ミュンシュ

2008年12月09日


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ボストン交響楽団は、ミュンシュによって彼らの黄金時代を築いた。

いっぽうでアンサンブルの規律が弛緩したというきびしい意見もあるが、ミュンシュの健康で輝かしい、豪壮な力感をもった音楽は、やはり空前絶後の芸術を生み出したといってよい。

このサン=サーンスの「オルガン付き」は、そうした彼らの代表的名盤のひとつである。

もちろん、ミュンシュとしても最盛期の演奏であるだけに、きわめてスケールが大きく、激しい生命力が噴出するように示されている。

この指揮者らしい、細部にこだわらない率直な表現が好ましいが、2つの楽章ともにオルガンが導入される後半は、強い共感にあふれ、聴き手を感動させずにはおかない。

すなわち、第1楽章ではやや遅めのテンポでたっぷりと旋律を歌わせており、第2楽章の後半は光彩渦巻く壮麗な響きの嵐を体感させてくれる。

ボストン交響楽団の演奏も絹のようになめらかな弱音から、響きが豪快に屹立するトゥッティの効果まで、彼らの全力を傾けたアンサンブルを聴かせる。

もちろん、サン=サーンス特有の対位法の処理は明快そのものである。

作品の独自の書法とおもしろさが、強い説得力をもって表わされている。

こうした曲なので、録音効果も非常に重要である。この場合、一般のCD(RCA)とXRCDの高音質盤(ビクター)の2種があるが、演奏まで新鮮に聴かせてしまう後者が、断然おすすめである。

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2008年10月19日


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いつまでたってもポピュラーでメジャーな作品にはならないのだが、私自身、ダンディの「フランスの山人による交響曲」が以前から大好きで、今でもしばしばディスクをとり出して聴く機会は多い。

そしてそうした折りに聴きたくなるのは、今ではすっかり古い録音(1958年)になってしまったミュンシュ盤で、私とのつきあいもずいぶん長い。

それでも、この演奏は汲めども尽きないような魅力をもっている。

線の太い音楽性で、あまり細工を弄するような傾向はないのだけれども、親しみ深い情感がいつとはなしに寄りそってくるようで、自然にひきこまれてしまう。

ミュンシュの人柄から来るマジックなのかもしれない

オイストラフを独奏に迎えたショーソンの「詩曲」も素晴らしい曲である。

神秘的で美しい序奏をバックにヴァイオリンが瞑想的な主題を奏でる出だしから、純化された魂の昂揚への展開に至るまでのショーソンの天才が余すところなく示されており、およそヴァイオリンのために書かれた作品の中で最も美しいものの一つといっても過言ではない。

オイストラフのヴァイオリンには、スコアの検討による曲の解釈ではなく、純化された魂がつくりだす作品との一体化によってのみ生み出すことのできるパッションがある。

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2008年08月17日


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ミュンシュ最盛期の名演。

フランクは男性的で生命力が強く、スケールが大きい。

第1楽章後半は遅めのテンポでよく歌わせているし、第3楽章後半の壮麗な劇的高揚も素晴らしく、ミュンシュの傑作のひとつである。

ここでミュンシュは、主情的にテンポを動かし、各楽想にこまやかな表情を与えて演奏している。

いつもの截然としたミュンシュを聴き馴れた耳には、意外に思われるくらいだ。

このフランクの交響曲では、曲の外形分析を演奏の基礎としているだけではなく、その造形の背後にある作曲者の表現意志までも的確に汲みとって、それを渾然と有機的に組織づけている。

イベールの「寄港地」も傑出した演奏だ。

ミュンシュは巧みな棒でそれぞれの曲のもつエキゾチックな気分を鮮やかに描き出し、官能的な南国の夜の情感を豊かに表出した「チュニス=ネフタ」が特に聴かせる。

その他、ユーモラスな曲想をしっかりとつかんだ「魔法使いの弟子」など、どれも格調の高い秀演だ。

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2008年07月26日


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ミュンシュは1949〜63年までボストン交響楽団の常任指揮者として活躍。1967年にパリ管弦楽団の初代音楽監督に迎えられたが、翌年演奏旅行中に急逝。彼の特にフランス音楽に示す洗練された芸術は、今も共感を呼んでいる。

ミュンシュ最晩年の貴重な遺産であるこの盤は、ラヴェルの粋をつくした管弦楽曲の数々を集めたもの。

パリ管弦楽団の魅力をあますところなく伝えており、純度の高い輝きと色彩美に満ちている。

ラヴェルの音楽に精魂こめて取り組んでいた老ミュンシュの真摯な姿勢に心打たれる名演揃いである。

特に「ダフニスとクロエ」は、曲の細部にいたるまで充分に磨き抜かれた音の綾織りの美しさに魅了される。

「夜明け」は、いくぶん速めのテンポで潮のように音楽を盛り上げ、「全員の踊り」は、剛直な表現で圧倒する。

「ボレロ」もテンポ設定が実にうまく、ソリストたちの技術も優秀で、華麗な音の絵巻を繰り広げている。

「スペイン狂詩曲」も緻密なニュアンスに溢れ、情感豊かに描かれている。

「亡き王女のためのパヴァーヌ」も高雅な詩情に満たされた名演だ。

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2008年03月25日


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ミュンシュは生前ベルリオーズ協会の会長をつとめていた。

旧盤でのミュンシュは、曲を徹底的に無機的な音符の還元した上で、その音に与えられた純粋な音楽的な質量をもとにして音楽を再構成しようとする。

極端な言い方をするなら、彼は「レクイエム」という衣装を無視して、その裸の本質をいわば一つの純音楽として表出しようとする。

ミュンシュの長所である的確きわまりないデュナーミクの感覚がそれを支え、可能にしている。

新盤でのミュンシュは、ベルリオーズのレクイエムという音響世界に、音楽として不滅の世界を与えている。

バイエルン放送響という体質が、さらにこの音楽を再現するのに適している。

このオケの適度の荒々しさと素朴な情熱が、ここでは水を得た魚というべきであるし、コーラスが何よりもしっかり歌っているのに敬意を表する。

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ミュンシュ&パリ管の「幻想交響曲」に次ぐ2枚目のアルバムだった。この年(1968年)の11月にミュンシュは亡くなっている。

