだいに彼の凄さに気が付いていったのですが、その過程で判ってきたことは、この指揮者ほど、誤解の罠がしかけられているひともいない、ということでした。簡単に言えば、戦後NBC響の録音を聴いて、かつての聴衆たちは熱狂していたわけではない、ということでした。あの音の硬さは、ひとつにはLPのマスタリングの悪さ(現行のCDはかなり音が聴きやすくなっています)と、そしてもうひとつには80歳をこえていたトスカニーニの、老人特有の性急さと耳の衰えがあいまって、生まれたものらしいのです。トスカニーニが元気だった70歳までの録音、つまり第2次世界大戦終了前後までの録音を聴いてみると、テンポが速いのは後年の録音とあまり変わらないのですが、しかしその速い進行のなかに大きなカンタービレがあり、また響きもずっと立体的で、とくに低弦にザワザワとしゃべるような迫力があるのです。これを聴いて、当時の聴衆は熱狂していたのです。どんな音楽を演奏しても、まるでロッシーニの序曲のように演奏してしまう、といわれたトスカニーニの圧倒的な生気とパワーは、この頃の録音にしかないのです。我々が彼の代表盤だと思って聴いている1950年代のベートーヴェンの交響曲全集とかヴェルディのオペラとかは、功成り名を遂げた老人の余生の演奏にすぎないのです。」

以上、S・Kさんより承諾をいただきエントリーした次第であるが、トスカニーニはメンデルスゾーンの八重奏曲を第3楽章のみでなく全曲録音していたのは知らなかった。早速ネット配信で聴いたがまさにカンフル剤!

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classicalmusic at 00:06コメント(0)トスカニーニ | メンデルスゾーン 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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