2022年06月06日

堅固で揺るぎない構成力、重厚で重みのある響き、強靭な集中力の持続、彫りが深く格調の高い造形的美観、バックハウスのベートーヴェン《ディアベッリ変奏曲》唯一の録音


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ウィルヘルム・バックハウスはモノとステレオで2度ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集(第29番を除く)を完成していたが、《ディアベッリの主題による33の変奏曲》はこれが唯一の録音(1954年10月、ヴィクトリア・ホール、ジュネーヴ)である。

バックハウスは、ベートーヴェン弾きとして歴史に名を刻んでいるが、実は意外に幅広いレパートリーをもったピアニストであった。

若い頃は"鍵盤の獅子王"と呼ばれた技巧派で、いかなる難曲もさらりと弾いてしまうほどであったが、それが逆に冷たい演奏という印象を与えてもいたようだ。

ピアニスティックなショパンを弾いていたのもその頃であったが、やがて外面的な美を追求することをやめた。

作曲家の精神あるいは作品の本質に迫る姿勢に変わって、素朴で武骨な、いかにも男性的な演奏を聴かせるようになった。

そうしたバックハウスの真価が最高度に発揮される場がベートーヴェンであったと考えるのは、決して筆者だけではないだろう。

そして、この《ディアベッリ変奏曲》は、ピアノ・ソナタ旧全集と並んで、彼のベートーヴェンの真髄を味わうことのできる録音になっている。

ステレオ録音による新全集と比較すると少し音質は古いが、ここに示された堅固で揺るぎない構成力、重厚で重みのある響き、強靭な集中力の持続、彫りが深く格調の高い造形的美観などは、衰えをみせる前の彼ならではの持ち味であり、それは、このピアニストの本領を鮮やかに伝えているのである。

バックハウスは正確な読みを通じて、作品の根源に迫っている。

彼が読み取ったベートーヴェンの音楽からは、装飾的要素や遊びやゆとりの要素が一切無縁なものとして切り捨てられている。

この《ディアベッリ》はまさにそうしたものとして提示され、ほかには考えられないぎりぎりの解釈を強靭に主張する。

その表現は威厳のある風格を備えると同時に、優しさを感じさせ、特にこのベートーヴェンには隙のない技巧に加えて、独特の味わいがある。

変にうまそうに弾いたり、媚びたり、小才を利かせたりするところがいっさいなく、ピアニズムを感じさせずに、作曲者の魂が深く重厚に、立体的に、交響的に迫ってくる。

最も偉大で立派な音楽があり、本演奏に肉薄し得たのは最晩年のアラウのみであろう。

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classicalmusic at 14:25コメント(0)ベートーヴェン | バックハウス 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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