パガニーニ

2017年03月26日


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シュロモ・ミンツが通常使用しているヴァイオリンは後期バロックの名匠、ロレンツォ・グァダニーニ製作の名器である。

この楽器自体美しい音色と潤沢な音量を誇っているが、低音から高音まで明るく澄んだ滑らかな音色と豊かな音量を駆使したミンツの奏法は、それだけでヴァイオリン音楽の典型的な美学を堪能させてくれる。

楽器を決して無理に鳴らそうとしないボウイングから紡ぎだされる知的でスマートなカンタービレやパガニーニに代表される超絶技巧を鮮やかに弾き切るテクニックは、レパートリーを選ばないオールマイティーの奏者であることを証明している。

その意味ではパールマンに共通しているが、ミンツにはパールマンの持っている解放的なサービス精神というか、ある種の媚のようなものが皆無で、情熱を内に秘めたクールな気品が感じられる。

このセットのCD7−8のバッハの『無伴奏ソナタとパルティータ』全曲では対位法のそれぞれの声部を流麗に歌わせながらも恣意的なところが少しもなく、構築性も充分に感知させている。

またもうひとつの無伴奏の対極にあるCD9のパガニーニ『24のカプリース』ではその悪魔的な恐るべき技巧を披露している。

協奏曲の中ではアバドとのメンデルスゾーンやブラームスにミンツの最良の音楽性が発揮されているが、バルトークやプロコフィエフでの鋭利で超然とした感性の表出でも引けを取らない。

またベートーヴェンではシノーポリの堅牢で構造的なオーケストラに支えられて冴え渡るソロも印象的で、終楽章でのテンポを抑えた敢えて名人芸を前面に出さない解釈にも説得力がある。

更に後半のソナタ及び小品集は彼のもうひとつのプロフィールを示していて、凝り過ぎない颯爽とした軽妙さが魅力だろう。

尚30ページほどのライナー・ノーツには収録曲目及び録音データの他に英、伊語によるこの音源の録音時期のミンツのエピソードが掲載されている。

ユニヴァーサル・イタリーの企画になるヴァイオリニストの系譜はグリュミオー、アッカルド、クレーメル、シェリング、そしてリッチと続いているが、今年2017年1月の新譜としてこのミンツ編がリリースされた。

当シリーズの弱点は何故かどれも網羅的な全集ではなく、選曲から漏れた音源が散見されることだが、現在入手困難な演奏も含まれているし、一応それぞれがブックレット付のバジェット・ボックスなので多くは望めないだろう。

しかしミンツは30代で大手メーカーへの録音をやめてしまったヴァイオリニストで、その後もコンサートを中心に演奏活動を続けている。

当ボックスに収録された以外の音源はそれほど多くなく、この13枚で彼の青年期の至芸が充分にカバーされていることは間違いない。

現在円熟期を迎えた彼のこれからの活躍にも期待したい。

ちなみにミンツがドイツ・グラモフォン以外のレーベルからリリースした現行のディスクは仏ナイーヴから指揮とヴァイオリンを担当したストラヴィンスキーの『兵士の物語』、米AVIE RECORSからのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全5曲及びヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲の3枚組、ブラームスの3曲のヴァイオリン・ソナタと2曲のヴィオラ・ソナタ及び共作のF.A.E.ソナタ第3楽章スケルツォを収めた2枚組があり、DVDとしてはクルトゥーア・レーベルの『' 82フーベルマン・フェスティヴァル』の2枚組、チャレンジ・クラシックスからのパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番などがある。

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2013年02月04日


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8つの国際コンクールで優勝歴を持つスーパー・ヴァイオリニスト、ユリア・フィッシャーが録音した、パガニーニの難曲「24のカプリース」。

パガニーニの「24のカプリース」は、バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」と並んで、あらゆるヴァイオリニストの目標である。

後者のバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」については、精神的な面において、弾きこなすのに相当な自己研鑽が必要であるが、前者のパガニーニの「24のカプリース」については、超絶的な技巧を要する難曲だけに、技量の面において、並みいる強豪ヴァイオリニストを寄せ付けない高峰に位置していると言える。