ミュンシュ最晩年の演奏だが、その気迫に目をみはる圧倒的な名演である。

冒頭から遅いテンポをとった雄渾な表現で、スケールが大きい。

ミュンシュのテンポは総じて遅く、劇的表出力が強くてかなり粘り強い表現をしている。

特に第1楽章は、堂々と粘着力をもって情熱的に盛り上げてゆくが、その力の強く逞しいことは驚くばかりだ。

第1,4楽章では、情熱が開放されて、響きは明るさと重量感を兼ね備えている。

また4つの楽章を、造形的にもそれぞれの特質を発揮するようにまとめていて、劇性と抒情性が美しくバランスしている。

オーケストラも彼の意図する曲の燃えるような情熱を余すところなく表現しつくしている。

総じて、胸を広げて、深くすべてを飲みほそうとする力強い呼吸が感じられる。

これほど音楽的に内容の濃いブラームスは、余り例がない。

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2008年03月05日


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これらの演奏はテンポ設定が実によく、その彫琢された音の響きは大変美しい。

ことに「ボレロ」は秀抜で、ややゆっくりとしたテンポで始め、クレッシェンドしていくに従って、しだいにテンポを速めながら華麗な音の絵巻を繰り広げていくあたり、ミュンシュならではの卓抜な手腕である。

また「マ・メール・ロワ」も精緻にまとめた秀演である。

「ダフニスとクロエ」もミュンシュ一流の造形のしっかりとした精緻な表現でが素晴らしく、綿密な設計と演出には舌を巻く。

精密機械のようにスカッとしたまとまりと、色彩感と柔軟さは、ラヴェルの音楽を底の底まで知りつくしたミュンシュと、完璧な技術を誇るボストン響との名コンビならではのもので、もしこれがほかのオーケストラだったら、これほど彫琢された見事な演奏にはならなかったであろう。

それに、何と新鮮で若々しい、そして圧倒的な迫力なのであろうか。

神秘的で情感豊かな「夜明け」や、熱っぽくダイナミックな「全員の踊り」など、ミュンシュならではの至芸である。

こうした演奏を聴いていると、いかにミュンシュがラヴェルの作品を愛していたかがよくわかる。

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2007年12月23日


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天才の前に天才なく、天才の後に天才なしという言い方を借りれば、ベルリオーズの場合、むしろ、狂気の前に狂気なく、狂気の後に狂気なしとでも言うべきか、ベルリオーズが狂気であったというのではないにしても、彼の人生とその作品は狂気の沙汰という形容によってしっかり印象づけられるものであろう。

狂気に先立つ狂気はなく、狂気を模倣する狂気はない。

ベルリオーズは、ゲーテやシェークスピアなどの文学的教養を通して、ユゴー、ハイネ、ジョルシュ・サンド、ヴィニー、デュマ、ゴーティエなど当時のロマン派を中心とした文学者とも連帯し、「幻想交響曲」や「レリオ」の初演時には彼らが応援団を形成したし、ワーグナー、シューマン、リスト、メンデルスゾーンなども、ドイツ各地で彼の作品を紹介し、特にワーグナーは、「ワルキューレ」や「トリスタン」に彼の影響を認めている。

また、彼の「管弦楽法」は今日まで読み継がれ、ロシア五人組やR・シュトラウス、メシアンにまで受け継がれている。

ミュンシュはベルリオーズのスペシャリストとして知られたが、どの曲の録音もスケールの大きい、極めて明るく輝かしい響きの、色彩的な表現を行っており、その熱のこもった演奏には圧倒されてしまう。

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2007年12月17日


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ミュンシュがベルリオーズの作品の演奏に長じていることは、すでに数多くの録音で広く知られているが、この曲も生気ある颯爽たる速度で、端的・率直に、見事なバランスをもって竹を割ったように、すかっと表現する。

彼のベルリオーズは新鮮で、また緊張感に満ちている。

クリュイタンスが亡くなって解散したパリ音楽院管弦楽団のメンバーを集めて再組織されたのが、パリ管弦楽団で、その初代指揮者ミュンシュによる最初の録音がこの「幻想」だった。

パリ管との演奏でも、その力の燃焼というべき表現法は高齢になっても崩れない。テンポの緩急の変化が強く出て表現を豊かにしている。

スケールの大きい、きわめてフランス的な明るく輝かしい響きの、色彩的な表現を行っている。

ボストン響との録音は、ミュンシュが最も精力的に活動していた頃の、若々しい活力を伝えている。

造形が端正で、後年の演奏より客観的であるが、それだけに音楽的には純粋で骨格が逞しい。

ボストン響も輝かしく充実感が強い。

いずれも情熱が噴き上がるような快演で、ミュンシュの率直な音楽性と豪快な交響性が、ベルリオーズのもつ強靭な生命力を的確に表現している。

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