2022年05月22日
歴史の影(こちらは裏ではありません)に生きた小さなヒーロー達(2)
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下巻の前半部は、長くしかも深刻な著作の中にあって一番華やいだ、そして読者にとっては息抜きのできる部分だ。
使節派遣の立案者、イエズス会の巡察師ヴァリニァーノはヨーロッパでの彼らの待遇について「あくまでも質素に、しかし心のこもった暖かいもてなし」と指示した。
だが彼の当初の希望とは裏腹に、当時の諸国の権力者達の見栄の張り合いによって少年使節への歓待が野放図にエスカレートしていくところは読んでいて思わず笑いが込み上げて来る。
スペイン国王フェリペ二世が少年達を国賓扱いしたことを知ったイタリアのトスカーナ大公フランチェスコ・デイ・メディチはそれを上回る舞踏会付の大歓迎会を催した。
使節の最終目的であったカトリックの総本山、バチカンのローマ教皇グレゴリウス十三世の謁見に至っては当初非公式の予定だった簡素な式典を反故にして、枢機卿、大司教、貴族や騎士達が勢揃いするローマ全体を巻き込んだ公式の大謁見になってしまう。
彼らのローマ市入場はあたかも凱旋将軍の如く、聖天使城から打ち上げられた160発の祝砲とファンファーレの鳴り響く中で行われたのだ。
少年使節が滞欧中、日本では劇的な政治変遷が続いた。
この本の下巻中間部では本能寺の変を中心に、節操無く常に勝利者側に身を寄せる風見鶏的な朝廷や、その後の秀吉の伴天連追放令から更に徳川幕府の陰湿で徹底したキリシタン迫害に焦点を当て歴史の真相に迫っている。
一縷の希望をも見出せない後半部分を読み通すのは辛いものがある。
著者はその後の四人が辿った足跡を追う。
そこにはかつての少年達の魂の叫び声が聞こえてくるようだ。
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