ショスタコーヴィチ
2008年06月29日
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ショスタコーヴィチの作品は、よくベートーヴェンの作品と比べられるが、そのなかでも最もベートーヴェンに近いと思われるのは、15曲からなる弦楽四重奏曲である。
15曲という数からして、ベートーヴェンの16曲にほぼ近いが、内容的にもしかめっ面のイメージとは対照的ともいえる陽気さ、快活さすら刻印した作品も見られるというように変化に富んでいる。
晩年になればなるほど、精神的な深みのましてくる、という作風もベートーヴェンと似通ったところがある。
新メンバーになっていたボロディン四重奏団が、円熟して第2期の黄金時代を築いていることを感じさせる全集だ。
音質が全体に明るくなり、表現にも客観的な明快さが加わったため、やや難解な作品の特色を比較的あっさりではあるが、わかりやすく表出している。
彼らはショスタコーヴィチの作品に深い共鳴を示し、精緻な表現力と練り上げられた技術で、作品の本質を明らかにした演奏を聴かせる。
作品を気迫と集中力をもって再現しながらも、もう一つ別の視点から作品を俯瞰して見据えていくようなアングルの大きさが特筆され、ショスタコーヴィチの作品の豊かさを聴き手がじっくりと味わっていくことを可能にしている。
ショスタコーヴィチの本質を把握している団体の演奏だけに、ファンは絶対に座右に置くべき名盤といえよう。
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2008年06月01日
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ショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲ト短調作品57は、「交響曲第5番」と「第6番」の間にはさまれるようにして生まれた作品で、ショスタコーヴィチの室内楽の最高峰としてたたえられている傑作である。
あまりにも陰鬱で深刻な弦楽四重奏曲を敬遠している人にショスタコーヴィチの室内楽の入門として薦めたい。それから弦楽四重奏曲を聴いても遅くはないだろう。
1983年、モスクワでのライヴ録音で、数少ない現代のピアノ五重奏曲の名作の1つが最高の顔ぶれで録音された期待の1枚である。
ボロティン四重奏団の円熟した演奏が見事で、リヒテルのピアノが、それをひきたてている。
エドリーナと共演したボロディン四重奏団の旧盤に比べ、いささか曲を物々しく取り扱いすぎた嫌いがあるとはいえ、巧妙な演奏設計で気の合ったアンサンブルが繰り広げられている。
第4楽章の憂愁をおびた旋律の歌わせ方など、いかにも本場の演奏家らしい表現だ。
ことに第1ヴァイオリンの透き通るような美しさで弾かれる憂愁の歌を中心とした演奏は、最も感動的な部分だ。
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2008年05月23日
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国際レコード批評家賞、モントルー国際レコード賞を受賞した名盤の復刻である。
早くから「カテリーナ・イズマイロヴァ」はオリジナルの方がすばらしく、20世紀のオペラの名作だ、と主張していたロストロポーヴィチが、1978年に録音したのがこれだ。
確かに挑発的だし、話は陰気で、聴いて心楽しくなるオペラではないけれど、実に聴きやすく、退屈しない作品だ。
スターリンによって不当に黙殺されていたこの傑作オペラを、再び世に出し蘇生させることを願うロストロポーヴィチ夫妻の情熱と執念の強さが、ディスクの中から迸り出る様な演奏である。
そのロストロポーヴィチの意気込みがよく伝わってくる。
ロシア的濃厚さも、当然ながらいっぱいだ。
ロストロポーヴィチのダイナミックかつ繊細な指揮の下、悲しく激しい女の業を歌い上げるヴィシネフスカヤの絶唱を始め、ゲッダ、ペトコフ以下の名歌手達が、入神の演唱を展開している。
チョン・ミュンフン盤のユーイングとは全然違うヴィシネフスカヤのカテリーナは、こちらがもともと意図されたものか、と思えるところがある。
ゲッダのセルゲイもうまい。
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2008年02月24日
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期待にたがわぬ良い出来映えで、面白く聴ける。
全11楽章にソプラノとバスの独唱、重唱を巧みに配し、全体を《死》とかかわる詩で一貫させた構成は見事なものだ。
室内管弦楽団規模のオーケストラの編成も多彩で、近代の交響曲のあり方を示す指標となる重要作である。
このCDはシコルスキ版に記載されたモルゲナーのドイツ語訳による演奏である。
ロシアの演奏とは異なる、洗練性と繊細な感性をそなえたチョン・ミュンフンの演奏が素晴らしく、彼がこの録音の後フランスのバスティーユ・オペラの音楽監督で活躍するのも納得がいく。
オーケストラの表情が豊かで、柔らかく広がる抒情から緊迫した劇的表現に至る濃淡を鮮やかに描いている。
2人の独唱者も素晴らしく、ショスタコーヴィチに若々しい新風を吹き込んだ名演である。
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2008年02月14日
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第8番の演奏では、ムラヴィンスキーの確信に似た定見を見るような思いがする。
