2022年02月20日
フィリップス・レーベルの消滅後、版権の問題から残念ながら総て製造中止の憂き目に遭っているコンドラシン、コンセルトヘボウのライヴ音源から
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ブラームスの交響曲第1番は1980年2月29日、カップリングされたメンデルスゾーンの交響曲第4番『イタリア』が1979年11月17日のそれぞれアムステルダムにおけるライヴ録音になる。
当時のコンドラシンとコンセルトヘボウの強い絆を髣髴とさせる気迫に満ちた演奏である。
どちらも熱演というよりはむしろ様式に則った堅実な解釈が聴きどころだろう。
ブラームスでの冒頭のティンパニの連打も抑制され、ひとつの楽章を突出させることなく全体の均整を取って絶妙なバランスを保つことで、かえって荘重な音楽を築き上げている。
第3楽章のヴァイオリン・ソロはコンサートマスターのヘルマン・クレバースで、同メンバーによる『シェエラザード』同様ここでも高貴な抒情を湛えた奏法が美しい。
終楽章も感情に流されることなく、堅牢な古典的形式感が保たれたスタイリッシュな安定感がある。
メンデルスゾーンでも血気にはやる演奏ではなく、いくらかクールでコンセルトヘボウのアンサンブルの確実さと作品の起承転結をわきまえた再現が生きている。
第2楽章アンダンテのカンタービレも他の楽章との調和を考慮した表現だ。
終楽章でのイタリアの舞踏音楽サルタレッロも疾走することなくコントラストを聴かせる頭脳的な指揮もコンドラシンらしい。
キリル・コンドラシン(1914-1981)はオランダ亡命以前からコンセルトヘボウ管弦楽団に頻繁に客演していた。
この一連のライヴ・レコーディングは当時の国営オランダ放送協会NOSと、民間下請け業者NOBが共同制作したマスターになる。
地元フィリップスがリリースした9枚のLPを1990年代に8枚分のCDに再編集したものだ。
フィリップス・レーベルの消滅後、版権の問題から残念ながら総て製造中止の憂き目に遭っている。
いずれも音楽的に充実した質の高い演奏なので、今後はブルーレイオーディオなどに高音質化されての復活を望みたい。
客席がオーケストラの背後にも設置されているコンセルトヘボウの弱点で、時として聴衆からの咳払いがダイレクトに捉えられているが、音質は鮮明で高度な鑑賞にも充分堪え得るものだ。
尚この8枚に収録されなかった同メンバーによる更にCD3枚分の音源は仏ターラ・レーベルからリリースされている。
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