2021年12月02日

ひとつのスタンダードを確立した集成、S=イッセルシュテットのベートーヴェン総集編


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ハンス・シュミット=イッセルシュテットは、古典派からロマン派全般にいたるドイツ音楽を得意としていたが、このベートーヴェンも解釈が首尾一貫しており、その意味でひとつのスタンダードを確立した集成である。

交響曲全集でも、重厚な響きでメリハリをきちんとつけた、端正な演奏をおこなっている。

力強くたくましい曲でもS=イッセルシュテットは、大上段に構えるような指揮はしないが、ベートーヴェンの交響曲でも自然な流れを大切にしながら、ウィーン・フィルの魅力を素直に引き出していて好ましい。

ウィーン・フィルの優美な音色と持ち前の演奏様式に、この指揮者のドイツ的明晰さと峻烈な気質が加わり、すべて中庸の解釈を示しつつも高雅で底光りするような音楽を聴かせる。

毅然とした北ドイツ風の厳しさを持ち、作品そのものに語らせようとした着実な表現である。

ウィーン・フィル独特の魅力的な音色ににドイツ的雄渾さを加えた演奏と言うべきだろう。

あまりにも古典主義的で均整のとれた演奏であるため、かえってベートーヴェンはこれだけではないという反発を感じるほどだが、ここまで徹底するともう立派としか言いようがない。

高雅にして晴朗、実に格調が高く、古典交響曲としてのベートーヴェン像が毅然としてそびえ立つ演奏だが、その均衡感の強い造形は適度の緊張感によって支えられている。

「演奏からできるだけ主観的なものを取り除き、作品そのものによって音楽を語らせる」と、S=イッセルシュテットは生前言っていたが、ハッタリや作為の少しもない、きわめて自然体の演奏である。

全体のバランスを大切にしながら、整然とまとめているのが特徴で、ウィーン・フィルを用いているだけに、音色の美しさも魅力のひとつだ。

同じドイツでも感興のおもむくままに指揮をするフルトヴェングラーのライヴ録音などとは対照的な位置にある。

きわめて古典主義的で格調が高く、しかも晴朗な表現の中に北ドイツ風ともいえる厳しさと克明さがあり、単に古典的な純粋性を志向した演奏とは異なっている。

よいバランス感覚をもった安定感のある演奏で、それぞれの楽章を丹念に磨きあげ、一点のゆるぎもない、しっかりとした音楽をつくりあげている。

ウィーン・フィル特有の美しい音色も生かされており、演奏としてのまとまりの良さは特筆できよう。

S=イッセルシュテットは古典ソナタ様式の究極ともいえる作品美を徹底しており、ある意味ではスタンダードとなり得る表現だ。

それはあらゆる面で中庸な解釈ともいえるのだが、その中庸は指揮者の非凡な音楽性と直結している。

ピアノ協奏曲全集におけるバックハウスはいささかも奇を衒うことなく、悠揚迫らぬテンポで曲想を描き出していくというものだ。

飾り気など薬にしたくもなく、聴き手に微笑みかけることなど皆無であることから、聴きようによっては素っ気なささえ感じさせるきらいがないわけではない。

しかしながら、かかる古武士のような演奏には独特の風格があり、各フレーズの端々から滲み出してくる滋味豊かなニュアンスは、奥深い情感に満ち溢れている。

全体の造型はきわめて堅固であり、スケールは雄渾の極み。

その演奏の威容には峻厳たるものがあると言えるところであり、聴き手もただただ居住まいを正さずにはいられないほどだ。

イッセルシュテットの指揮も、バックハウスの意図をよく汲み取った名伴奏であり、ウィーン・フィルの優雅な音色を十全に生かしたもので、曲の美しさを改めて見直させる。

シェリングの数ある録音の中でも特にベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は優れており、音楽性も高く、この曲のもつ美しさや魅力をたっぷりと味わえる。

シェリングのヴァイオリンはあらゆる意味で模範的と言えよう。

アクが強くなく、真摯な感情がこもっているので、曲の美しさや魅力がまっすぐに伝わってくる。

最も抵抗なく音楽の立派さ、美しさに浸れる名演だ。

とにかくシェリングはヴァイオリニストの存在をまったく忘れさせて、われわれを曲自体に結び付けることによって、音楽自体をたのしめるのである。

それを支えるのが、S=イッセルシュテットで、ハーモニーが立体的で立派さに打たれる。

シンフォニックな立体感は他のすべての指揮者を上回り、それでいて構えた硬さは皆無だ。

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classicalmusic at 17:13コメント(4)バックハウス | シェリング 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2021年12月07日 09:27
5 イッセルシュテットはやや地味なせいか余り日本では注目されていませんが, ウィーンフィルとのベートーヴェンは彼の穏やかさが滲み出ていてもっと評価されて良いと思います。私も5, 6, 8番の3曲が特に秀逸だと思います(昔は5, 8番をカップリングしたディスクでレコードアカデミー賞を受賞したと記憶しています)。でもそれ以上に私が評価するのは以前話題に上がったシェリングと録音したベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲です。オーケストラはウィーンフィルではなくロンドン響ですが,シェリングの折り目正しいヴァイオリンを見事にサポートしています。一方, 彼はスタジオ録音では大人しいのですが, ライヴ盤になるとガラッと演奏スタイルが変わると言われています。それを認識するために, もっとイッセルシュテットのライヴ録音をリリースして欲しいと願っています。歴史あるヨーロッパの指揮者であるベーム,カラヤン,ヨッフムらもライヴ録音の方が数段出来栄えが良くなると結論出来そうですね。
2. Posted by 和田   2021年12月07日 09:47
ブラームスのヴァイオリン協奏曲の白眉はイッセルシュテット、北西ドイツ放送交響楽団のサポートによるヌヴーのライヴ録音で、何かに憑かれたような激しさが聴く者を圧倒します。2年前のスタジオ録音も構成力と感情表現のバランスが見事でしたが、それに比べてライヴ録音の緊張感が演奏にいっそうの輝きを与えていて、臨場感があり、高揚した精神が演奏の隅々まで行き渡っています。その反面、第2楽章では旋律を優美に歌わせて優美な情感を引き出しています。それはあたかも短く燃え尽きる彼女の人生を予感しているようで感慨深いです。
伝統あるウィーン・フィルがベートーヴェンの交響曲全集とピアノ協奏曲全集の初めての録音に際し、イッセルシュテットがタクトをとったというのはもっと注目されてよいと思います。
それ以外では以前トリスタンを持っていて凄い演奏でしたが、CDの盤面に傷が入り惜しくも手放してしまいました。
あとライヴではジュピターとベト7のライヴを持っていますので、聴いてみますね。
3. Posted by 小島晶二   2021年12月07日 09:57
あと第9ではウィーンフィル盤より北ドイツ放送響(1970)の方が出色! 第3楽章以外は奥深い味わいが有ります。これも聴いてみて。
4. Posted by 和田   2021年12月07日 10:05
了解しました。ただ今使っているパソコンが老朽化してネット配信に雑音が入って聴けません。近日中に買い替えて、その後聴いてみますので、お待ちください。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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