2022年02月22日
ハイドン生誕300周年に交響曲全集を録音するプロジェクト、これまでにリリースされた10枚がボックス化、疾風怒濤時代に形成された交響曲の軌跡
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20世紀末のイタリアで、生命感あふれる演奏でバロック音楽解釈に新風を巻き起こした才人古楽器集団イル・ジャルディーノ・アルモニコを率いるリコーダー奏者ジョヴァンニ・アントニーニ。
近年はルネサンス作品を集めた驚くべきアルバムを作ったり、古楽器と現代楽器を使い分けながら多角的な活動を続けるバーゼル室内管弦楽団とも痛快なベートーヴェン交響曲全集をリリースするなど、その活動領域の広がりは目を見張るばかり。
2013年以降はAlphaレーベルを録音パートナーに選び、ハイドン生誕300周年となる2032年までにこの作曲家の100曲以上ある交響曲を全て録音するというプロジェクトも手がけ、アルバムが出るたび大きな話題を呼んできた。
自身のグループであるイル・ジャルディーノ・アルモニコと精鋭集団バーゼル室内管弦楽団という2つの楽団を共演に選び、イタリア古楽界の先端で活躍する名手たちもメンバーとして加えながら、今夏までにリリースされてきた10枚がこのたびボックス化された。
筆者自身いつかはボックス化されると思っていたので、1枚1枚買い揃えるのは控えていたが、意外に早くこれまでにリリースされたので即座に聴いた次第である。
ハイドンの交響曲全集を鑑賞することは、そのまま交響曲の形成される歴史を辿ることになる。
しかし106曲の交響曲を全曲録音することは営業的には賭けをするようなもので、過去には頓挫した企画もある。
それだけにジョヴァンニ・アントニーニ率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコの挑戦には是非完遂を期待したい。
彼らの演奏がメルツェンドルファーやドラティの全集と決定的に異なる点は、総てピリオド楽器とピリオド奏法による再現だが、音楽表現に関してはかなりラディカルなところがある。
それがかえってクラシックの疾風怒涛時代にイタリア・オペラの序曲や管弦楽組曲などの影響を受けつつ、ハイドンと同時代の作曲家達によって次第に交響曲という曲種に醸成されていく過程を明らかにしている。
この全集の特徴は、ハイドンだけでなく彼に影響を与えた音楽家の作品、その中にはかなり珍しい曲目も併録していることで、ディスクの枚数は増えるがぺダゴジカルな興味が湧く趣向が面白い。
イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏は彼らがバロック音楽でやってきた、とびっきり生きのいい演奏と辻芸人的な野趣が生かされた、独自の解釈がここでも面目躍如だ。
初期の交響曲はヴィヴァルディの協奏曲のようだし、驚かされることはあっても決して退屈なパフォーマンスではない。
指揮者アントニーニの即興性の裏に隠されたハイドンへの熱心な研究と深い造詣には感心せざるを得ない。
現在11集目がリリースされたところだが、今後が楽しみな全集になりそうだ。
レギュラーフォーマット盤だが音質は極めて良好。
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