2022年03月19日

朗報!チェリビダッケ生涯最高のブルックナー第8番、1994年リスボン・ライヴが遂に正規盤(UHQCD)発売!!


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ブルックナーの交響曲は版の問題も重要だが、それも指揮者の解釈の結果と考えれば、演奏に備わった説得力のほうがより大きな問題となる。

流動的フォルムの時代錯誤バレンボイム、ブロック的フォルムの朝比奈を両端として、ヴァントやここに採り上げるチェリビダッケの名演には使用楽譜の枠組みを超えた工夫があり、その他、シャルク版使用のクナッパーツブッシュの昔からギーレンの現在まで、指揮者の多様な作品観が構造表出にストレートに反映するさまが実に面白い。

使用楽譜や規模の問題を抱えながらも、その難度の高さが演奏家の意識を鼓舞するのか、これまでに数多くの名盤がつくられた幸運な作品、ブルックナーの交響曲第8番。

CDの発売点数もすでに60種を超え、各演奏の傾向、スタイルには相当な違いが認められる。

合計演奏時間60分を切るクーセヴィツキー盤(カット版)から、ほぼ100分かかるチェリビダッケ盤まで、視野狭搾的な偏狭鑑賞に陥らない限り、さまざまな解釈・主張がたっぷり楽しめる好条件が整ったソフト環境だ。

筆頭に採り上げるべきは、チェリビダッケがミュンヘン・フィルを指揮したもの。

DVDを含めればほかに少なくとも5種の異演盤があるが、内容は1994年盤が最高だ。

解釈に変化があるわけではないが、シュトゥットガルト放送響時代の動的な音楽が激しい身振りによってひきだされたものならば、ミュンヘン・フィルとの静的な音楽は着座しての冷静な指揮から生み出されたものだろう。

実際第3楽章アダージョにおける、地に足のついた見通しのよいフォルムのなかで、極度に純化された美音により各素材がそれぞれの役割を果たしてゆく光景は、形容の言葉もないほど美しい。

「美は餌にすぎない」とはチェリビダッケ自身の言葉だが、終楽章再現部第3主題部から結尾までの表現は、まさにそうした思惟の具現とも呼ぶべきものである。

遅いテンポと張りつめた緊迫感、拡大されたデュナーミクがもたらす異様なクライマックスには、戦慄を覚えるほどの「畏怖」の気配が確かにある。

もちろん、それはブルックナーの音楽に本来存在するものなのだろうが、チェリビダッケ以外の演奏からは、ついぞ聴いたことのない響きの表情・気配であることもまた事実(クレンペラーに至っては、再現部第3主題部をカットしてしまっている)。

改めて「観照と形象」ということについて、考えさせられる偉大な演奏だ。

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classicalmusic at 19:16コメント(4)チェリビダッケ | ブルックナー 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2022年03月22日 22:05
4 ぶった斬りの記事も不定期配送になってきましたね。これから不意打ちをくらいそうです(笑)。以前お話しした記憶がありますが,チェリ最晩年の記念碑的名演。あのハルさんもチェリの超スローテンポのブルックナーは殆んど聴かないが,このCDだけは例外だと述べておられます。私も全く異論は有りません。本盤は以前プライベート海賊盤で評判になりました。私も紫ジャケットのミュンヘンフィルとの9番を持っています。これは1981年と比較的以前の演奏で,NHKFMでも放送されました。当時のチェリは最晩年程スローテンポでは無く,納得出来る範囲内のテンポ設定でした。縦線を揃えた名演として,シューリヒト,ヨッフム(83)に次ぐ存在だと思います。
2. Posted by 和田   2022年03月22日 23:28
なるほど。テンポが遅くなる前のチェリビダッケがお好みということは以前お話しました。それゆえDG盤を支持されるのも納得です。しかしこのリスボンライヴだけは別格でしょう。私の場合EMIから発売された通常CD盤で言うと、第5番、第8番、第9番については、超スローテンポによる演奏は、間延びした曲想の進み方に違和感を感じずにはいられないところでして、熱狂的なチェリビダッケのファンはともかくとして、とても付いていけないと思う聴き手も多いのではないかと考えられます。これに対して、第3番や第4番、第6番などは、その極大なスケールに圧倒されるところであり、チェリビダッケだけに可能な個性的な名演と評価し得るのではないかとも思われるところです。ブルックナーであれば、テンポが極端に遅くなる前のソニークラシカルから出ているものがいいと思います。
3. Posted by 小島晶二   2022年03月22日 23:51
チェリのブルックナーはおびただしい数のライヴ演奏がリリースされており,勿論全てを聴いた訳では有りませんが,大方指摘された通りです。私はミュンヘン盤よりシュトットガルト盤が好み,特に8番はクナや朝比奈と並んで名演と言って良いでしょう。後はご指摘の3番,6番はテンポの遅さがさほど気にならず,ランクインされる秀演だと思います。90年前後に録音されたソニー盤ははやりスロー,4曲で6枚組というボリュームになっています。レコ芸誌の評価によると宇野氏は違和感ありと酷評,金子建志氏は超凡な名演として推薦され,全く見解が分かれていました。
4. Posted by 和田   2022年03月23日 00:05
ただ今回のメルマガで配信させていただいた8番のリスボンライヴについては大方の意見が超凡な名演として一致しているようで、物凄いアクセスが来て驚いています。勿論AUDIOR(緑)を持っておられる方は同一ですので必要ありませんが、AUDIOR盤で唯一アマゾンが公式に発売に踏み切ったのは正直驚きました。まだ出品者からも購入可能な時にその記事をエントリーしたのは随分前になりますが、未だに私の記事の中で最大数のアクセスをいただいています。勿論AUDIOR盤はあっという間に売り切れました。EMI盤が出たからといって海賊盤を売らないのは正解だったと今更ながら感じています。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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