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ワルター

2008年05月19日


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楽しいレコードだ。

ワルター最晩年の録音だが、実に若さにあふれており、ワルターが悦に入って歌いながら指揮している様が眼に見えるような演奏だ。

いずれもワルター独自の愛と豊かな歌に満ちあふれた心温まる演奏で、どの曲にもモーツァルトに対する敬愛の念が強くにじみ出ており、そこに強く心打たれる。

音楽の核心に迫った軽快な「フィガロの結婚」、しなやかに旋律を歌わせた「コシ・ファン・トゥッテ」、そして青年のようなみずみずしさで表現した「魔笛」など、どれもモーツァルトの音楽の美しさを理想的に歌いあげている。

ただし、「ドン・ジョヴァンニ」の序曲が含まれていないのは惜しい。

オペラの序曲もよいが、「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」は傑作だ。細かな音まで神経がゆきわたっていて、しかも歌えるだけ歌っている。

きりりと引き締まった気品のある表現で、細部にまで磨き抜かれた、表情の豊かな演奏をおこなっている。

特に、第2楽章の柔らかな、そして、あたたかみのある表情は比類がない。

ワルターならではの、やさしさと愛と歌にみちあふれた名演で、最晩年の録音とは信じられないほどの生気が感じられるのが素晴らしい。

これはまったくワルターのセレナードといってよいだろう。素晴らしい美しさだ。

「フリーメーソンの葬送音楽」もモーツァルトの真髄をついた素晴らしい演奏で、ここにはこの巨匠の持ち味が最高度に発揮されている。

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2008年05月13日


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フェリアー(1912-1953)がEMIに残したSP録音から復刻CD化したもの。

「大地の歌」とともに、フェリアーの不朽の名唱として知られているディスクである。

ワルターとウィーン・フィルという最も理想的な背景を得て、不滅の名歌手フェリアーの深々とした歌がよみがえる。

特に「亡き児をしのぶ歌」の女声盤は、いまだにこの歌唱をしのぐ演奏は出ていない。

モノーラル録音なので音質は決してよいとはいえないが、この作品にただよう深々とした哀感を、これほど心をこめてじっくり歌いあげた歌唱というのもめったにない。

この3年後にフェリアーは42歳という短い生涯を閉じる。

いうなれば、これは死を間近にひかえた彼女の《運命の歌》でもあったのである。

グルックの「オルフェオとエウリディーチェ」からの4曲も彼女ならではのものだし、パーセルやヘンデルも最も得意とするレパートリーだ。

これらの歌唱には、今の歌手たちには聴くことのできない深い味わいがある。

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2008年04月02日


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ワルターとバイエルン国立管弦楽団の珍しいコンビによる1950年のライヴ。

ワルターの最も多忙な時期の録音で、それだけに若々しい活気がみなぎる演奏となっている。

しかも音楽にいかにも手づくり風のホームスパンのような素朴なあたたかさがある。

特に「未完成」がずばぬけた名演で、この曲のつきるところのない魅力を一度に解明してみせた感がある。

特に第2楽章は深く心をこめて歌う。

およそ考えられぬほどの高貴な抒情で満たされ、この音楽の限りなく永遠に続くことを願う気持ちすら起きる。

ワルターはマーラーと一心同体の人だ。

だいたいマーラーを得意にしている指揮者だが、なるほどこの演奏は素晴らしい。

マーラーが演奏したらこうなるだろうと思われるくらいにマーラーそのものになりきっている。

造形の安定度の高さも特筆に値するが、全4楽章をスケール大きい気宇でまとめていることも高く評価できる。

後年のステレオ録音の円熟した演奏もいいが、これはこれで改めて傾聴したい秀演。

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2008年03月26日


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ワルターの第4番は、作品の抒情性を豊かに引き出した演奏で流麗この上ない。

ワルターの解釈は情緒豊かで、この交響曲からほのぼのとした感情を引き出している。

特に第2楽章のなぐさめにみちた暖かい表現は印象的で、後半の2つの楽章も力強い。

第2楽章で、ホルンの演奏から静かに主題が歌い出される柔らかでのどかな雰囲気はまったく比類がない。

けだし、この第2楽章は絶品である。

ワルターがいかに心の底からロマンティストであるかを実感する。

そして、ワルターの演奏を聴いていると、この作品の諦観ともいうべき静けさがひしひしと感じられる。

ニュアンスの美しさも特筆に値するが、終曲では音構造が明確に表現され、単なるロマンティシズムを突きぬけた境地を示す。

「ハイドンの主題による変奏曲」は整った構成で各楽章が入念に処理されており、格調高い演奏だ。

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これは春風のようになごやかでまた香り高いハイドンであり、実にふくよかな感情を古典の造形に融合させたワルターならではの名演。

