クライバー
2007年12月02日
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エーリッヒ・クライバー(1890年8月5日〜1956年1月27日)はオーストリアのウィーン出身で20世紀前半を代表する指揮者の一人。指揮者のカルロス・クライバーは息子。古典派から新ウィーン楽派までの作品で、引き締まった演奏を聴かせた名指揮者であった。
親子で指揮者として名声を博した例も珍しい。上にあげたボロディンで親子の芸風を聴き比べるのも一興であろう。
エーリッヒの名盤で入手しやすいものは上にあげたが、中でもモーツァルトの「フィガロの結婚」とリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」が出色だ。
「フィガロ」でのエーリッヒ・クライバーの音楽は優美で柔らかく流麗だが、それはいわゆるウィーン・スタイルといった概念で規定されるような、ある固定した既存の様式の継承ではなく、あくまでもエーリッヒ・クライバー自身の個性的な劇的表現の結果としてのものである。歌手ではシエピのフィガロが最高のイタリア式モーツァルトを聴かせており、これを聴くだけでもこの録音の存在価値は不滅である。
「ばらの騎士」は1956年のカラヤン盤と並ぶ古典的名盤だ。推進力と優雅な呼吸に満ちた音楽運びのエーリッヒ・クライバーの指揮の下、黄昏の美しさを秘めたライニングの元帥夫人、理想的なオックス男爵役のヴェーバー、可憐なギューデンのゾフィー、そしてユリナッチのあまりにも美しいオクタヴィアンなど、数々の名唱は今日でもその輝きを失っていない。
これらはエーリッヒ・クライバーと名歌手たちの偉大な芸術的遺産であると共に、1950年代のウィーン・オペラ界の貴重な記録でもある。
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そんな指揮者がなぜ愛されるのか?
それはクライバーの音楽があまりにもドラマティックにして陶酔的だからだ。クライバーが指揮すると、他の指揮者とは全く違う次元でドラマティックなのだ。同世代の指揮者と似て非なるものは同じようにスマートでも表現の天才性である。感動の質が全く異なるのだ。
リズムは恐ろしいばかりの生命力で飛び跳ねる。きっぱりとしたフレージングとともに、メロディは実に美しく官能的に歌われ、聴き手はすっかり別次元に誘い込まれてしまう。高揚は聴き手をオルガスムまで導く。
指揮姿にも魅せられる。あのスマートでしなやかな棒さばき。音楽の化身のような身のこなし。舞台姿自体がすでに芸術になっているのだ。
レコーディングはこれだけの名指揮者にしては極端に少ない。しかしクライバーの残した数少ない録音はどれもが屈指の名盤である。人気の高い指揮者ゆえに海賊盤も多い。
クライバーは生前、秘密裡にこっそり来日しては、自らの海賊盤を買いためていったという。何ともほほえましい。
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1930年、名指揮者エーリッヒ・クライバーを父としてベルリンで生まれたカルロス・クライバーは、アルゼンチンで少年時代を過ごした後、父親の反対を押し切って、スイス、ドイツで音楽修業を行った。
1973年、ウィーン国立歌劇場に「トリスタンとイゾルデ」でデビューした後、おそらく世界で最も人気があった指揮者である。
しかし、1999年1月から2月にかけてバイエルン放送交響楽団を指揮したのを最後に公の場からほぼ姿を消した。
そして2004年7月13日、バレーダンサーの夫人 Stanka Brezovar の故郷スロヴェニアにて闘病生活(肝臓癌)の果てに死去。生前のクライバーを知る人の間には自殺説も流れた。
クライバーは、指揮者としてはなはだ特異な性格だった。彼には、コンスタントに仕事をしようという欲がない。名オーケストラの監督になろうという欲もない。ギャラは桁外れに高かったが、かといってお金のために仕事をするという風でもなかった。
マルタ・アルゲリッチが最近ソロ活動をなぜやらないんだというファンの疑問とどこか通じるものを感じる。
それでもまだ1980年代までは、バイエルン国立歌劇場を中心に定期的な出演が見られたのだが、1990年代以降は極端に出演が減り、年に一度も指揮しないという様相を呈するに至った。
病気ならともかく、音楽史上これほど指揮しない一流指揮者はかつて存在しなかった。
私がローマに語学留学した際に、テキストのあるページに、クライバーがサルディニア島で演奏した新聞記事が載っていたが、それは誰にも予想できないリゾート地だったからではないだろうか。なぜならクライバーはローマとかナポリといった大都市の演奏会はことごとくキャンセルしていたからだ。
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