ユリア・フィッシャーは、いまだ20代の若手女流ヴァイオリニストであるが、その超絶的な技量にはとてつもないものがあると思う。

この悪魔のように聳え立つ巨峰エベレストを楽々と制覇していく姿は、彼女が若手最高峰のヴィルトゥオーゾの一人であることの証明と言えるだろう。

さすがは、様々なコンクールで優勝を成し遂げてきただけのことはある。

同曲を構成する各楽曲を、これだけ表情豊かに完璧に弾きこなす感動的な演奏は、これまであったであろうか。

技量だけを全面に打ち出した演奏ならば、これまでもいくつもあったと思うが、ユリア・フィッシャーの演奏は、そうした超絶的な技量をベースとしつつ、女流ヴァイオリニストならではの繊細とも言える豊かな感性を発揮し、全体として、テクニックよりは情感の豊かさを聴き手に感じさせる点が素晴らしい。

ピアニッシモの表現が多彩で、ダイナミックレンジを大きくとった演奏だが、微細なテクニックも申し分なく、それを強調するよりも、音楽全体を大づかみに表現した、やや草書体の演奏という印象だ。

SHM−CD化によって、ユリア・フィッシャーの研ぎ澄まされた技量や情感豊かさが、より鮮明に味わえる点も高く評価したい。

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2011年06月21日


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旧ソ連出身のアメリカの中堅ヴァイオリン奏者アレクサンドル・マルコフのデビュー盤。

彼は1963年モスクワの生まれ。ヴァイオリニストである父に手ほどきを受け、9歳で父と共にソリストとしてデビューしている。

1975年にアメリカに移り、1982年のパガニーニ国際コンクールで第1位に入賞、翌年にはカーネギー・ホールでデビューして大成功を収めている。

ことに《24のカプリース》は、歴代名盤に匹敵する名演。

ライヴ録音のためか、マルコフは終始奔放に自らの技術と感性を表に出し、スリリングな妙味のある演奏を聴かせてくれる。

時に鋭く張りつめた音の連なりが耳を疲れさせなくもないが、半面、きめの細やかさと表現の幅があるため、第2,4,9,15,21番のデモーニッシュな美をたたえた歌い口にはヴァイオリン・ファンを魅了するものがある。

解釈、表情付けは随所で個性的なものを示し、類型化しない才能を実感させる。

協奏曲も冴えた技巧を背景としながら、ときに大胆なまでの濃厚な表情を、ときにデリカシーに満ちた表情を自在に導き出していくマルコフの手腕は、なんとも鮮やかで、間然としたところがない。

伴奏も力のあるもので、独奏者の存在感をより確かなものとしている。

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2011年03月26日


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20世紀はパガニーニのヴァイオリン協奏曲の蘇演ラッシュであった。

第3番から第6番の計4曲が、シェリングやグリュミオーなど希代の名ヴァイオリニストたちによって蘇ったのである。

そしてとどめはこのアッカルドによる全集。

彼自らも第6番の蘇演を手がける一方、全曲カットなしの完全復刻、なおかつ各曲のカデンツァは自作もしくは手を加えたものを使用するなど、"アッカルドのパガニーニ"をアピールする。

至難の技巧的パッセージをイン・テンポでズバズバ決める痛快さ、抒情的旋律線のふるいつきたくなるような歌い回しなど、質の高い演奏で肉薄している。

"パガニーニの名盤ランキングの上位の座"こそ、誰にも譲らぬアッカルドの指定席だと言ったら、偏見のそしりを免れないだろうか。

だが実際、超絶技巧が連続すればするほど、ほとんど嬉々としてそれに向かい合う姿はまさに水を得た魚といったところ。

このような技術面が際立った曲は、つい新たに出る盤に目が向きがちだけれど、当アッカルド&デュトワ盤はすでに長い間最前線の位置を保ち続けている。

それだけ彼らの音楽性が、単なる表面上のことを超えて、洗練されたよさをもっているせいであろう。

事実、パガニーニの協奏曲は、アプローチの仕方ひとつで、かなり趣味の悪いものとなりかねない要素もはらんでおり、事実、そうしたディスクもいくつかあるのだけれど、ここに聴くアッカルドとデュトワとの共同作業は、そうした心配がまるでないといっていい。

個々の要素がていねいに、音楽性豊かに配慮されていて、演奏の出来映えとして、センスがよい。

しかも、充溢した時期にあったアッカルド(録音当時、彼は34歳頃である)なので、ヴァイオリニストとしての腕は冴えに冴え、パガニーニの協奏曲をスリリングに再現するだけの力も充分に備えている。

