ハイドン
2008年04月17日
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いずれもカラヤンの第1回録音。
カラヤンの才気の感じられる優れた演奏である。
スマートでキレのよい、洗練されたハイドンで、アンサンブルはすっきりと整い、あらゆる点が明晰で隙がない。
急速楽章はリズムがきびきびして迫力があり、颯爽と進んでゆき、しばしば見られる対位法的な箇所の処理も極めて明快だ。
一方、第1楽章の序奏や緩徐楽章などはやや硬い印象を伴うが、ダイナミックでスケールが大きい。
ウィーン・フィルの優雅な音色が、カラヤンによりさらに磨かれ、音質的に今聴いても魅力的だ。
当時(1960年頃)のカラヤンは後年よりはるかに素直な演奏様式で演奏していたため、それがハイドンの古典形式とうまく適合したと感じられる。
2曲とも柔軟・流麗な歌の甘美さと端正な造形を見事に一致させた名演である。
カラヤンのおびただしい録音の中でも注目したい傑作。
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2008年04月15日
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スメタナ四重奏団は、1945年に創立され、1988年に解散したチェコの代表的なカルテットである。
創立以来4人のメンバーは全く変わっておらず、しかも数多いレパートリーをもっていたが、それらの作品のほとんど全てを暗譜で演奏する。
これは簡単にできる技ではない。
だからこそ、あのような細部にいたるまで磨き抜かれた柔軟性のある精緻な演奏が生まれるのである。
この「ひばり」もそうしたスメタナ四重奏団の特色がよくあらわれた演奏で、みごとなアンサンブルときめこまかい流麗な表現は絶品である。
テンポの設定も的確で、フレーズの切り方もすこぶるうまい。
第1楽章の有名な第1主題を聴いただけでもそれがよくわかる。
第3楽章のメヌエットの対位法的な処理の巧みさや、第4楽章の緊張した迫力のある演奏も抜群だ。
この「ひばり」と「鳥」のハイドンの2曲は、極めてさわやかな演奏で、テンポ設定にも無理がなく、音楽の流れも自然だ。
「ひばり」は、まるで春の陽光を感じさせるようで出色の出来。
「鳥」にも愛らしさと端正さがある。
メンデルスゾーンの八重奏曲は、スメタナとパノハ両団の音楽的年齢差にかかわらず、見事なアンサンブルで、厳しくすさまじい緊張感をみなぎらせており、しかも表情も豊かだ。
そこには、ロマン的な詩情と熱気もある。
1980年来日公演時のライヴ録音だが、その演奏には少しも古さがなく、むしろ聴くたびごとに新鮮さを感じる。
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2008年03月30日
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(前項の続き)とはいえ一部の音楽家を別とすれば、大音楽家たちの収入もそれほど恵まれてはいなかった。
ウィーン楽派の形成者といえるハイドンはモルツィン伯爵やエステルハージー候に仕えたが、モルツィン家は財政窮乏のためにハイドンや楽団員を保護できなくなってしまったし、エステルハージー家のハイドンに対する報酬も給金の一部に現物支給が採られていたほどである。
また残存する契約書の記録によれば、楽長としてのハイドンの職務は、作曲の義務や、楽団員や楽器の管理など徹底して規則にしばられたものであった。ハイドンは言う、「私は社会から遮断されていた。そして私は独創的であることを余儀なくされた」。
幼少の頃よりヨーロッパ各地の音楽界を渡り歩いていたアマデウス・モーツァルトは1772年よりザルツブルグの大司教伯爵ヒエロスミス・フォン・コロレードーのもとで宮廷に仕えた。しかしこの関係は、音楽に無理解なコロレードー大司教とモーツァルトとの反目と離反についえてしまう。
モーツァルトの気質はハイドンの場合のような雇用形態には全くそぐわなかったのである。1777年にはミュンヘンを訪れ、選帝侯マックス・ヨーゼフ3世の謁見をゆるされるが、欠員が無かったため楽団員に任命されることはなかった。
やがてザルツブルグを離れたモーツァルトはウィーンに定住する。彼は特定の職につかないまま、貴族や宮廷のためにそのつど自由な音楽家として作曲や演奏を続けた。だがこの生活は経済的には自立とは程遠いものであり、彼は終生貧困と借金に苦しんだ。
