2021年08月18日
ポッジのフェルナンドが悲劇性を薄め、エレーデの指揮もやや平坦、ドニゼッティ『ラ・ファヴォリータ』
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
『ラ・ファヴォリータ』は美しいアリアが全曲中にちりばめられた秀作オペラだが、それだけに歌手に頼った作品でもある。
名だたる名歌手を揃えなければ、この曲の声の醍醐味を味わうことができない。
その意味で主役レオノーラにシミオナート、アルフォンソにバスティアニーニはまさにうってつけだが、フェルナンドのジャンニ・ポッジが適役とは言えない。
ポッジの声は屈託のないテノーレ・リリコで、高音も無理なく出すことができるが、悲劇的な雰囲気を表現しきれていない。
おそらく同じドニゼッティでも『愛の妙薬』のネモリーノや『連帯の娘』のトニオなどコミカルな役には最適と思われるが、このオペラでは、特に終幕の危機感を緩めてしまっている。
確かに彼は大音声のハイCも楽々歌うことができたから、1950-60年代のスカラ座では人気者だった。
シミオナートの歌唱が模範的なだけに惜しい。
それはまたエレーデの指揮にも原因がある。
彼は声を生かすことにかけては、第一級の腕を持っているが、オーケストラの統率ではいまひとつ緊張感に欠けている。
逆に言えば歌手の質に頼った指揮者と言えるだろう。
不世出のヴェルディ・バリトン、バスティアニーニのドニゼッティのレパートリーとしても貴重な録音になっている。
彼の代表的なドニゼッティ・オペラと言えばレナータ・スコット、ディ・ステファノと組んだ『ルチア』だが、ライヴでは『ポリウト』のセヴェーロが遺されているくらいだ。
録音は1955年で初期のステレオ録音としては悪くないが、オーケストラの総奏にコーラス、ソロが重なる部分ではやや音質が割れ気味になる。
フィレンツェでの上演演目に合わせたセッションのひとつで、このシリーズには同じエレーデの指揮、バスティアニーニのフィガロ、シミオナートのロジーナでロッシーニの『セヴィリアの理髪師』やガヴァッツェーニの指揮にデル・モナコやチェルクェッティが加わるポンキェッリの『ラ・ジョコンダ』などがある。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。