2022年05月23日

カミュの人生観がいたるところに反映された魅力的な短編集


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カミュの人生観がいたるところに反映された魅力的な作品集で、中でも『転落』は主人公のモノローグで全編を通す小説の設定がかなり個性的だ。

そして前半と後半での彼の半生の吐露とその理由は、驚くほどのコントラストを見せるが、それはカミュによって巧みに計算された構成だろう。

そこにはまたカミュ自身の体験も主人公のセリフを通して見え隠れしている。

例えば恋愛観について、「わたしはもてたし、それを利用していたということ。しかしなんの打算も働いてはいなかった。わたしは誠実、そうほとんど誠実だったのです。女との関係は自然で、自由で、いわば安易なものでした…」女性に対して発展家であった彼自身の反省があるのかもしれない。

『不貞』は砂嵐の厳しい自然環境の中に生きるアラビア人のオアシスに、商売のためにやってきた夫と、気の進まぬままについてきた妻の心境を描いた佳作だが、カミュの情景描写は素晴らしい。

一見なんの魅力もないような街の高台から俯瞰する大地や空の色彩の移り変わり、しかしそれは夫とのそれまでの生活を見直さざるを得ない強烈な印象を妻に与える。

彼女は夜半に一人ホテルを抜け出して、もう一度その高台へ向かう。

この作品はカミュの妻フランシーヌに捧げられている。

『背教者』はカミュの宗教観を扱ったドラマティックな作品で、やはり灼熱の砂漠地帯に舞台が置かれている。

カトリックとは常に一定の距離を保っていた彼の物語の大胆な設定は殆ど究極的だが、難解な中にも肉体的苦痛を超える精神の行き場が模索されているのではないだろうか。

一方『唖者』は貧しく障碍者でもある樽職人の苦悩と家庭でのささやかな幸福を扱ったネオレアリズモ的なペーソスを含んでいる短編。

この話はカミュの実の叔父で聾唖者だが腕の良い樽職人エチエンヌがモデルになっているに違いない。

幼い頃のカミュを我が子のようにかわいがってくれた叔父へのオマージュと言うべきか。

また『客』はアラビア人の犯罪者に対する同情、それは弱い立場の者や貧しさへのカミュの温かい眼差しでもあるのだが、主人公の教師ダリュは憲兵が連れて来た殺人犯が誠実な人間と見るや、食料を持たせて彼の選択に任せて逃がしてしまう。つ

まり町へ行って不当な裁判を受けるか、あるいは遠く離れた遊牧民の部落で匿ってもらうかは彼次第というふたつの道を示して、物語は終わっている。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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