音色も輝かしく、よく歌い、立派な演奏だ。

指揮者デュトワがとっているスタンスも好ましい。

デュトワ指揮ロンドン・フィルが、天真爛漫なまでにさっそうとバックを務めているのも、この場合正解だ。

要所を押さえたデュトワの好サポートが強力な支えになっているのも特筆すべきだ。

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2010年10月19日


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ツェートマイアーは、日本での評価こそいまひとつだが、実力充分の名手。

《カプリース集》でも彼は確かな技巧とともに個性味豊かな表現を聴かせてくれる。

録音時45歳の円熟期に入っていたツェートマイアーは、彼自身2度目の録音となるこの演奏で、最も繊細で音楽的にこくのある演奏を繰り広げている。

技術面で注目されるだけでなく、音楽的な表情の冴えが散見され、そこにはツェートマイアーの豊かな感性も表れている。

鬼才パガニーニならではの名品ににして難曲《カプリース集》には、さまざまなアプローチが可能である。

純粋な技術の追求、イタリア的な歌ごころの強調、自我の強いデフォルメされた表現、逆にそれをつつしんだ即物的な行きかた…。

そうした中にあって、ツェートマイアーは若いころアーノンクールの薫陶を受けているだけに、単なる名人芸の披露に留まらない、作品そのものと直に触れ合うような演奏を聴かせる。

自筆譜から受ける印象を大切にして多彩な表情をつけていき、さらにいくつかの曲では反復や再現部で即興的な装飾や変奏を施す。

かくして19世紀前半のロマンティシズムの香りやパガニーニの音楽の独特な雰囲気(悪魔性、機知と知性)がよりいっそう浮き彫りにされている。

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2010年09月03日


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ツィンマーマンの日本での第6作。ただし録音は1984、85年に行われたもので、彼の20歳の時の演奏である。彼のソロ盤はこれが初めて。

録音に使われた楽器は、最初の12曲が1706年製のストラディヴァリウス、後半の12曲が1684年製のストラディヴァリウス。

ピアニストにショパンの《練習曲》がそびえたつように、ヴァイオリニストにはパガニーニの《カプリース》が課題としてのしかかっている。

名演奏家の多くはこの挑戦状に若くして立ち向かい、己の技術と音楽性をアピール、結果的に演奏家としてのお墨付きを獲得することになるが、ドイツの俊英ツィンマーマンは20歳の時にトライ、驚くべき業績を記録している。

その演奏は豪快にして華麗、しかも信じ難い柔軟性とスピード感を背景にした、いかにも新世代らしい名演を堪能させる。

「難曲に立ち向かう」のではなく、「難曲だから楽しんでしまった」、そんな心と技術のゆとりすら残した演奏であり、やはりただ者ではなかったことを実感させる。

ツィンマーマンが20歳の時の録音だが、ここで最も感心させられることは、彼がすでにおとなの配慮をもって演奏至難なものを含むこれらの曲を技巧誇示ではなく音楽を聴かせるために弾いていることだ。

かといって技巧的に未熟なところがあるわけではまったくない。

自らの、そして現代の感性に従った瑞々しく爽やかな歌であることも、何より素晴らしい。

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2010年08月29日


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マイケル・レビンは10代で神童といわれ、20代半ばには一線を退いてしまい、30代半ばでニューヨーク・フィルの奏者として第二の人生を開始した矢先に自動車事故で他界してしまった。

若くして他界したレビンは、録音の量が少ないためか、その実力が充分に認識されていないきらいがあるが、滅多に例を見ない天性のスーパー・テクニシャンであり、桁外れの切れ味を誇った。

同時に明るく澄んだ美しい音色を兼備したヴァイオリニストであった。

そして、彼のテクニシャンぶりが最高度に発揮されたこのパガニーニは、どんな困難なパッセージでも余裕をもって弾き切られている快演で、さらにそこでは、彼の甘く透明な音色の魅力や適度にスリリングな表情の冴えなどもが光彩を放っており、ヴァイオリンの名人芸を堪能できる表現が実現されている。

彼のテクニックは、パールマンやミンツをも上回っているといってよいだろう。

この難曲のテクニックに特に精度の高い再現を可能たらしめた演奏としてトップにランクされるのは、このレビン盤であろう。

鍛え抜かれた左手のテクニックもさることながら、ムラのないボウイングも出色である。

レビンの美音に彩られた華やかさでも他のヴァイオリニストにひけをとらないが、弾きまくるといったものではなく、優しさと慈しみのある、しっとりとした歌の深さにあふれているのが貴重だ。