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2008年03月26日
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これは春風のようになごやかでまた香り高いハイドンであり、実にふくよかな感情を古典の造形に融合させたワルターならではの名演。
ワルターはハイドンの中に抒情詩を発見して、それを楽しんで吟じている。
これはワルターの遺産にふさわしい。
特に「軍隊」は知・情・意の均衡が素晴らしい。
「V字」は第2楽章の遅いテンポの歌が、現在の演奏には求められぬもので、その味わいは豊かで、深い。
ワルターでなければ演奏できないハイドンである。
聴く者の心をあたたかな愛情で満たしてくれる、こうした柔らかに微笑んだハイドンを演奏する指揮者はもう求められなくなった。
CD化によってオーケストラのバランス感もかなり高められ、演奏全体がより澄明に生彩を増している。
CD化された往年の名指揮者の演奏のなかでも、ワルターはことに成功したものが多い。
遅めのテンポで朗々と歌わせた旋律や、こまやかなニュアンスが、CD化されたことによって、より明瞭に伝わってくる。
半世紀近く前の録音とはとても思えないほどだ。
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2008年03月01日
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カラヤンが完璧な技術を超えたところで、率直な人間ハイドンの神への感謝を受け取り、そこに作為を施さずに、音楽の命ずるままにハイドンと共働している。
緻密な描写力と、多分にシンフォニックだが各楽器の音色の絶妙な融合には、さすがにカラヤンの目配りの精緻さがある。
独唱陣はヤノヴィッツが清澄な声で天使ガブリエルを歌い、ベリーのラファエルも広い声域を駆使してアリアを立派にこなしている。
ウリエルは、ヴンダーリヒの不慮の事故死によりクレンに代わったが、これがヴンダーリヒの最後の録音となった。
合唱はまったく危な気なく、フーガなど見事な構築ぶり。
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2008年02月17日
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音そのものが形容を絶する美しさを持った素晴らしく魅惑的な演奏だ。
特に「驚愕」のまろやかな音色は、ウィーン・フィルとしても滅多にないものだろう。
バーンスタインの表現も溌剌として、自然な歌にみちあふれていて、ハイドンの最もハイドンらしい面を聴かせてくれる。
「V字」も素晴らしい。
精密さを求めるより、楽しさに重点を置くバーンスタインが、ニューヨーク・フィル時代には成し得なかったオーケストラとの阿吽(あうん)の呼吸を実現し、メヌエット楽章のスフォルツァンドや強弱の対照を面白く聴かせてくれる。
これこそパパ・ハイドンの真骨頂である。
第92番もそうだが、底抜けの明るさの中にも時としてかげりが生じ悲しみがよぎるのを彼は豊かな感情をこめて表現している。
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2008年02月07日
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実に流麗なハイドンだ。
両曲のどの楽章でもアーティキュレーションがよく磨かれ、微妙な強弱のニュアンスづけも、感性と論理性の高い一致を示す。
またリズムが弾むもの、生きたものとして捉えられ、緩徐楽章も常に流れを感じさせてだれることがない。
ポゴレリチの天性のひらめきを感じさせる新鮮な表現が随所に見られ、その独創性はますます洗練され、気品高くなっている。
チャイコフスキーのコンチェルトは大柄なヴィルトゥオーゾの名演だ。
第1楽章序奏部は堂々とした威容を誇りながらも、テンポは速めで若々しさを失わず、しかもタッチの厚みと迫力は地響きを立てるがごとくで、楽器が完全に鳴り切っている。
また359小節からのソロだけの部分などは、まるでシェーンベルクの音楽を思わせる硬質の和音を響かせる。
第2楽章は逆にクールさがユニーク。
アバドの指揮もポゴレリチ同様、少しも隙がない。
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2008年02月05日
