2021年11月14日

天才リヒター伝説の東京公演 手兵を引き連れ初来日で聴かせた不滅の「ロ短調ミサ」 NHKオリジナル音源より新マスタリングで復活 !


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1969年5月9日、リヒターとミュンヘン・バッハ管弦楽団の来日公演のときの貴重なライヴ録音である。

あふれるようにみずみずしい演奏だ。

リヒターには1961年のスタジオ録音もあり、それはきわめて峻厳な名演奏だった。

これはそのスタジオ録音ほどの芯の強さはあまり感じられないが、全篇にわたって、表情がゆたかであたたかな、人間愛にみちた音楽がつくられている。

このライヴにおけるリヒターの演奏は旧盤に聴かれる、魂を引き裂くような痛切な叫びはない。

構えのとれた、自在なバッハで、まるでリヒターの新しい面を発見したかのように感じられる。

演奏自体の密度の高さは旧盤に求められるだろうが、東京での緊張のひとときとしての、異常なまでの空間がひしひしと伝わってくる名演である。

その日本公演でまったく精力的にリハーサルと多くの本番をこなしたリヒターは、疑いなくこの時期が生涯の頂点だったといえる。

リヒターの棒は厳格をきわめたものだと思いがちだが、むしろ次に何が始まるのかわからないといった、まことにスリリングな緊張を、演奏者にも聴衆にも呼び起こした。

リヒターはここでは学究の徒であることを放棄し、まさしく神に仕える一個の真摯な人間にかえったのである。

時として考証的なバッハを、冷徹なバッハを演奏するリヒターであったが、それはこの夜だけに許された「即興の時」であったのだろうか。

といってもテンポの揺れは実際にみられなかったことも指摘しておく必要がある。

リヒターの中にある自由な飛翔は、厳格主義によって身動きが出来なくなっている日本のバッハ演奏家に対して大きな啓示となったのである。

リヒターの張り詰めて峻厳な音楽作り、彼を信奉する合唱団員たち、与えられた機会に最上の歌唱や演奏で応えようと全力を尽くす独唱者たち、オーケストラの尋常ではない協調ぶりは強く心に残る。

オーケストラは驚嘆すべき音色と技術に加え、音楽性の息づきの中で見事にリヒターにこたえた。

フルートのまろやかさ、D管トランペットの強靭で卓越した技巧は、それが音楽の必然的帰結であることを納得させたし、合唱における「自発性」は日本の合唱団に大きな影響を与えた。

独唱陣は最高の布陣で、これ以上の歌手を誰が望めるだろう。

その中でもヘフゲンのアルトは特筆せねばなるまいし、ヘフリガーの<ベネディクトス>も絶唱というべきだろう。

バッハが亡くなる前年の1749年に、過去のさまざまな作品からの転用を含めてまとめあげた宗教音楽の一大大作がこの《ミサ曲ロ短調》である。

当時としてはたいへん規模の大きな作品で、全曲の演奏に約2時間を要するが、バッハの声楽曲の集大成としても重要な意味を持つので、是非耳にしておくべきだろう。

全編に崇高な宗教的感情があふれていて、この曲にバッハのすべてがあるといっても過言ではないほどだ。

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classicalmusic at 10:17コメント(0)リヒター | バッハ 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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