2022年05月29日
フィレンツェを知りたい人のために😎『フィレンツェ』若桑 みどり (著)
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著者若桑氏の真摯な姿勢によって書き下ろされた本書は、フィレンツェに残された膨大な歴史的、あるいは芸術的遺産を丁寧に紹介した実用的なガイド・ブックの側面を持っている。
同時に、ルネサンスを生み出した新思想の母胎としての奥深い都市の歴史をまとめあげた労作として高く評価できる著作だ。
ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ボッティチェッリら、天才たちの名と共にルネサンスの栄光に輝く都市・フィレンツェ。
町の起源から、自治都市国家としての繁栄、メディチ家の興亡、さらにウッフィーツィ美術館の歩き方まで、自由と独立を愛する人々に愛され続け、市民の手で守り抜かれた「花の都」の歴史と芸術を、西洋美術史家が案内する決定版体裁を美しく仕上げるよりも、むしろ内容の充実の方に力が注がれている教養書なので、豊富なカラー写真やイラストで彩られたイメージ主体のガイドとは全く別物であることを知っておく必要があるだろう。
掲載されている写真は単行本の時から口絵以外は白黒でサイズも小さいものだったが、それはあくまで実際に実物を見るための目安にすぎない。
しかし今回の文庫本化で携帯の便宜が図られ、フィレンツェの見どころがより身近に、しかも詳細に体験できるようになったことを歓迎したい。
彼女が美術の専門家であることから本書で取り上げて説明している絵画、彫刻、建築物などは非常に豊富で、また比較対象のためにも数多くのサンプルを提供している。
若桑氏の文章はそれほど平易ではなく、読む側にもある程度予備知識が求められる。
随所に特有の鋭い洞察があって美術史家としての主張に貫かれているところが最大の面白みだ。
特に第9章『ウッフィーツィを歩きながら』は、この著書を総括する彼女の研究の面目躍如たる章になっている。
通り一遍の観光旅行から一歩踏み込んだルネサンスの美術巡りをしたい方には、本書と中公文庫から出版されている高階秀爾氏の『フィレンツェ』の併読をお薦めしたい。
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