2022年01月01日
常にバッハに帰る、ダヴィッド・フレーの新譜、デビューした頃から課題にしてきたバッハの作品へのひとつの到着点を示した『ゴールドベルク変奏曲』
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ダヴィッド・フレーの新譜は、バッハの『ゴールドベルク変奏曲』で、彼がデビューした頃から課題にしてきたバッハの作品へのひとつの到着点を示した演奏と思える。
彼のドイツ音楽への執着は、これまでにリリースしてきたアルバムを見れば明らかだ。
そこにはドイツのピアニストが誰も弾かなかったようなラテン的リリシズムに溢れた解釈が示されていて、陰翳と抒情の世界があいまったサウンドに不思議な魅力がある。
勿論メリハリを利かせたダイナミズムも生き生きと表現されている。
この作品は主題になるテーマに30の変奏が従い、最後に再び静かなアリアが戻ってくるという壮大な構成である。
三変奏ごとにテーマを一音ごと上げて追いかけるカノンを配置し、テーマも順行、逆行が駆使され、最後には二つのリートを組み合わせるという、バッハの対位法のエッセンスが面目躍如の作品だ。
また当時の二段鍵盤のチェンバロの機能とテクニックがフルに活用されているので、現代のピアノで弾く場合はテクニカルな問題を少なからず解決しなければならない。
フレーは独自のリリカルな歌心を充分に披露しつつ、全く不自然な印象を与えていないのは流石だ。
それぞれの変奏は二つの部分から成り、更にそれぞれに繰り返しの指定がされている。
ピアニストによってはリピートを省略した録音もあるが、フレーは一回目と二回目を巧みに変化をつけてリピートに必然性を与えている。
例えば最後の第30変奏『クオドリベット』では弱音で弾き始め、クレッシェンドを加えながらフォルテで繰り返すという手法を取っている。
それはあたかもバッハ家のささやかな団欒が、次第に音楽的な充実感に満たされていくようにも聴くことができる。
録音での残響はやや多めだが、音質は良好。
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