2022年03月25日
名匠イッセルシュテットの硬派な演奏で聴くベートーヴェン晩年の大作 古今の《ミサ・ソレムニス》録音史に燦然と輝く名演が復活 !
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ターラ・レーベルの名盤を最新リマスタリングで復刻したディスクで、シュライヤーはじめ名歌手を揃えた《ミサ・ソレムニス》のライヴ録音になる。
《ミサ・ソレムニス》は、長くスランプに陥っていたベートーヴェンが、4年間に及ぶ創作を通じて、自らを再生させた音と声による壮大な記念碑である。
それはまた、カトリックの教義と自らの内面の真実との闘争を綴った偉大な魂の記録とも言える。
この作品なしに、晩年の聖なる弦楽四重奏曲群は生まれ得なかったし、カトリック・ミサの範疇では描き切れなかった人類愛、真の自由の究極の理想は《第9交響曲》で実現されたのである。
巨大な声楽と管弦楽が緻密かつ豪快にうねり積み上げられていくベートーヴェンの大曲《ミサ・ソレムニス》を相手に、イッセルシュテットの硬派な美質が存分に発揮された名演だ。
的確に立派に鳴り響く、申し分のない音楽造りは、さすがドイツの伝統を体現する名匠といった演奏である。
この曲は、モノラル録音のトスカニーニ盤を別格とすれば、長らくクレンペラー盤が最高とされてきた。
実際、カラヤンも、ベームも、バーンスタインもショルティもクレンペラーを超えることはできなかったと考えている。
しかし、クレンペラーと近い時期にライヴ録音されたこの演奏はクレンペラーに匹敵するか、あるいはこれを超えた名演奏である。
以下、クレンペラー盤と比較すると独唱者は女声陣は互角であるが、男声陣はシュライヤーとエンゲンでこちらの方が上だ。
オーケストラとコーラスの技量は筆者の聴いたところではこの演奏の方がわずかながら上のように思う。
指揮は、「キリエ」は互角で、「グローリア」と「クレド」はクレンペラーのスケール雄大な指揮に一日の長があるように思うが、「サンクトゥス」以下はこの方が上だと思う。
特に終曲の「アニュス・デイ」はこの方が劇的な迫力があって、暗から明への穏やかにしてゆるぎない移り変わりがことのほか素晴らしい。
多様な精神の流れがひとつに収斂していき、ベートーヴェンの神髄とも言える天上の世界に到達するラストは感動的だ。
オーケストラはイッセルシュテット自ら大戦直後にあちこちの捕虜収容所を回り演奏家を集めて創設した北ドイツ放送交響楽団。
彼は1945年から26年間にわたり初代首席指揮者を務めこのオーケストラを鍛え、世界有数のオーケストラに育て上げた。
その信頼関係が生む悠然とした演奏に注目したい。
また、1966年のライヴ録音ながら非常に明晰でバランスが良く聴きやすいのも特筆されるべきである。
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