2022年07月31日
歴史を読み解く醍醐味👉藤沢道郎 (著)『皇帝ハドリアヌスから画家カラヴァッジョまで』
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「物語イタリアの歴史」の二冊目に当たり、藤沢氏の没後にまとめられて文庫本化された。
本書の構成は一冊目と同様イタリア史にとっての重要人物を各章ごとに一人ずつとりあげ、彼らの人生と歴史との関わりあいを読み物として興味深く描き出している。
今回はローマ皇帝ハドリアヌスの陵墓、つまり後のカステル・サンタンジェロ建設以降1600年代初頭までに生きた8人の生涯が活写されているが、できれば一冊目との併読をお勧めする。
それによって単独のエピソードがより緊密に繋がり、歴史の狭間をお互いに埋め合わせ、それぞれの時代の動向が一層鮮明に浮かび上がってくるからだ。
イタリアの歴史は常にヨーロッパ近隣諸国との関係の中に成立していて、イタリアのみを切り離して理解することはできない。
またそこに登場する類い稀な能力を持った指導者、軍人、そして宗教家や芸術家は枚挙に暇がない。
こうした人物によって歴史そのものが動かされる場合も少なくないことを考えれば著者の試みは成功している。
勿論藤沢氏がマルコ・ポーロやダ・ヴィンチ、あるいはボルジャ家に関する物語を構想していたなら、更に私達の興味をそそる作品が出来上がったに違いない。
しかし残念ながら彼は続編を準備することなく2001年に亡くなった。
いずれにせよ長大な歴史書を頭から読んでいくよりも、むしろ個々の登場人物の性格やその生き様を知り、歴史の流れを把握することの方が遥かに面白く、また記憶に残るものだ。
尚著者自身が校訂していれば明らかに訂正されていた筈だが、179ページにカラヴァッジョの没した港ポルト・エルコレがナポリ領とあるが、この港はトスカーナ大公国に属していてローマより北側に位置している。
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