2022年05月17日

建前と本音に苦悩した作曲家が本当に自分の書きたい音楽を書いた最後の交響曲、ザンデルリンクの腕が冴えるショスタコーヴィチ


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ザンデルリンクはムラヴィンスキーに師事するとともに、ショスタコーヴィチと親交があったこともあって、ショスタコーヴィチを得意としており、交響曲第15番については2度にわたってスタジオ録音している。

最初の録音が、本盤に収められたベルリン交響楽団との演奏(1978年)であり、2度目の録音が、クリーヴランド管弦楽団との演奏(1991年)である。

いずれ劣らぬ名演と言えるところであり、特に1991年の演奏については円熟の名演とも言えるが、筆者としては、より引き締まった演奏全体の造型美を味わうことが可能な本演奏の方をより上位に掲げたい。

ザンデルリンクはムラヴィンスキーが音楽監督時代のレニングラード・フィルの客演指揮者として研鑽を積んだ。

ムラヴィンスキーのような全軍水も漏らさぬ指揮官のこわもてのイメージはなく、精緻だがオーケストラの持ち味を生かした柔軟な音楽作りが冴えている。

強引と思われるような牽引や聴き手を疲弊させるようなこともない、豊かな音楽性を引き出すことにかけては第一級の腕を持っていた。

彼は旧ソヴィエト時代にショスタコーヴィチと個人的な交流を持っていたので、作曲家の良き理解者として作品に寄り添った解釈が聴きどころだ。

決してシニカルにならず、いたって真摯な表現力と緻密な統率から表現される繊細なサウンドはザンデルリンクならではのものだ。

本演奏も、さすがに、師匠であるムラヴィンスキーの演奏(1976年)ほどの深みや凄みには達していない。

それでもザンデルリンクによる彫りの深い表現が全体を支配するなど、外面だけを取り繕った薄味な演奏にはいささかも陥っていないと言えるところだ。

加えて、ドイツ人指揮者ならではの堅固な造型美や重厚な音色が演奏全体を支配しており、その意味では、ムラヴィンスキーによる名演の持つ峻厳さを若干緩和するとともに、ドイツ風の重厚さを付加させた演奏と言えるのかもしれない。

いずれにしても、本演奏は、ムラヴィンスキーなどのロシア系の指揮者以外の指揮者による演奏の中では、最右翼に掲げられる素晴らしい名演と高く評価したい。

第1楽章はおもちゃ箱をひっくり返したような無邪気さが特徴だが、荘重なブラスのコラールで始まる第2楽章、十二音技法の第3楽章は音楽的統一性に首を傾げたくなる。

そして終楽章では再び他の作曲家の作品からの剽窃がオンパレードとなり、パッサカリアの古い技法も使われる。

ショスタコーヴィチはそれまでの総ての音楽技法を集大成したような交響曲に仕上げた。

結局彼は他人から何を言われようと、自分の書きたい音楽をこの交響曲に纏めたのではないだろうか。

それが奇しくも彼の最後の交響曲になったのは言うまでもない。

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classicalmusic at 20:47コメント(0)ショスタコーヴィチ | ザンデルリンク 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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