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2010年07月03日


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1976年生まれのカナダの俊英、ジェイムズ・エーネスによる《カプリース》全曲。1717年製ストラディヴァリウスを使用。

情熱的に弾けるような若々しさは当然として、彼の演奏はそれ以上に大きな構えで音楽を造形する感性も十分に備わっていることを感じさせる。

つまり、単にテクニックだけで弾きまくるのではなく、全曲の後半に行くに従って徐々に音楽的表現密度を高めて、その結果有名な終曲に到達するといった具合である。

ピアニストは年をとるにつれて、思想が深まってゆく例にこと欠かない。それに対し、ヴァイオリニストは若いうちが花という場合が少なくない。

ヴァイオリンという楽器には若い感性に訴えるなにかがあるのだろう。ちょうど抒情詩が若い詩人の感覚にぴったりなように。

ジェイムズ・エーネスがこのディスクを録音したのは1995年だから、この《カプリース集》は19歳での録音ということになる。

天下の難曲のレコーディングのスタンダードな意味での名演に、まだ未成年者であった人の演奏を選ぶとは、思えば大変なことである。

だが、それが、ごく自然にできてしまう。

いま聴き返しても、まことに新鮮な佳演で、素晴らしく高い技巧のかたわらに、爽やかなリリシズムも香らせ、ざらにはいないヴァイオリニストである彼を再確認させる。

すらすらと弾き上げられているために、パガニーニの"悪魔的"な面がやや淡いともいえるが、いわゆる熱演型とは対照的に、すっきりと曲の佳さを告げて秀逸である。

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2010年06月28日


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この《カプリース》全曲は、私が神尾真由子のベスト録音として将来語り継がれるであろうと確信する超弩級の名演である。

彼女は、ここでその天賦の資質を完全に開花させており、テクニック的にも音楽的にも驚異的な冴えを発揮し、まさにデモーニッシュとさえも言える名技を披露している。

これを一聴したときの驚嘆は、私のうちで常に鮮やかに甦る。

難曲を相手に一歩も引かぬどころか、彼女はそれを完全に掌中に収め、非のうちどころもない奏楽を聴かせる。

しかも、聴きどころは、そこにとどまらない。

さらに感動的なのは、音楽がまさしく生きて躍動していることである。

奏でる音符が、自ずから"音楽"となって色や香りを発していくようなこの感じは、稀な天性の持ち主しか発揮できまい。

彼女が伝える一種の"妖しさ"、ヴァイオリンの奥にこもる"すだま"の声。

これがあればこそ真にパガニーニの音楽となる。

パガニーニの鬼気迫る一面を最も鮮烈に伝える演奏でもあり、将来は歴史的名演としての評価を確立することであろう。

世界中がMayukoに脱帽するのが、よくわかる。

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2010年06月16日


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パガニーニは自作曲の楽譜を決して人に見せようとはしなかった。その超絶的な奏法の秘密を知られるのを極度に恐れていたからである。

そんな彼の生存中に出版された唯一の独奏曲が、24の小品からなるこのカプリース。

フラジオレットを除くヴァイオリンのあらゆるテクニックが盛り込まれ、高度な練習曲としても重要だが、芸術作品としての価値もきわめて高い。

1958年に弱冠17歳でパガニーニ・コンクールに優勝して、"パガニーニの再来"といわれたアッカルドは、1962年にもこの曲集を録音しており、それも正確な技を存分に駆使した若々しい覇気にとんだ快演であったが、15年後のこの演奏は、熟達した芸がいかにも風格ゆたかに発揮されている。

切れ味の良い技巧と明るく冴えた音も大きな魅力で、難技巧も決して技に角立てることなく、シューマンが「おびただしいダイヤモンドを含んでいる」と評した24曲の多彩な世界を、しなやかな確信にとんだ表現によってスケールゆたかに再現している。

技巧の派手さはさほど前面に出さない(むしろ甘いと見られるかも知れない)が、たっぷりと的確で、音色が美しく、そのバランスがとてもいい、暖かい演奏だ。

技巧的にも表現においても、この曲集の最も洗練された演奏のひとつだろう。

このパガニーニの作品が要求している技術上の難しさ、そして、その上に成り立っている弦楽器固有の美しさ、各表情の多彩さというところで、アッカルドの身のこなしかたは実に音楽性ゆたかと言えるだろう。

