2022年06月17日
スケールが大き過ぎるが、超贅沢なキャストを揃えたセラフィンの『ラ・ボエーム』
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1959年のセッション録音で、当時のデッカのスター歌手達が一堂に会した声の饗宴に相応しい『ラ・ボエーム』だ。
この作品のテーマは愛らしい感傷的な物語で、英雄が登場するわけでもないし、怨恨が火花を散らすような場面もない。
だからこじんまりとした舞台作品として創ろうと思えばそれも充分可能だし、むしろ相応しいかも知れない。
しかしここでは大歌手達が、あたかもヴェルディの悲劇のような恐ろしくスケールの大きな舞台をイメージさせる。
セラフィンのイタリア・オペラを知り尽くした指揮も聴きどころのひとつだ。
特に第2幕幕切れの軍隊の帰営の行進とカフェ・モミュスの勘定書きをアルチンドーロに押し付け、どさくさに紛れて逃げ出すボヘミアン達の退場は、オーケストラのダイナミズム、ラレンタンドとアッチェレランドを巧妙に組み合わせて劇的に幕切れを表現していて素晴らしい。
サンタ・チェチーリアはこの頃オペラの録音を頻繁に行っていて、イタリア風の明るさと、軽快な機動力が良く行かされている。
歌手陣は言うまでもなく甲乙つけがたいが、ロドルフォを歌うベルゴンツィは『冷たい手を』で胸のすくようなハイCを聴かせるし、それに答えるミミ役のテバルディのアリア『私の名はミミ』はかつて聴いたことがないほどスケールが大きい。
コミカルな役柄マルチェッロがバスティアニーニというのも贅沢なキャスティングで、また短いアリア『外套の歌』一曲で存在感を与えるコリーネ役のシエピも上手い。
勿論アルチンドーロとベノワの二役をこなすコレナはいつも通り、達者な芸で笑わせてくれる。
指揮者セラフィンは、ある程度歌手達の自由な歌唱を許しながら、起承転結を熟知した老獪ともいえる統率でこのオペラを宝石のように輝かせている。
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