2023年02月02日

巨匠ヨッフムEMI集成盤⏺️まさにドイツ正統派とも言うべき重厚な演奏🪨質実剛健で簡素な表現🌑最もオーソドックスなドイツ音楽のスタンダード❕


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ヨッフムが最盛期にEMIにスタジオ録音した名盤の待望の復活を先ずは大いに歓迎したい。

本BOXに収録されているブラームスの交響曲全集及びブルックナーの交響曲全集は既にレビュー投稿済みなので、そちらを参照していただきたい。

手堅い表現で知られたヨッフムは、晩年スケール感を加えて驚くべき境地に達し、80歳を過ぎてからの来日公演におけるブルックナーは忘れえぬ名演だった。

ロンドン交響楽団を率いたベートーヴェンの交響曲全集は、一期一会の崇高な演奏で、中庸にして核心を突く壮年期ならではの才腕が聴き取れる。

ヨッフムというと手堅い演奏で知られているが、この交響曲全集も非常に綿密な演奏で、正確な演奏である。

有名なカラヤン盤と比較すると、テンポも遅めで、演奏も華やかではないが、その簡素な表現と質実剛健とも言える演奏は、むしろ最もオーソドックスなベートーヴェンのスタンダードと言えるものである。

このベートーヴェンも、もう1つのコンセルトヘボウ管弦楽団との全集と同じく、猛々しい部分も凪の部分も、ヨッフム独特の「愛」が感じられる名演である。

近年では、ベートーヴェンの交響曲の演奏様式も当時とは大きく様変わりし、小編成オーケストラのピリオド楽器による演奏や、大編成のオーケストラによるピリオド奏法による演奏などが主流を占めつつあり、いまやかつての大編成のオーケストラによる重厚な演奏を時代遅れとさえ批判するような見解も散見されるところだ。

近年発売されたティーレマン&ウィーン・フィルによるベートーヴェンの交響曲全集は、そうした近年の軽佻浮薄とも言うべき演奏傾向へのアンチテーゼとも言うべき意地の名演であったが、それも少数派。

一部の音楽評論家や音楽の研究者は喜んでいるようであるが、少なくとも、かつての大指揮者による重厚な名演に慣れ親しんできたクラシック音楽ファンからすれば、あまり好ましい傾向とは言えないのではないかとも考えられるところだ。

パーヴォ・ヤルヴィやノリントン、ジンマンなどによって、芸術的にもハイレベルの名演は成し遂げられているとは言えるものの、筆者としては、やはりどこか物足りない気がするのである。

そうした中にあって、ヨッフム&ロンドン交響楽団による演奏を聴くと、あたかも故郷に帰省した時のように安定した気持ちになるのは筆者だけではあるまい。

もちろん、ヨッフムは何か特別な解釈を施しているわけではない。

奇を衒ったようなアプローチは皆無であり、ロンドン交響楽団の幾分くすんだドイツ風の重厚な響きを最大限に生かしつつ、曲想を丁寧に描き出していくというオーソドックスな演奏に徹していると言えるところだ。

もっとも、随所にロマンティシズム溢れる表現や決して急がないテンポによる演奏など、ヨッフムならではの独自の解釈も見られないわけではないが、演奏全体としてはまさにドイツ正統派とも言うべき重厚な演奏に仕上がっていると言えるだろう。

オーケストラの自発性を引き出した柔らかな響きの「田園」や溌剌とした第8番など、偶数番号がなかんずく優れた出来栄えである。

もちろん、ベートーヴェンの交響曲全集にはあまたの個性的な名演があり、特に偶数番号の名演としては、ワルター&コロンビア交響楽団、イッセルシュテット&ウィーン・フィルなどが存在する。

これらと比較すると強烈な個性に乏しいとも言えるが、ベートーヴェンの交響曲の魅力をダイレクトに表現しているという意味においては、本盤のヨッフムによる演奏を素晴らしい名演と評価するのにいささかの躊躇をするものではない。

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classicalmusic at 22:31コメント(2)ヨッフム | ベートーヴェン 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2023年02月02日 23:15
5 ヨッフムの集大成とも呼べる全集,勿論特選盤と評価して宜しいかと思います。仰る通り,温もりを感じるインテンポの秀演揃いで,曲の見通しもすこぶる良好と感じます。私は特に壮健な7番とソロ歌手の顔ぶれと第3楽章の演奏が卓越した9番を大いに評価したいと思います。この頃 (1970年代後半),ヨッフムはブルックナーとブラームスの交響曲全集を並行して録音しており,まさに絶好調の時期でした。それ故深みは増すものの,スローテンポに傾倒して行く1980年代の彼とは一線を画していますね。旧EMIの録音は高音にピークが有って,必ずしも良好とは言えないが,ヨッフムの慈しみの心に触れるという点ではそれで良かったのかも知れませんね。
2. Posted by 和田大貴   2023年02月02日 23:25
ご垂涎の第7番について言えば、第3楽章中間部のロマンティシズム溢れる表現や第4楽章の決して急がないテンポによる演奏など、ヨッフムならではの独自の解釈も見られないわけではありませんが、演奏全体としてはまさにドイツ正統派とも言うべき重厚な演奏に仕上がっていると言えるでしょう。揺るぎない基礎から積み上げていく堅牢な音響が顕著で、細部までぶれがなくまとめていますが、むやみにスケールを強調して作品を誇大に見せたり、聞こえよがしの演出的効果などは一切なし。彼のスタイルはドイツ的とよく称されますが、それは、中央ヨーロッパの、落ち着いた色合いの響きから、奥行きの深い、しかし溶け合ったサウンドを引き出し、ここぞという所では勇壮な迫力を導いたことを表しています。ベートーヴェンの魅力をダイレクトに表現しているという意味においては、ヨッフムによる演奏を素晴らしい名演と評価するのにいささかの躊躇をするものではありません。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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