2022年04月24日

ゴシックの精神、『ゴシックとは何か―大聖堂の精神史』(ちくま学芸文庫)


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北フランスで建設が始まったゴシック様式の教会は、著者がプロローグで述べているようにゲルマン民族のゴート人が創り上げたものではなく、むしろその地の先住民族たるケルト人に関係が深い。

パリやシャルトルの大聖堂の地下を掘っていくと、ケルト信仰の聖所が出て来るというのも象徴的だ。

フランスの山村では中世時代になっても多くの農民達は、異教である大地母神の信仰を頑なに持ち続けていたようで、カトリックの布教者は彼らに違和感を与えることなく改宗させるべく実に老獪な策を敷いた。

彼らの信仰の場所であった森林をイメージさせる広い空間と高い天井、木々の枝が上昇していくようなリブや尖ったアーチ、そして執拗とも言える樹葉のモチーフを使った装飾、更に木漏れ日はステンドグラスに取って代わり、古代の生贄の観念は苦悩するキリスト像にオーバー・ラップさせる。

こうして大地母神信仰が鮮やかに聖母マリア信仰にすり替えられていく。

また著者はゴシック教会の装飾としてしばしば使われる魑魅魍魎の彫刻やレリーフについて、グロテスクなものを好む感性は異教の感性と断言している。

ルネサンス時代にゴシック様式は均整と調和を欠くものとしてラファエッロやヴァサーリによって糾弾された。

確かにフランス、スペイン、ドイツに比較してイタリアには純粋なゴシック様式の建築物は数えるほどしかない。

しかし著者はルネサンスでは許されなかった未完了のアンバランスな姿こそ終わることのない時間の流動性の表現であり、ゴシックの本質と結論付けている。

ゴシックの大聖堂が異種のものに身を開いているように見えるのは、異教から流用された精神的、物質的なあらゆるエレメントが今もってそこに息づいているからだろう。

この著書では酒井氏が建築学の立場に立ったゴシックの特性だけでなく、それが導かれた宗教文化や精神面から筆を起こしているところに価値があり、日本語で書かれた類書の中でも優れた内容が特筆される。

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classicalmusic at 13:26コメント(0)書物 | 芸術に寄す 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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