2021年11月01日
スーク・トリオによる明瞭で大らかなベートーヴェンのピアノ・トリオ全曲集
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1983年から84年にかけてプラハで録音された音源で、スプラフォンと日本コロムビアが提携したレコーディング・シリーズのひとつ。
彼らは逸早くPCMディジタル録音を手掛けていただけあって、この時代の音源として音質は極めて良好だ。
ベートーヴェンのピアノ・トリオで、先ずお薦めしたいのはシェリング、フルニエ、ケンプによる演奏で、ケンプが扇の要のような存在だ。
第4番変ロ長調『街の歌』のみはカール・ライスターのクラリネットがシェリングに替わっている。
最近ユニヴァーサルのシェリング・エディションで復活した、一期一会の緊張感と高度な愉悦に満ちた大家風のトリオは是非聴いて頂きたい。
一方このスーク・トリオによる演奏では全曲を通してヨゼフ・スークが弾いている。
1950年代からトリオとして頻繁に演奏活動していただけに気の合った生き生きしたアンサンブルは美しいだけでなく、おおらかな音楽性を満喫できる。
ピアニストはヨゼフ・ハーラで、前任者のヤン・パネンカとは異なった美学を持っていて、聴き比べるとこのコンセプトの違いが良く理解できる。
第7番変ロ長調『大公』は既にパネンカとは過去に2回レコーディングしているので、この演奏はスーク・トリオとしては3回目、ハーラは初めて加わった時の録音になる。
パネンカのクリアーで美音を生かした緻密な演奏とは一線を画し、若々しい推進力に満ちたハーラのピアニズムも良い。
またリーダーシップをとるスークのヴァイオリンを巧みに支えるフッフロのチェロも毅然とした風格を持っている。
それにしても何と室内楽的なバランスの整った演奏だろう。
スーク・トリオの演奏は、室内楽的かつ古典的で、緊密なまとまりを聴かせる。
3人それぞれが実に明確な主張を展開しながら見事な調和を保ち、一体となって感興豊かで恰幅の大きな世界を作り上げている。
スリリングなところはないが、充分に練られた表現にはまとまりだけではない華もあって楽しめる。
平均年齢54歳の録音にもかかわらず、もっともみずみずしく新鮮な息吹を感じることができる。
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