ワルターはハイドンの中に抒情詩を発見して、それを楽しんで吟じている。

これはワルターの遺産にふさわしい。

特に「軍隊」は知・情・意の均衡が素晴らしい。

「V字」は第2楽章の遅いテンポの歌が、現在の演奏には求められぬもので、その味わいは豊かで、深い。

ワルターでなければ演奏できないハイドンである。

聴く者の心をあたたかな愛情で満たしてくれる、こうした柔らかに微笑んだハイドンを演奏する指揮者はもう求められなくなった。

CD化によってオーケストラのバランス感もかなり高められ、演奏全体がより澄明に生彩を増している。

CD化された往年の名指揮者の演奏のなかでも、ワルターはことに成功したものが多い。

遅めのテンポで朗々と歌わせた旋律や、こまやかなニュアンスが、CD化されたことによって、より明瞭に伝わってくる。

半世紀近く前の録音とはとても思えないほどだ。

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2008年03月09日


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ワルターはロマンティシズムの体験者であった。それは第1次大戦後の新しい音楽の流れに対してとった態度からも明らかである。

彼はシェーンベルクの「グレの歌」や「浄夜」には愛着を示しながら、十二音技法には疑問を投げかけている。彼の次の世代の指揮者たち、クレンペラー、クライバー、フルトヴェングラーがかなり積極的に新しい傾向の作品を取りあげたのに対し、ワルターは消極的であった。

ただ彼のロマンティシズムは世紀末的なデカダンスとは無縁なもので、人間が本来もっている性格の一つとしてのロマンティシズム、言葉をかえれば人間性そのものであった。そのことはミュンヘン時代を回想する彼の言葉によく表わされている。

「戦争や革命や政治的な改造があったにもかかわらず、当時の世界は相変わらず、文学と音楽、学問と人間性がみずからのかちえた地位を主張し、十戒と人間的な良心が千年にわたるその支配権を行使できるような(中略)ものであった。それはわれわれの音楽が生まれた世界であり、人間精神の偉大な業績が作り出された世界だった。」(『主題と変奏』)

ワルターの芸術の本質が楽天的で、メランコリーであるにしてもペシミスティックな陰がないのは、それがこのような世界観、音楽観に根差しているからである。

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2008年03月04日


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ワルター最後の録音のひとつ。

1938年のワルターとウィーン・フィルによる凄絶な歴史的名盤によって、コロンビア響との録音は影が薄くなってしまったが、最後の録音のひとつという感傷を抜きにしてもこの演奏には心を打たれる。

初演者であるワルターは、さすがにこの曲に共感をもって、隅々まで曲を手中に収めた表現である。

全体に作品の歌謡性を豊かに生かしており、ワルターの芸術性を最もよく表現した演奏である。

「死を予感する者の悲劇的で絶望的な別れの曲だ」とワルターが言ったこの曲が彼の死別の曲ともなった。

第1楽章の初めの死への悲しみを伝える神秘的な弦の低音動機からしてワルターは聴く者の心をつかんで離さない。

悲劇的なものがきつく厳めしくのしかかってこないで、詩情のヴェールを通して心にしみ入ってくるのである。

それゆえ、ワルターの表現は柔和ではないかと、訝る向きもあるだろう。それは、ワルターがクレンペラーのように、死に怯えるマーラーをとことん追いつめることがないからである。

「恐怖」に怯える魂を慰める大きな愛こそ、ワルター芸術の神髄なのだから。

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2008年02月26日


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巨匠の演奏を残すために結成されたオーケストラといえば、ワルターのためのコロンビア交響楽団もそうである。

コロンビア交響楽団という名称は、米コロンビア(CBS)が他社との契約上正式な名称を使えない場合に使用したもので、特定のオーケストラの名称ではない。

こうした例は当時、ほかにもRCA(ビクター)のRCAビクター交響楽団などいくつかあった。

しかし、引退していたワルターの演奏を開発されたばかりのステレオに残すために行われた録音のオーケストラは、ワルターが引退生活を送っていたロスアンジェルス在住の演奏家を集めて結成されたのである。

ハリウッド映画が全盛だった当時は、映画音楽のためのフリーのすぐれた演奏家が大勢いたから、1958年から61年まで毎年1月から3月まで綿密なスケジュールを決め、ほとんど同じメンバーによってベートーヴェンとブラームスの交響曲全集をはじめ、ワルターの主要なレパートリーの大半を記録することができたのである。

ただし、ベートーヴェンの第9の終楽章だけは合唱団の都合でニューヨーク・フィルを使ったといわれる。

ワルターも1枚だけなら、マーラーの交響曲第1番「巨人」を挙げておく。

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2008年02月15日


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ディジタル・リマスタリングにより録音がリフレッシュされたためか、ワルターの名演がたいへん聴き易くなった。

