2021年11月18日
ロッシーニ・ルネサンスの成果『泥棒カササギ』、長く忘れられていた傑作の復活への道をひらいた、アルベルト・ゼッタ校訂によるクリティカル版の理想的な完全全曲録音
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ロッシーニの全作品が新しく校訂され、ペーザロの同財団から次々に出版された楽譜に基づいて演奏されるようになったのは1970年代になってからである。
これによってオーケストラの奏法から歌手達の歌唱法、レチタティーヴォの通奏低音までが一新され、本来あるべき姿のロッシーニ像が広く知られるようになった。
このディスクはロッシーニの出身地ペーザロのテアトロ・ロッシーニで開催された1989年のロッシーニ・フェスティバルの演目として上演されたオペラ・セミセリア『泥棒カササギ』のライヴになる。
校訂はアルベルト・ゼッダによる新しい検証と解釈に従った、いわゆるロッシーニ・ルネサンスの成果のひとつだ。
ライヴなので客席からの拍手や歓声が入っているが、音質自体は極めて良好。
指揮はジャンルイージ・ジェルメッティでオーケストラはRAIトリノ交響楽団。
彼の指揮は長い作品を丁寧にまとめ、歌手陣を良く統率している。
アンサンブルも緊密で、特に第2幕後半の六重唱はロッシーニのセミセリアに対する腕を明らかにしていて美しい。
主役二ネッタはリッチャレッリで、彼女はロッシーニ歌いではないが、プリマドンナとしての力量を示していて、言ってみればカリスマ的存在だ。
婚約者ジャンネットはマテウッツィで高声を巧みに使って華やかな効果を上げている。
この役にはやや軽すぎる声質かも知れないが。小間使いの少年役ピッポはメゾ・ソプラノのマンカ・ディ・ニッサが健闘している。
アジリタのテクニックも充分だ。
代官がサミュエル・レイミーというのも面白いキャスティングだが、彼はロッシーニにも造詣が深く、低音から高音まで滑らかな声で歌いながら、悪役の貫録を見せている。
波乱に富んだドラマの動きを鮮明に、かつまた感動的に描き出すジェルメッティの指揮も申し分なく、大詰めの裁判の場の白熱的な盛り上がりと、それに続くヒロインを刑場に導く、葬送行進曲、そして幕切れの救出劇的どんでん返しと続くあたりは曲も演奏も最高だった。
オペラの題材は当時流行った救済物で、死を宣告されたヒロインとその父フェルナンドが、ピッポの機転によって真犯人を見つけ出し、恩赦によって二人の命が救われ、ニネッタは恋人ジャンネットと晴れて結ばれるという、同じ救済物でもベートーヴェンの『フィデリオ』に比べれば、他愛ない物語だ。
しかしロッシーニにしては珍しく気を入れて作曲したオペラで、劇中のテーマやモティーフを巧妙にまとめて序曲に仕上げている。
ウィーン初演の時は大喝采を浴びベートーヴェンの機嫌を損ねたと言われるが、確かに屈託のないロッシーニの音楽は当時『フィデリオ』より持て囃されたのも事実だ。
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