単に技術面だけで言うなら、アッカルドに匹敵しうる奏者は他にも数多く散見されるけれど、トータルな意味で彼に肩をならべてくる者は多くない。

ヴァイオリン奏者としての彼のよさがスムーズに示された演奏内容である。

またこの作品では、超絶技巧の開陳とともに、美しいイタリア的なカンティレーナの魅力もが大きな聴きどころになっている。

そして、そうした魅力を最も本来的に捉え、それを魅惑的に表現した演奏としては、アッカルドのこの新盤が特に注目される内容を示している。

そうしたところに、パガニーニのスペシャリスト、アッカルドの面目躍如たるものがある。

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2010年06月02日


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技術も素晴らしく、コモンセンスのある名演として万人に薦められるのは今は亡きシェリングの盤。

1975年、独奏者57歳の録音で、我を張ることなく、作品そのものの情緒を聴かせてくれる。

パガニーニのヴァイオリン協奏曲の全曲録音はやっていないシェリングだが、第3番を蘇演したほどパガニーニへの思い入れは深かった。

真摯に音楽と対決し、腕にまかせて弾きとばさず、じっくりと訴えかけるパガニーニだ。

彼が弾くパガニーニの協奏曲は技巧展示曲の域を脱し、音楽作品としての魅力をたたえているのが特色。

美音を駆使、難技巧をそれと感じさせないで鮮やかに克服している。

シェリングは全6曲中の4曲を録音しているが、代表作と言うべき第1番に、彼の持ち味のすべてが集約されている。

併録のヴァイオリン協奏曲第4番でもパガニーニ独特の抒情性を歌い上げる気品ある1枚。

彼には138年ぶりに蘇演をはたした第3番の歴史的名演もあるが、それに劣らずこの演奏はシェリングのパガニーニを強く印象づける。

旋律はもとより技巧的な箇所の隅々まで美音で丹念に弾きまくる。

かくも美しく"音楽的"に聴かせる演奏はあっただろうか。

第1番の終楽章の驚嘆すべき弓の使い方、第4番の第2楽章のフラジオレット奏法の美しさなど、パガニーニをこれだけ流麗にまとめあげる完璧なテクニックと音色を持ったソリストは他にいない。

ギブソン指揮のオケも流麗に鳴っており、大変美しく、イタリア的雰囲気をかもし出している。

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2010年05月31日


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かつてパガニーニのスペシャリストとして鳴らしたリッチの演奏は、左手のテクニックに意外にラフなところもあるが、実にスリリングで切れ味のよい快演を聴かせている。

超絶技巧を要求されるこの曲の全曲盤の名演は他にもあるが、リッチのこの演奏には遠く及ばない。

難曲を技術的に克服するのみならず、技術そのものを楽しませるコツを心得た演奏といえるだろう。

逆にいえば、超絶技巧練習曲としてでなく《カプリース》を見事に"作品"として聴かせる演奏なのである。

パガニーニの《カプリース》を完全にこなすには、特殊な才能、音楽感覚以前に運動感覚を必要する。

名だたるヴァイオリニストといえども、皆が皆《カプリース》を鮮やかに弾きこなせるわけではない。

だが、リッチは違う。

《カプリース》全24曲を楽々と弾きこなし、その卓越した技量で聴き手を魅了する。

パガニーニをここまでこなし、それを"芸"として確立した現代のヴァイオリニストを、私は寡聞にして知らない。

とにかくリッチが弾くパガニーニには、技巧克服の楽しさのみが感じられ、技巧に振り回される苦しみは一切感じられない。

ここが他のヴァイオリニストと決定的に異なるところであろう。

リッチは、実はかなり粗削りなところもあるが、まさにアクロバット的といえる鮮やかな快演を聴かせている。

厳密に言えば名人芸ではなくその精神を楽しませてくれる演奏といったところであるが、技巧そのものをこれほど楽しませてくれることは、それ自体貴重な持ち味として注目される。