第4番では金管群は力強さを増し、そのため終楽章などいっそう雄大な音楽と感じられる。

第1楽章も壮麗で、展開部は部分的にやや緊張力が乏しいが、音楽的には常にゆとりがあり、対旋律もよく歌っている。

第2楽章も端正でありながら、情緒豊かな表現もワルター的といえる。

第7番は作品自体が抒情性を前面に表した曲なので、作品とワルターの音楽的本質が深く関わり合った演奏といえる。

特に第1楽章は響きの量感を別にすれば、非常にワルター的といえる。

ただ、ワルターの感性と作品の抒情性が重畳したためか、演奏が歌謡的に傾斜し、造形的な厳しさという意味では問題も残す。

このような弱点もあるが、やはり捨てがたい優美な演奏である。

第9番はワルターの個性を強く表しながら、極めて格調が高い。

特に第3楽章は改めてワルターの深遠な芸術を感じさせるが、それと同時に人間的な情味を色濃く残しているのがユニーク。

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2008年01月11日


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第40番第1楽章の第1主題の魅力には、クラシック音楽ファンならずとも一度はとりこになるであろう。

そのテーマをこのCDで聴いたときには腰を抜かさんばかりに驚いて、感動した。

美しいポルタメントがかけられているのである。

こんなことはワルターとウィーン・フィルでなければ不可能であろう。

事実、ワルターは残された他の録音ではポルタメントはかけていない。

2曲ともに演奏の前後に熱狂的な拍手が収められており、ときにワルターの声も入るなど臨場感が強い。

特に第40番はえもいわれぬロマンティックな、そして孤高の寂寥感を持った稀有の名演である。

ウィーン・フィルとワルターの心が通じ合ったほとんど室内楽ともいえる演奏は、あらゆるモーツァルトのレコードのなかでも特筆すべきもの。

第25番もワルターの情熱の激しさに圧倒されるが、そこに漂う哀愁感もまた感動的だ。

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ワルターのあたたかい歌心に感銘を受ける演奏だ。

今日流行のオリジナル楽器による演奏とはまったく異なる豊麗なモーツァルトであり、ワルター流のアゴーギグも散見されるが、みずみずしい感興が格調高い造形の中から美しく立ち現れ、その魅力には抗し難いものがある。

音色の豊潤な香りがあり、響きの奥深さが感得される。

特にヴァイオリンの魅力は、ワルターの意図した弦の響きを改めて実感させてくれる。

それは、緩徐楽章の繊細極まりない表現に端的に示されている。

「リンツ」「プラハ」の序奏と緩徐楽章にはワルター最良の美質が示されている。

作品の造形も格調高く、カッチリ捉えつつ、そこに人間的なぬくもりをこめた豊麗な歌を語ってゆく。

表現としていささか時代がかっていても、ワルターのこの歌は決して色褪せぬ魅力を発散しており、聴き手を捉えて離さない。

全篇にわたってワルターの意志が行き届いた演奏といえる。

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2008年01月07日


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指揮者ワルターを語るとき、よく使われるキーワードは《愛》である。もちろん、トスカニーニに愛がなかったわけではない。ただ、ワルターはトスカニーニのようにミスをした楽団員を罵倒することができない人だったのだ。

「どうにかして作曲家がスコアに託した《温かいもの》を音楽にしたい。音楽にして聴衆に伝えたい。」という思いが心の底にあるから楽団員にもわかるまで説明する。

こうした《慈愛の精神》が彼の演奏に色濃く表れている。

そんなワルターのような常識人がやる芸術は面白くない、という意見も一理あるが、そんな向きにはぜひ、「田園」をお聴きになるといい。

これは「田園」の数多いディスクの中でも、このワルターの演奏は作品の本質を衝いた最高の表現といえる傑作である。

何とあたたかい感情にあふれ、潤いと歌に満ちていることか。

そのヒューマンな魅力は、聴き手の感動を誘わずにはおかない説得力がある。

とりわけ最終楽章は、ワルター自身が「アダージョやアンダンテに音楽の愛と崇高な美が現れる」と語るように、作曲者と演奏家の精神が具象化されていて美しい。

SP時代のウィーン・フィル盤(1936年)も名演として誉れ高いが、このコロンビア交響楽団盤もまた歴史的名盤のひとつに数えられてしかるべきだろう。

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2007年12月24日


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「未完成」はニューヨーク・フィルの演奏だけに、ワルター独特の重厚な響きと情緒豊かな表情がいっそう濃厚に表わされている。

