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ムラヴィンスキー

2008年02月14日


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第8番の演奏では、ムラヴィンスキーの確信に似た定見を見るような思いがする。

ムラヴィンスキーの確かな読みが、スコアの中から作曲者によるさまざまなインディケーションへの批判的解釈を加えての興味深い奏法の変更によって、曲想の核心に迫っているように思える。

レニングラード・フィルの素晴らしい名演には、異論をはさむ余地のない、自信に満ちた表出力の圧倒的勝利を見ることができる。

第10番の演奏は極めて気魄に満ちると同時に、作品に対する真摯な姿勢が感じられる。

静寂さに満ちた第1楽章開始の深く沈んだ暗い響きには、人間の死を思わずにはいられない絶望的な悲しみが色濃く漂って胸に迫るものがある。

緩徐なテンポによる開始楽章からは、息づまるような緊張感をもたらしている精神集中が伝わってくる。

また低弦部の充実と、作品構成上重要な主題を受け持つ木管奏者の素晴らしい活躍も特筆に値する。

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2008年01月05日


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1966年にムラヴィンスキー自身が書いた「ショスタコーヴィチと共に歩んだ30年」という、誠実の極みのような文章の中で、演奏スタイルが年月と共に変化しないかと聞かれて、いみじくもこう答えたと書いている。

「演奏とは、どのようなものであれ、多かれ少なかれ作品を主観的に解釈すること、個人的に解釈するということだ。絶対的に客観的な解釈など有り得ない。」

ムラヴィンスキーにとって演奏することは《正しい》作曲家像を演出することなどではなかった。

裸にする。

余計な衣も、甘い装いも、一切脱ぎ捨てさせること。

たった一点から、強烈な光で照らし抜き、計りうる最高の鮮度で音楽の裸形をくっきりと輪郭づけること。

どちらかと言えば余計なものを削ぎ落として音そのものを客観的に描写する傾向のある現代の演奏とは、ムラヴィンスキーの戦略は、似ているようで決定的に異なっているのである。

あくまで強く、明解で、一点の曇りもない。

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2007年12月16日


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ムラヴィンスキーのショスタコ5は数々のライヴが発掘されているが、私は上記の2つをお薦めする。

前者は1973年5月26日東京文化会館におけるライヴ録音で、演奏の素晴らしさに加えて、音質が抜群に良い。

演奏はムラヴィンスキーの重量感豊かな演奏法があますところなく示された素晴らしい表現だ。

少しもつくろわずに率直に処理しているが、そこには情緒もあれば民族性も描き出されている。

暗さと淋しさ、寒さを感じさせる音感、ロシアそのままに響かせたこの演奏は誰にでも真似できるものではない。

後者は1984年4月4日のレニングラード・フィルハーモニック大ホールでのライヴ録音でムラヴィンスキー晩年の円熟期のもの。

オーケストラは作品に充分な共感を示しており、手堅い演奏を聴かせている。

ムラヴィンスキーの表現はこの曲においても淡白で、誇張や虚飾がまったくなく、そうした姿勢がかえって作品のドラマトゥルギーを確実に表し、要所はもとよりどの部分をとっても一分の隙もない音楽をつくっている。

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いまだにこれらの曲の代表盤の地位を保つ名演。

3曲ともロシア的な性格を堂々と表現しながら、驚くほど精緻なバランスと造形によって全体をまとめている。

生命力に満ち、スケールが大きく、精妙な表現だ。

この解釈はこれら3曲の規範といってもよく、ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルの名声を改めて国際的に高めたといえよう。

第4番は精気に満ちた若々しい表情が新鮮で、ムラヴィンスキーのロシア的な資質も示されていて興味深い。

特に急速なテンポで始まる終楽章が印象的。

全体にこの指揮者のすぐれた音楽性を表した好演だ。

第5番はその端然とした造形や表情が実にみずみずしい。

スタンダードな解釈の演奏といえるだろう。

第3楽章のワルツ風の表現には西欧的な洗練に通じる感覚があり、それでいて十分劇的な緊張感をもった説得力の強い演奏だ。

「悲愴」でもムラヴィンスキーの重く厚い表現は、チャイコフスキーから甘く感傷的な涙を洗い去った豪快とも評すべきもので、そこには内に激しい情熱があるとともに、外に不健康なものがない、実にスケールの大きな演奏だ。



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