リッチ独特のメリハリの効いた快い表現は、生理的な快感さえも与えてくれる。

ここまでくると誰にも真似できない堂々たる"芸風"と呼ばねばなるまい。

超絶技巧は彼にとって大向こうを相手にミエを切るための小道具みたいなものだ。

パガニーニもきっとこういう芝居小屋的な雰囲気で弾いていたに違いない。

リッチは異能の奏者であった。

1959年の録音だが、いまだつややかな美しさを保っている。

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2009年07月20日


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パールマンの20代後半の演奏。

ヴァイオリンの超絶技巧をもりこんだこの難曲を、パールマンはこともなげに楽々と、そして見事に弾ききっている。

「魔神」とまで恐れられたパガニーニが開発したといわれる極めて高度な難技巧が集約された《24のカプリース》は、技巧のための練習曲とみなされた時代もあったためか、ハイフェッツをはじめとする20世紀前半の名手たちはほどんど録音していないし、演奏家にとって録音する時期が難しい作品でもある。

1960年代後半から活躍をはじめたパールマンにとっても、最良の時期の録音だったに違いない。

そのほとんど完璧といえる研ぎ澄まされた技巧のすばらしさは、アルペジオやスピッカート、各種の重音奏法など、さまざまな難技巧に余裕すら感じさせるし、作品本来の魅力を鮮やかに再現している。

パールマンは、4歳の時小児麻痺にかかり、以来下半身が不自由となったが、彼の演奏にはそうしたことからくる暗さはみじんも感じられない。

むしろ、持ち前の美音を生かしながら、のびのびと明るい音楽をつくりあげているが、これは、そうした彼の持ち味が最高度に発揮された演奏といえよう。

各曲のもつ味わいを、表情豊かに、時には幻想的に表現しており、聴いていて飽きることがない。

同曲の演奏にときおり見られるような自虐的な悲壮感はなく、その音色はどこまでも暖かく、どの曲からも演奏という行為の愉悦が感じられるところが好ましい。

パールマンにとっても二度と望めぬ名演だろう。

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2009年06月16日


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これは数多いパールマンの録音の中でも特にすぐれたもので、歌う楽器ヴァイオリンの魅力を手放しで謳歌したような名演。

やはりのびのびと屈託のないスムーズな技巧でパガニーニの超絶技巧を再現した、素晴らしいものといえよう。

アッカルド同様、立派な弾きっぷりで、思い切りカンタービレを効かせた第1&2楽章も卓抜だが、ことに素晴らしいのは浮き立つようなリズムを軽やかに表現した第3楽章で、切れのよいリズムが躍動し、この楽章のしゃれた気分を見事に弾きあげている。全曲愉しさの限りだ。

全体に明るく甘美で、この曲がヴィルトゥオーゾのための難曲中の難曲とは思えないほど、すっきりと明快に、楽天的な気分で演奏している。

テクニックも抜群で、これほど小粋で爽快なスタッカートを弾ける人はそう多くない。

五嶋に比べるとパールマンには、一種の甘美さといった要素も含まれていて、ふくよかな音色の美しさはパールマンならではだ。

五嶋のような熱情的な曲への没入はみられないが、より覚めた感覚の客観性が、かえって一般的といえるかも知れない。

サラサーテもパールマンの代表的な名演で、次々と登場する技巧の粋の見事さに、しばし時間を忘れてしまう。

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五嶋みどりのヴァイオリン、スラットキン指揮ロンドン響が、実に切れの良い名演を聴かせる。

五嶋はパガニーニを単に技巧的な作品として再現せず、イタリア風の歌に溢れた美しい音楽として演奏しているのが特色といえよう。

スラットキンの見事な支えに乗って、のびのびと若い個性を発揮させている。

これを録音したときはまだ15歳だったが、決して幼さとか可愛らしさといった少女の面影がなく、完全なアダルトのヴァイオリニストとして成熟した演奏に終始しているのは、驚嘆に値すると思う。

第1楽章の満を持した自信たっぷりな出と間の感覚はまさしく大人のもので、15歳の少女の演奏とは思われない。

音色には粘りがあり、巧みなポルタメントは堂に入り、エコーの優しさ、美しいレガート、エレガントな歌など表情がとても豊かで驚嘆ものだが、上品さと格調を失うことはまったくない。

