アシュケナージ
2008年05月15日
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3曲ともアシュケナージの唯一の録音である。
アシュケナージのみずみずしい、澄みきったタッチが魅力的な、詩情あふれるプロコフィエフだ。
極めて力強く、それでいて打楽器的用法の部分でさえ少しも美感を失うことがない。
リズムは閃きに満ち、洒落っ気も豊かだ。
特筆すべきはプレヴィンの指揮で、どこもかしこもセンス満点。ほとんどオーケストラの出す音と思えないようなニュアンス豊かな響きには、ただ脱帽するほかないだろう。
第3番は特に傑出しており、この曲のロシア的情感と、プロコフィエフ固有の抒情性とを、あますところなく表出した演奏である。
プロコフィエフのピアノ曲は、ともすると技巧的に華やかな効果を狙ったものが多いが、アシュケナージは、抑えるべきところはぐっと抑え、温かい感触をもった演奏をおこなっている。
ロシア物を得意とするプレヴィンの棒もあざやかだ。
第4番ではアシュケナージは、きわめてダイナミックに、かつ詩情豊かに弾きあげていて、すばらしい。
プレヴィンの指揮も特筆すべきうまさだ。
第5番ではアシュケナージは、この作品の変化にとんだ曲想をあざやかに弾きわけており、ことに、抒情的な表現の美しさは、アシュケナージならではのものだ。
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2008年05月10日
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アシュケナージとパールマンに初めてハレルが加わっての同トリオのデビュー盤だった。
個性豊かな3人のプレーヤーのぶつかり合いが、聴きものである。
アシュケナージが全体をリードしているが、3人の練達したアンサンブルは実に見事だ。
パールマンのヴァイオリンも表情が豊かで、ハレルのチェロも要所要所をぴしりと押さえている。
小気味のいいアンサンブルだ。3人のテクニックがいいので、それぞれがときには大胆に独奏者風にふくまっていても、それが逆に興をそえる結果になる。
その場合でもアンサンブルの規律はもちろん守られている。
このような態度が最高度に発揮されているのは第2楽章で、この楽章がこの録音のポイントになっている。
3人はこの第2楽章の変奏曲で、それぞれの変奏の性格をよく生かし、全体的には悲しみを底流に置き、見事な統一感を保つ。
特に、第8変奏の雄渾な演奏と第9変奏の情緒豊かな表現は素晴らしい。
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2008年04月13日
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未だ愛着のあるアルバムである。
パールマンは、1945年にテル・アヴィヴで生まれたイスラエル出身のヴァイオリニストである。
1958年にアメリカの人気テレビ番組「エド・サリヴァン・ショー」に出演して一躍有名になり、ニューヨークのジュリアード音楽院で名教師ガラミアンとディレイに師事した。
現在、彼は主にニューヨークを中心に、欧米名地で活躍しており、ズーカーマンやチョン・キョンファ、クレーメルらとともに、現代のヴァイオリン界をリードしている逸材のひとりである。
一方、アシュケナージは、最近は指揮者としても活動しているが、ピアニストとしても近年ますます円熟味を増してきている。
これは、現在、最高の2人の名コンビによる二重奏である。
両者ともたいへん音色的に美しく、テクニックも完璧で、アンサンブルも精妙だ。
こまかな部分にも神経がよく行き届いており、そのデリケートな表情には魅了される。
この作品のもつ古典美と詩情とをこれほど見事に表出した演奏というのも珍しい。
なかでも、第1楽章の落ち着いた気品のある表現や第2楽章の情熱にあふれる演奏は素晴らしい。
アシュケナージのピアノが演奏の大きな支柱となっており、室内楽奏者としての鋭敏さとデリカシーが光っている。
彼の姿勢に呼応するパールマンの姿勢も見事で、耽美と抒情にあふれている。
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2008年03月03日
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アシュケナージのソロは、力強さとともに音の美しさが常に保たれている。ひとつひとつの音が磨きぬかれ、しかも人工的な感じがまったくない。
解釈も落ち着きと余裕があり、多くのピアニストのように感情の動きに押し流されることがない。
