2022年01月10日
ヤノフスキのライフワーク、SACDで聴くワーグナー:ニュルンベルクのマイスタージンガー
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マレク・ヤノフスキは2010年から2013年にかけて、手兵ベルリン放送交響楽団を率いてワーグナーの主要なオペラを集中的にライヴ録音した。
総てベルリン・フィルハーモニーでのDSDレコーディングでSACD化されていて、またライヴといっても演奏会形式な舞台や客席からのノイズは全くない。
音質はこれまでの『マイスタージンガー』では屈指だが、確かに劇場での臨場感に関してはやや希薄だ。
特にこの類まれな喜歌劇にとってはスマート過ぎる音質かも知れない。
しかしオペラ畑で叩き上げたヤノフスキだけあって、これだけの長い作品の聴かせどころを効果的に、しかも解かり易くまとめている。
例えば第1幕への前奏曲は、単独で演奏する場合はどの指揮者も重厚な表現になりがちだ。
彼はライトモティーフを聴かせる以外は部分的に拘泥することなく、喜歌劇の特徴のひとつである、一日のうちに完結するドラマを想起させる颯爽とした、快活な演奏だ。
このタイプはオペラ劇場で鍛えた指揮者、例えばサヴァリッシュなどにも一脈通じている。
またベルリン放送響も融通性のあるオーケストラで、精緻でありながら歌手にも良く寄り添っていて好演。
歌手陣で最も際立っているのは、言うまでもなく靴屋の親方ハンス・ザックス役のアルベルト・ド―メンで、豊かな声量は勿論だが、演技が目に浮かぶような歌唱と表現力に圧倒される。
第2幕及び第3幕の二つのモノローグは聴きどころだ。
エファを演じるエディト・ハラ―も悪くはないが、いわゆるワーグナー・ソプラノに欠けがちな、きめ細やかな抒情的な表出、特にヴァルターとの重唱に必要な愛情豊かな表現力に多少不足していて冷たく聞こえるのが残念だ。
ヴァルター役のアメリカ人テナーのロバート・ディーン・スミスも期待していたより聴き劣りがした。
ヘルデンテノール系は力みが目立つと重苦しくなってしまうが、彼にもそうした傾向が無きにしも非ずだ。
やはりこのオペラの喜劇性を考えればもう少し柔軟な歌唱が望まれるだろう。
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