ムラヴィンスキーの確かな読みが、スコアの中から作曲者によるさまざまなインディケーションへの批判的解釈を加えての興味深い奏法の変更によって、曲想の核心に迫っているように思える。
レニングラード・フィルの素晴らしい名演には、異論をはさむ余地のない、自信に満ちた表出力の圧倒的勝利を見ることができる。
第10番の演奏は極めて気魄に満ちると同時に、作品に対する真摯な姿勢が感じられる。
静寂さに満ちた第1楽章開始の深く沈んだ暗い響きには、人間の死を思わずにはいられない絶望的な悲しみが色濃く漂って胸に迫るものがある。
緩徐なテンポによる開始楽章からは、息づまるような緊張感をもたらしている精神集中が伝わってくる。
また低弦部の充実と、作品構成上重要な主題を受け持つ木管奏者の素晴らしい活躍も特筆に値する。
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2008年02月06日
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前者の第5番は、バーンスタイン初のショスタコーヴィチ交響曲録音だった。
誠実な姿勢で率直に演奏されている。
楽天性が前面に押し出され、それだけに聴きやすく、わかりやすい音楽になっている。
第9番は純音楽的な明るさが強調された表現だ。
聴かせ上手な演奏ともいえるが、ディティールの表現を無理のないテンポで着実に表しており、それがしたたかといえるほど線の確かな音楽を作っている。
後者の第5番は79年来日時のライヴ。
大きな起伏をもった極めて充実感の強い表現で、その中からヒューマンな熱気がふつふつと湧き上がり、意志的な力と悲劇的な様相がたくましく描かれている。
第3楽章のラルゴの抒情性も悠揚とした流れで歌われ、バーンスタインの風格の大きさを反映している。
終曲の高揚し続ける音楽も見事だ。
チェロ協奏曲第1番は完成されきった逸品。
精妙を極めた音質と技巧・音程はマの独壇場で、オーマンディの指揮も相変わらず間がいい。
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いずれも驚くべき秀演だが、特に第6番が素晴らしく、長大な第1楽章はかつてない抒情的豊かさにあふれている。
第2楽章も尖鋭な感覚にとってかわり、真摯に音楽の内部を抉り出す感があり、同時に構造をよく理解した立体的表現がつくられている。
終曲の活力に満ちた演奏とともに、ウィーン・フィルも絶妙なアンサンブルを展開している。
第9番も洗練された表情と合奏美が、ロシア臭のない純音楽的なショスタコーヴィチを聴かせる。
第1番と第7番はバーンスタインとシカゴ響との37年ぶりの顔合わせだが、長年コンビを組んでいたのではと思わせるほどよく息が合っており、音楽的にもこれ以上求められないほど雄渾な表現だ。
第1番は冒頭から指揮者の堂々とした風格が示され、全体にデュナーミクや色彩のコントラストが強い。
第7番の演奏は作品にふさわしくスケールが大きい。
第1楽章から巨大な重量物が押し進むような推進力と充実した力感がある。
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2008年01月03日
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カラヤンのショスタコーヴィチのレパートリーは交響曲第10番に限られていた。
66年盤は、楽想の豊かな表情、雄大な構築、驚異的な演奏技術は感嘆すべきものだが、後の81年の録音はさらに成熟し、彫りが深い。
もし81年の録音がなければ、これがこの曲の最高の演奏といえるだろう。
81年盤は演奏・録音とも圧倒的優秀CDである。
カラヤンはここではわずかなデュナーミクの変更を除けば楽譜に忠実に従っており、確信にあふれた表情で練りに練られた音楽を展開している。
ベルリン・フィルの、特にフルートやクラリネットのソロの見事さも印象的。
金管も卓越しており、フォルティッシモの盛り上がりの凄さ、壮大な起伏の効果はすばらしいの一語につきる。
カラヤンとベルリン・フィルは1969年にソ連楽旅の際のライヴ録音が以前Ars Novaから出ており、カラヤンのライヴの凄さが刻みこまれていて、これも必聴。
凄絶な音響という点では81年盤をも凌ぐ。
ここには舞台に生きる演奏家たちの止むにやまれぬ魂の燃焼がある。
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2007年12月16日
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ムラヴィンスキーのショスタコ5は数々のライヴが発掘されているが、私は上記の2つをお薦めする。
前者は1973年5月26日東京文化会館におけるライヴ録音で、演奏の素晴らしさに加えて、音質が抜群に良い。
演奏はムラヴィンスキーの重量感豊かな演奏法があますところなく示された素晴らしい表現だ。
少しもつくろわずに率直に処理しているが、そこには情緒もあれば民族性も描き出されている。
暗さと淋しさ、寒さを感じさせる音感、ロシアそのままに響かせたこの演奏は誰にでも真似できるものではない。
後者は1984年4月4日のレニングラード・フィルハーモニック大ホールでのライヴ録音でムラヴィンスキー晩年の円熟期のもの。
オーケストラは作品に充分な共感を示しており、手堅い演奏を聴かせている。
ムラヴィンスキーの表現はこの曲においても淡白で、誇張や虚飾がまったくなく、そうした姿勢がかえって作品のドラマトゥルギーを確実に表し、要所はもとよりどの部分をとっても一分の隙もない音楽をつくっている。
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