この作品の歌謡性をよく表した演奏だが、さすがに堂々とした風格がある。

コロンビア響との第5番も名演。

全体にやや遅めのテンポをとり、古典的な形式の中に描かれたシューベルトのロマン的な抒情をあたたかく表出している。

「ザ・グレイト」はむせるような濃厚なロマンをたたえた秀演。

一句一音に至るまで感情が込められ、テンポが楽想の変転に応じて自在に動くが、そこに不自然な感じがないのは、もはや絶妙の芸としかいいようがない。

そのニュアンスはデリケートであたたかく、しかも雄渾な音楽が目覚ましく展開される。

特に後半の2つの楽想は強靭な力と抒情が一体になった表現で、フィナーレの雄大な風格は比較するものがない。


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2007年12月13日


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まず、ウィーン・フィルとのライヴについて。

この曲の重心は巨大な終楽章だが、そこが演奏も一番すごい。

声楽とオーケストラが一体となり、ワルターに率いられて全表現がマーラーの心中に深く沈下してゆく。

まったく壮麗で、どこがどうという分析を超えて皆良い。

なかでもアルトのアンダイは飛びぬけて立派だ。

声の質も歌い方も、ともにその時代を表し、ワルターの表現をいっそう幅のあるものにしている。

マーラーの極意のほどを改めてワルターから教示される思いである。

スタジオ録音は、自然とまとめており、劇性などを特に強調するわけではないが、それでも音楽それ自体の内容はすこぶる大きい。

全5楽章のそれぞれの性格の表現と推移の見事さ、終楽章の高揚などもすばらしい。


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2007年11月01日


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フルトヴェングラーというとロマン主義者の旗頭のように思われがちだが、ロマン主義というのは内容が形式を上回り、やがて形式破壊につながってゆく傾向をもつ。

フルトヴェングラーのバッハやモーツァルトを聴くとそう思われるのも無理はないが、彼はいつも全体の造型、形式を強固に把握する芸術家であった。すなわち古典音楽を守る者であった。

ブルーノ・ワルターなども同様で、彼等がどれほどテンポを動かし、人間的な音のドラマを付け加えようと、それは一つのデフォルメに過ぎない。

むしろ、初めから古典的な形式感覚を欠いていたクナッパーツブッシュこそロマン主義者の肩書きに相応しいのであるが、それはフルトヴェングラーとクナッパーツブッシュのワーグナーとブルックナーを比較すれば理解されるところで、フルトヴェングラーの表現は常に古典形式に立脚していた。

(注)ブルーノ・ワルター(1876〜1962)ドイツ生まれ。アメリカの名指揮者。モーツァルト、マーラー作品を得意とした。著書『主題と変奏』など。



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2007年10月15日


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「エロイカ」こそベートーヴェンのシンフォニーの最高傑作の一つであり、あまりにも通俗化してしまった「運命」「第9」よりも私は「エロイカ」の方を好む。

音楽史上、これほどの芸術的、音楽的飛躍を遂げた作品は見当たらない。演奏時間もぐっと延びた。曲想もこれまでのハイドン、モーツァルトと受け継がれてきた古典的形式感から脱却し、内面的な掘り下げが一段と深く増した。

それゆえひときわ思い入れの深い作品なのである。

特に第1楽章の展開部は革命的である。耳の病気が絶望的になり、ハイリゲンシュタットの遺書を乗り越えた者は大きく成長したのであろうか。

絶望のどん底に沈んだベートーヴェンが、不屈の闘志でそこから這い上がり、第二の人生を踏み出す出発点となった、記念碑的作品である。

この交響曲の生い立ちについてはあまりにも有名なので省くが、要するにこの曲は、ナポレオンその人の業績を描いたものではなく、「一人の英雄の思い出のために」と書き記したのである。

ブルーノ・ワルターの「ナポレオンは死んだが、ベートーヴェンは生きている」という言葉はじーんとくる。



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2007年10月05日


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私が俗にいう名曲を聴き終えた頃、というよりも同曲異演奏を揃え始めた頃、巨大な存在として現れたのが、ウィルヘルム・フルトヴェングラーという20世紀前半に活躍した大指揮者だった。

彼が残したベートーヴェンを中心とする録音の数々は、当然モノーラルで特にライヴ録音など録音状態が良くないものが多いにもかかわらず、恐らく私だけでなく、真剣に音楽を聴こう、精神的な糧を得ようとする人達の決意的指針となるべきものである。

前記したようにいかに名曲であろうとも、演奏家が平凡だと、作品自体まで演奏家の水準に左右されることが、音楽鑑賞をするうえでは重要なキーになる。まずは定評のあるスタンダードな名演奏から入門していった方が良い。

例えば世界一有名なクラシック音楽である、ベート−ヴェンの「第5」(「運命」と呼ぶのは日本人だけ)は、ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団が万人に愛される標準的な演奏である。いきなりフルヴェンの圧倒的な運命の動機を聴くと、人によってはいきなり圧倒されて嫌悪する恐れがあるので。

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