2022年08月04日
👏簡易で優れた聖書解説👍しかし美術書ではないことを念頭に、、、
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クロノロジカルな編集で旧約、新約の両聖書の歴史と内容がコンパクトにまとめられていて、それぞれのエピソードごとに、それにまつわる1点から2点の名画を紹介して、その見どころを説いたガイド・ブック。
この一冊で聖書の成り立ちとその概要を把握することができ、欧米の教会や美術館を飾る絵画の鑑賞に一役かってくれる実用書でもある。
美術作品の写真についてはオール・カラーで掲載されているので、オリジナルの作品をイメージするのに有効だ。
ただしひとつだけ難を言うのであれば、聖書の解説については要点を分かり易く記述してあるので重宝するが、そこからテーマを採った美術作品の説明がそれほど充実しているとは言えない。
作品の数自体は107点で満足のいくものだろう。
また異なった多くのアーティストが選ぶテーマは往々にして共通しているので、例えばひとつの絵画をサンプルとして、扱われている題材と、それぞれの登場人物が誰であるか、あるいは一緒に描かれている物が何を意味しているかを理解するのに応用ができる。
しかし美術作品の紹介としては、質的にどうしても中途半端にならざるを得ない。
その理由は、先ず一冊の簡易な単行本に2つの重要なテーマを盛り込んだことで、聖書と絵画を同等の質と量で解説することに無理があり、入門書の域を出ていない。
更に美術作品の解説には、どうしても作品の成り立ちやオーダー者が誰であったか、どういうテクニックが使われているかなどの分析が不可欠になる。
このあたりは著者自身が美術の専門家ではないという理由もあるかも知れないが、残念ながら作品の芸術的価値を捉えるまで踏み込んでいない。
もし読者が実際に宗教美術に興味を持ち、それらを鑑賞し、その美術的価値を知りたいのであれば、専門の美術書の併読をお勧めする。
ちなみに67ページに紹介されているラファエッロの『エリコの陥落』は著者の言うシスティーナ礼拝堂ではなく、同じバチカンのロッジャ・ディ・ラファエッロの10番目の天井に描かれたフレスコ画になる。
もうひとつの誤りは203ページのマメ知識欄に出ているラオコーン像はルネサンス期のイタリアの代表作ではなく、ギリシャ彫刻をローマ時代、紀元前一世紀にコピーしたものというのが現在の考古学者の見解である。
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