2022年05月22日
歴史の裏(影ではありません)に生きた小さなヒーロー達
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この作品の文庫本化を心から歓迎したい。
如何なる宗教を信仰する者にとっても、また如何なる宗教をも信仰しない者にとっても、夢のように輝かしかった青春時代を忘れることなく信念を貫き通した彼らの余りにも純粋な生き様と友情は感動的である筈だ。
天正十年に長崎を出航した4人の少年は当時まだ11歳から14歳だった。
感受性に富み、ヨーロッパ文化をどの日本人より素早く吸収した少年達は来るべき将来に夢を膨らませた。
だが八年後に帰国した彼らを待っていたものは、そうした希望の一切を否定する執拗な弾圧と迫害だった。
その後の4人は異なった為政者と異なった宗教の狭間にあってもなお真剣に人々の将来を案じ布教を続けたが、当時の日本の権力者には世界情勢を読み取り、国際社会の中での自国の発展を考えるだけの器量に欠けていた。
何故なら当時のイエズス会の布教はアジア植民地化の手段ではなかったという意外な事実が著者によって明らかにされているからだ。
宣教師達は日本の洗練された文化と聡明な国民に敬意を表していた。
そして彼らが真に求めたことは文化、経済交流の上でのキリスト教化だった。
そうでなければ私財を投げ打って日本に学校や病院を建設したルイス・デ・アルメイダや異なった文化圏どうしの軋轢と戦国時代の混乱に挫折して日本を去ったフランシスコ・ザビエルの行動は説明がつかないだろう。
しかし日本は最終的に鎖国という形で、一方的にこの交流を断ち切ってしまった。
若桑みどり氏はプロローグではっきりとこう言い切っている。
「この4人の少年の運命は日本の運命に他ならない」と。
著者の、当時の歴史とそれに関わった膨大な登場人物への綿密な調査と鋭い洞察によって、真実を浮かび上がらせる能力と書法は並大抵のものではない。
例えば織田信長に対する歴史的な位置付けもここでは歴然としている。
彼は西洋文化を称賛し、宣教師達に朱印状を出し正式な布教許可を与えた。
無神論者であった信長の政治的な構想が覇権に根ざしていたことは否定しがたいが、また一方で当時鋭敏に世界情勢を感じ取り、国際社会に目を開いていた殆んど唯一の武将だったことも認めざるを得ない。
この文庫本は上下2巻に分かれ、上巻ではキリスト教伝来と当時の日本の社会状況、そして少年使節の出帆からスペイン国王フェリペ二世の謁見までが描かれている
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