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前者はゴルトベルク変奏曲、ベートーヴェンの後期3大ソナタでセンセーショナルにデビューしたグールドが、ハイドンとモーツァルトにおいてもみずみずしい感性を強く印象づけた初期の録音。
ソナタは2曲とも再録音しているが、彼の唯一の録音となった「幻想曲とフーガ」も含め、グールドの精妙なタッチが生み出す音と表現は少しも鮮度を失っていない。
天才グールドならではの高貴な美しさに魅了されてしまう。
後者はグールド最晩年の録音で、初のデジタル録音アルバムだった。
演奏は演奏家が創る作品である、このことを最も強く聴き手に実感させるのがグールドであろう。
彼はハイドンの作品の書かれた時代の音楽様式をふまえたうえで、現代の音楽として蘇らせる。
6曲中「ソナタ第62番変ホ長調」が最も興味深い。
ペダル使用を控え、ノン・レガートで颯爽と弾き切ると、聴き慣れた温和なハイドン像が、たくましい意志をさらけだし、精悍に変わる。
その意表を衝く発想が、なんとも快い。
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2008年01月15日
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カラヤンとベルリン・フィルの実力をもってすれば、ハイドンの演奏では技術的問題を感じさせることはまったくない。
率直で明快、激しい気力に満ち溢れた演奏だ。
カラヤンはモーツァルトを演奏する時と異なって、ディテールの色付けがなく、アンサンブルや造形を極力整えながら率直にハイドンを再現する。
それでもカラヤンの風格や音楽性がにじみ出ており、第84番以降の4曲は円熟した指揮者の手腕が生き生きとした音楽を作っている。
「ロンドン交響曲集」でも大部分の曲が端麗な秀演であるのも当然である。
とにかく全体が格調高く、カラヤン本来の純粋な音楽性と晩年の巨匠的風格が自ずから投影されていることは疑う余地がない。
いずれも現代的なハイドンの典型といえよう。
現代の演奏会場におけるハイドンとしては、素晴らしい全集である。
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2007年11月23日
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フルトヴェングラーのハイドン(とモーツァルト)は、それらを古典主義時代の枠から外して広く交響楽の見地から判断し直さなければならない。
「フルトヴェングラーの」と形容せずにはおけない強い個性を持っているのである。
それはロマンティックな解釈の基盤に立った古典派交響曲の表現といってすまされない独自のものである。
テンポは遅めであるが決して重くならない。細部のフレーズが柔らかく微妙な表情をたたえながら、聴く者をハイドンのつくりの大きさのなかに包みこんでしまう。
このような包容力をもったハイドン演奏はフルトヴェングラー以前には聴かれなかったし、彼の以後にもない。巨匠の名演というに相応しい、古典とロマンのバランスが見事に保たれたハイドンである。
彼が残したもう一つのスタジオ録音、第94番「驚愕」の演奏も本当に立派なもので、すっきりとした表情の中に、深い厚みが隅々にまで刻み込まれ、高い品格と風格が備わっており、この一曲でフルトヴェングラーの偉大さを証明するにたるものである。
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フルトヴェングラーのハイドンも数少ないが、交響曲第88番「V字」は見事な演奏の一語につきる。
彼はこの曲を1951年のベルリン・フィル定期に取り上げている。11月30日と12月3日である。
ドイツ・グラモフォンへの録音への録音は12月5日に行われているから、コンサート直後に正式のレコーディングセッションが行われた例は珍しいものである。
このハイドンは、軽やかさを前面に押し出しつつ、四つの楽章のそれぞれの性格を巧みに描き分けてゆく。
そうして生まれた立体的で彫りの深いハイドンの世界。
とかく平面的なものに終わりがちなハイドンとは、ひと味もふた味も違っている。
言うなれば、引き締まった軽やかさ。隠し味として雄渾さ、スケールの大きさを背後に秘めているフルトヴェングラーならではの演奏である。
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