したがって感情の細かな動きが明快な造形と結びついて、充実したエネルギーを生み出す。
ハイティンク/ウィーン・フィルもスケールが大きく、優美な雰囲気で好演している。
4楽章とも遅めのテンポで演奏しているのが大きな特徴。これはアシュケナージがブラームスというロマン派の巨匠の音楽を、新古典主義としての局面よりも、ロマン主義者としての側面を重要視して捉えている証拠である。
指定のテンポを無視してキープしては、これだけ情報量の多い曲では、個々の音はどうしても飛ばして聴かれる傾向が避けられないだろう。
ハイティンクの入念極まる棒に従ったウィーン・フィルの演奏は、この楽団の最も得意とする所を充分に生かした名伴奏となっている。ピアノのパートを十全に浮かび上がらせて、一つ一つの音を、一つ一つのフレーズを、丹念に演奏している。
これとほぼ同じコンセプトが独奏パートにも認められるのだが、オーケストラ以上に情感豊かに、たっぷりとした音量で弾くアシュケナージのピアノには、後にも先にもこの曲で体験したことのない、ほのぼのと暖かな、しかも明るく多彩な色感が感じられるのである。
ブラームスにしては珍しいピアノピアニッシモのところでの繊細な表情には、ハイティンク独特の高度な洗練が感じられるのだが、独奏ピアノがこの情趣を引き継ぐ時、更に情感が深まるのが凄い。鍵盤楽器でこれだけのデリカシーが出るのは滅多にないことなのである。
こうした反面で、ハイティンクがソロのピアノを引き締めにかかって、フレーズの隅々まで行き届いた神経で、しかも全体の構図の中での各フレーズの価値付けが完璧なのである。
まことに良い相棒であり、これならアシュケナージとの絶妙なアンサンブルが実現して当然かもしれない。
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2008年02月16日
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アシュケナージのショパン全曲演奏から、親しみやすい曲目を選んだ1枚。
ショパン・コンクールの出身者(第2位)であるアシュケナージにとって、ショパンはキャリアの最初から大切なレパートリーであり、おそらくその音楽には格別の愛情を持っているのであろう。
このCDからは、彼の作品を愛でる手触りのようなものすら伝わってくる。
どのジャンルのどの作品においても、アシュケナージはこれら小品の味を限りなく大きなものとして味わわせてくれる。
しかし、その際に《ショパンの音楽》をオーバーラップすることはない。
このあたりがアシュケナージの演奏一般への信頼に通ずる。
もちろん決して感傷的な演奏ではなく、引き締まった表現と見事なテクニックそのものが味わえることはいうまでもない。
質の高いショパン入門、あるいはアシュケナージのショパン入門となっている。
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ショパンの作品の多くは即興演奏から生まれたかのような自由な雰囲気を持っている。
確かにショパンの着想はすらすらと曲になって流れ出た。
しかし、これらを楽譜にし、作品とする段階では、ショパンは何日も考え、同じ箇所を何回も修正し、印刷されてもまだ不満で修正したといわれる。
これらの作品を分析してみると、実際には細心の注意を払って、非常に考え抜かれた上で作られたものであることが明らかとなるが、だからこそショパンの作品はひとつひとつの完成度が高く、現在もなお多くの人の心を打つのだろう。
ここであげたCDはショパンの普段あまり聴く機会のない小曲を15曲集めている。
19世紀のピアノの申し子であるショパンの作品を20世紀のピアノの申し子であるアシュケナージが弾く。
小気味良いまでに音楽のピアニズムを捉えたアシュケナージの演奏は、こうした小曲でも面目躍如たるものがある。
どの作品においても表現は極めて新鮮であり、歴史の手垢を感じさせないのは、本当に見事としか言いようがない。
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2008年02月09日
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アシュケナージはコンセルトヘボウ管の強固な合奏力を駆使し、これら3曲のオーケストレーションをそれ自体の特色を失わず明快に表出する。
その響きは深く、重厚で、各曲の表面を整えるばかりでなく、激しい共感をもってラフマニノフの劇性と抒情、ロシア的特質を表現している。
全体の造形も平衡感が強く、アシュケナージの鋭敏な感受性のことごとくが注ぎ込まれた秀演だ。
第2番はアシュケナージとコンセルトヘボウ管の初共演。
アシュケナージの類まれな音楽性と作品への共感が、素晴らしい演奏を作っている。
