2022年05月17日
ブルックナーの管弦楽法を熟知しているザンデルリンク、ハース版で表面的な派手さを避ける7番、作曲家の朴訥とした作風を滲み出させている点も秀逸!
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ドイツの名指揮者クルト・ザンデルリンクは晩年ヨーロッパの名門オーケストラだけでなく、中堅として支える地方の実力派の楽壇に頻繁に客演したが、シュトゥットガルト放送交響楽団とも質の高い演奏を遺してくれた。
そのひとつが1999年12月に行われた地元リーダーハレでのライヴで、演奏終了後の拍手や歓声の他は客席からのノイズは殆ど混入していない。
またブルックナーには不可欠なホールの潤沢な残響にも不足していない。
欲を言えばサウンドの立体感が欲しいところだが、レギュラー・フォーマットのCDでは限界があるのも事実だ。
残念ながら大手メーカーからはザンデルリンクにブルックナー交響曲全集の企画は持ち込まれなかった。
この第7番の他にはベルリン放送交響楽団、コンセルトヘボウ、BBCノーザン、ゲヴァントハウスそれぞれとの第3番とバイエルン放送交響楽団との第4番『ロマンティック』などがレパートリーとして挙げられる程度だ。
第3番、第4番と並んで彼の大曲をまとめ上げる力量と知的なアプローチが作品の重厚な構成感を聴かせるだけでなく、ここではまたライヴならではの白熱した雰囲気も伝わってくる。
全曲を通じて高揚感に溢れており、なかでも第2楽章ではザンデルリンクの持ち味とも言える美しい弦の響きが存分に発揮された、素晴らしい演奏が繰り広げられている。
この作品のハース版を使うところにもザンデルリンクの表面的な派手さを避ける意思が見えている。
特に第2楽章の後半でのクライマックスにシンバルやトライアングルが加わると、往々にしてあざとさが表出されてしまう。
ワーグナーの楽劇のような舞台作品であれば、時には効果的だが純粋な管弦楽曲には慎重でなければならない筈だ。
そうした管弦楽法を熟知している指揮者としてザンデルリンクは第一級の腕を示している。
またシュトゥットガルト放送交響楽団も彼の悠揚迫らぬテンポの中に、広いダイナミズムを巧みにコントロールして高度な合奏力で呼応している。
2012年に統廃合が行われた結果、現在では南西ドイツ放送交響楽団の名称で呼ばれているシュトゥットガルト放送交響楽団だが、確かにオーケストラとしての完成度から言えば彼らを上回る楽団は少なくないだろう。
しかしこのブルックナーではザンデルリンクの悠揚迫らざるテンポの中に、幅広いダイナミズムを巧みにコントロールした采配に呼応する、高度な合奏力を持ったオーケストラであることが証明されている。
むしろ超一流のオーケストラではそれほど顧みられない作曲家の朴訥とした作風を滲み出させているところも秀逸。
こうした表現に関してはドイツの地方オーケストラがかえってその実力を示しているのは皮肉だ。
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