2022年04月05日
ライヴの人であることが明らかにされてきた名匠イッセルシュテット、珍しいワーグナーのオペラ録音!言語を絶する熱演‼
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本盤の演奏は、1949年12月16日(奇しくもベートーヴェンと私の誕生日)のハンブルク(オケは結成間もない北西ドイツ放送交響楽団)でのライヴ録音である。
名指揮者イッセルシュテットが最も充実した時代の演奏であると同時に、まだ戦後バイロイト音楽祭の復興もままならぬ時代の記録でもある。
イッセルシュテットは最近ベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》のライヴ録音の日の目を見るなど数々の秀演を遺している。
しかしそれらのライヴ録音にも冠絶する至高の名演は、本盤に収められた楽劇《トリスタンとイゾルデ》であると考える。
それどころか、同曲の他の指揮者による名演であるフルトヴェングラー&フィルハーモニア管による演奏(1952年)やベーム&バイロイト祝祭管による演奏(1966年)、さらにクライバー&シュターツカペレ・ドレスデンによる演奏(1980〜1982年)と並んで4強の一角を占める超名演と高く評価したい。
フルトヴェングラーが深沈とした奥行きの深さ、ベームが実演ならではのドラマティックで劇的な演奏、クライバーがオーケストラのいぶし銀の音色を活かした重厚さを特色とした名演であった。
これらに対して、学者風でにこりともしない堅物の風貌のイッセルシュテットが、同曲をこれほどまでに官能的に描き出すことができるとは殆ど信じられないほどである。
イッセルシュテットは、実演でこそ本領を発揮する指揮者あることが明らかにされてきている。
本演奏でもその実力を如何なく発揮しており、冒頭の前奏曲からして官能的で熱き歌心が全開だ。
その後も、トゥッティに向けて畳み掛けていくような気迫や緊張感、そして切れば血が吹き出してくるような強靭な生命力に満ち溢れており、全盛期のイッセルシュテットならではのリズミカルな躍動感も健在だ。
テンポは若干速めであるが、隙間風が吹くような箇所は皆無であり、どこをとっても造型の堅固さと充実した響きが支配しているのが素晴らしい。
セッションにおける冷静なイッセルシュテットとは趣が異なり、実演でこそ燃え立つ真の名匠としてのイッセルシュテットの逞しい音楽が渦巻いている。
ハンブルクに集結した名歌手陣の、その感動的な歌唱の魅力は素晴らしく、現在聴いても少しも色褪せていない。
とりわけ、第2幕のイゾルデ役のパウラ・バウマンとトリスタン役のマックス・ローレンツによる愛の熱唱は、イッセルシュテットの心を込め抜いた指揮も相俟って、おそらくは同曲演奏史上でも最高峰の名演奏に仕上がっている。
その官能的な美しさといい、はたまたドラマティックな迫力といい、聴いていてただただ圧倒されるのみである。
そして、第3幕終結部のイゾルデの愛の死におけるバウマンによる絶唱は、もはや筆舌には尽くし難い感動を覚えるところだ。
これらの主役2人のほか、今となっては贅沢な脇役陣の渾身の熱唱も、本名演に大きく貢献していることを忘れてはならない。
録音は、1949年のモノラル録音にしては十分に満足できる音質であり、ワグネリアンには必聴の熱演と絶賛したい。
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