あらゆる楽句が感興に満ちて歌い、しかも対位法的な書法や重厚な和音が見事なバランスで表出されているため、すこぶる彫りの深い表現が生まれているのだ。
数多いこの曲のディスクの中でも、トップを争う出来映えといえよう。
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2008年01月03日
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アシュケナージの弾くオリジナル版(旧録)は、堂々としている上に誇張がない。
それが、言うなれば演奏の品位を保持するのに役立っている。
隙のない多彩な演奏だ。
ただ欲をいえば、リヒテルのようなスケールの大きさがほしいところ。
メータの演奏も悪くないが、録音で聴く限りでは、1人で演奏しているアシュケナージの方に迫力がある。
再録音も最初の録音と同様、アシュケナージのピアノは堂々としている。
加えて、今回は円熟した趣が出てきている。
彼の演奏は、いつも達者な技巧を持ちながら、それを意味なく優先させはしないので、誇張がなく、それが演奏の品位を保つのに役立っている。
しかし表現の雄大さは少しも欠けていない。
「音の絵」でも表現の落差の大きいラフマニノフの音楽を、実に生き生きとした自らの音楽として演奏している。
現代的な解釈の節度ある枠を守りつつ、ファンタジーを大きく湧き立たせた清冽な印象を残す演奏だ。
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2007年12月24日
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旧盤を上回る出来。
アシュケナージのタッチが実に魅力的だ。
美しい響きを無理なく引き出して、低音も決して重くない。
センチメンタルにならず、常に品位を保ち、しかも暖かい感情を失わない。
第2番の第1楽章は透明なタッチと美しいリリシズム、すばらしい生きたリズムやアクセントが、アシュケナージらしい。
第2楽章も、高音には滲み出すような哀しみの色がある。
フィナーレの透明度は、とてもピアノという楽器が発するとは思えないほど。
ハイティンクの円熟ぶりも目をひく。
弦を豊かに響かせながら、それを自在にコントロールしてラフマニノフにふさわしい豊かな広がりをつくり出している。
オケも指揮者も音楽性満点で、フィナーレでの生命力、最高の厚みなど、ただ聴きほれるのみ。
「パガニーニの主題による狂詩曲」は現今、これ以上は不可能という線まで達した超名演。
アシュケナージの音色の色彩感は、オーケストラ以上とさえいえるし、リズムやテクニック、タッチ、洗練されたしゃれっ気、孤独な心の告白など、ただ舌を巻いて聴き入るのみだ。
ピアノの生き生きとした表情が豊かな振幅をつくり、聴く者をひきつける。
ハイティンクの指揮も生々しく敏感で響きがいかにも立派。
第3番も名演だが、成功の半分はハイティンクによるものだろう。
アシュケナージのピアノは華やかな響きから虚無感まで、表情の幅が非常に広い。
第4番も同様だ。
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2007年11月15日
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音楽史の時代区分では19世紀ロマン主義に括られるショパンは、音楽思想的には当時のロマン主義者とは一線を画しており、シューマン、メンデルスゾーン、リスト、ベルリオーズなどのロマン主義者を心の底では嫌っていたという。
ショパンはほとんどピアノ曲しか書かない作曲家で、しかも、どちらかといえば技巧的な大曲よりも、小規模な作品を好んだ。
彼はまたピアニストとしても活躍したが、大ホールでは演奏せず、もっぱらサロンで演奏した。
病身で大音量を出せないことも一因だが、ショパンの作品をいくつか聴いてみれば、彼の繊細で微妙な響きが大ホールに適さないことが理解できる。
この意味では、リヒテルやブーニンの演奏をもしショパンに聴かせたら激怒するか、冷笑するかのどちらかだろう。
常套的かもしれないが、私なら繊細なニュアンスに溢れたアシュケナージの全集を推したい。
アシュケナージは自分自身を強く押し出すことよりも、作品のキャパシティに沿った演奏を行っている。そこには作品そのものを尊重し、自らの発言を作品に従う範囲にとどめるべきだという彼の強い意志を感じる。各曲の演奏は、まるで小さな作品の隅々まで光をあてるような効果が生じている。
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