2022年04月16日
端正で彫りの深い演奏、オピッツとのシューマン協奏曲とヴァント絶頂期のモーツァルト第40番ト短調
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ヘンスラーからリリースされたギュンター・ヴァント・エディションの1枚。
ゲルハルト・オピッツをソロに迎えたシューマンのピアノ協奏曲イ短調が1983年、モーツァルトの交響曲第40番ト短調は1990年の録音で、どちらもハンブルクのムジークハレでの収録になり音質は良好。
いずれも端正な演奏で入門者の方にもお薦めしたい。
シューマンではオピッツが堅実で真摯なピアニズムを披露しているのが特徴的で、迸るような情熱的な演奏を求める向きにはやや冷静過ぎるように聞こえるかもしれないが、作曲家の文学的、あるいは哲学的な傾向を表現した深みと味わいのある演奏だ。
サポートするヴァントの指揮もオーケストラを抑制しながら緻密な設計の中にしっかりソロを支えている。
巨匠オピッツは近年、同協奏曲の録音をリリースしたが、これはオピッツが30歳の時のライヴである。
既に巨匠の風格を漂わせ、師のヴィルヘルム・ケンプに代表されるドイツ正統派の流れを受け継いだ演奏で、はったりのない技術でシューマンのロマン的な世界を表現している。
ヴァントとの相性も抜群で、今後オピッツの80年代の代表盤となると言えるだろう。
交響曲第40番はBMG(1994年)とは別演奏であるが、モーツァルトにもヴァントの律義さが良く表れている。
テンポはやや速めで、曲想の暗さや憂愁にはそれほど拘泥せずに走り抜けるような軽快さが感じられる。
それだけに第1楽章でのバランスの取れたオーケストレーションの中で自在に動くそれぞれのパートは生き生きしていて、モーツァルトの天才性を明らかにしている。
それに続く第2楽章の神秘なまでの美しさ、第3楽章の颯爽としたメヌエット、そしてきびきびとした終楽章が密接に繋げられ彫りの深い作品に仕上がっている。
これぞまさに「疾走する悲しみ」を具現化したかのような心に染みる演奏になっている。
ヴァントは実に多く40番を取り上げたが、音のクリアーさ、ゆるみのなさ、品格の高さでは最上の演奏と思われる。
オーケストラはどちらも北ドイツ放送交響楽団。
83年のシューマンも、90年のモーツァルトもムジークハレの豊か過ぎる残響が放送録音らしく適度におさえられ、クリアーなサウンドも魅力である。
近年リヒターもののリマスタリングなどで評価を上げつつあるジードラー氏の丁寧なマスタリングも聴きものである。
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