スラットキンの指揮も充実度満点の伴奏ぶりで、オーケストラを充分に鳴らし、豊かなエネルギーを引き出しており、トランペットの生かし方などが実に楽しい。

チャイコフスキーの2曲も落ち着いた演奏で素晴らしく、音と表情がどこまでものびていく感じで魅力的だ。

これはヴァイオリン音楽の傑作CDといえる。

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2009年01月11日


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パガニーニの「カプリース」には、アルペッジョ、3度、6度、10度の重音、ダブル・トリプル、左手のピチカートなど、ヴァイオリン演奏のあらゆる技術が盛り込まれている。

ミンツにとってパガニーニの無伴奏曲は、うってつけの作品だろう。

ミンツのこの曲は彼がさっそうとデビューしてまもないころの録音で、若々しい輝きに満ちている。

達者なテクニックで物怖じしない元気さ、たくましさで弾ききっている。

音色の美しさと技術の高さは、若手として、こんにち聴き返しても出色のものがあろう。

流麗すぎて魔術的な迫力には欠けるかもしれないが、ミンツのはつらつとした演奏は好むところ。

技巧の高さは定評もので、まずその安心感がある。

すっきりしすぎているかも知れないが、さっそうとして、丁寧な弾きぶりにも好感がもてる。

第1番でミンツはまるでプレストのようなスピードで弾きとばし、第5番ではあたかもオートマティックな機械で弾くかのごとく、力強く再現している。

おそらくパガニーニも予期しなかったであろうほどの技術的完成度をこの2曲で示している。

とてもさわやかなパガニーニだ。

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2008年11月12日


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LP初期の名盤で、2曲ともフランチェスカッティの唯一の録音。

全盛期のフランチェスカッティの美音が時代を超えて迫ってくる演奏で、おそらく彼のベストCDといえるだろう。

その耽美的な音色は聴き手をぞくっとさせるものをもっている。

パガニーニには往年のクライスラーを豊麗にしたような歌の陶酔があり、サン=サーンスには水もしたたるばかりの蠱惑がある。

フランチェスカッティに対するわが国での認識と評価は、必ずしも当を得たものであったとは思えない。

彼の音の艶やかさと響きの均質な美しさは、20世紀前半からのヴァイオリニストたちの中でも出色であり、その演奏は、音域による響きの不均衡などはまったく考えられない。

そして、それを基盤とした音楽表現が、充分に、しかもきわめて自然に展開されているために、かえって聴く人への印象が強烈なものになっているところもある。

彼のすぐれた録音は、かなり数多く残されているが、ミトロプーロス/ニューヨーク・フィルとのサン=サーンスの第3協奏曲は、その特質が巧まずして生かされているという点で、やはり傑出したひとつといえる。

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2008年04月06日


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賭博に明け暮れ、無一文になったパガニーニは、ある商人からヴァイオリンを借りて演奏会の舞台に立った。

コンサートは大成功、熱狂した聴衆を見て商人は言った。
「どうぞ、このガルネリをあなたのものとして、いつまでもお使いください。ただし、あなた以外の誰の手にも、この楽器を渡さないと約束してください」と。

パガニーニは終生この楽器を愛した。彼の死後人手に渡ることになかったこの楽器が1958年《第2のパガニーニ》の手に渡った。パガニーニ国際コンクールで第1位に入賞し、その栄誉をたたえられた、アッカルドが手にしたのである。

この演奏はそうした彼の代表的な名演のひとつで、《魔神》パガニーニの音を現代に伝える意味でも貴重だ。

パガニーニの音楽の魅力を満喫させられる。美音家のアッカルドが魅惑的なヴィヴラート、節回し、ポルタメントといった高度な技巧が鮮やかに駆使され、まさに目の覚めるような名人芸だ。

アッカルドのヴァイオリンにはしたたるような官能美と愉悦感があり、小気味よいテクニックを用いながらも、いつも心の裏付けを伴って曲想を幅広く描いてゆく。

そして新鮮な感覚で生み出される、その華やかな美音は、とてもこの世のものとは思えない輝きを持っている。

胸のすくような冴えた技巧と、イタリア人らしい旋律の歌わせ方が聴きもので、唖然とするほど鮮やかに弾きあげている。

第1番の第1楽章のソロを聴いただけでも、この人がパガニーニを演奏するために生まれてきたようなヴァイオリニストであることが、よくわかるであろう。

特に第2番は全体に若さがあふれ、気迫のこもった見事な演奏だ。

デュトワの指揮は雰囲気満点で、充実感も立派だ。

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2007年12月31日


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五嶋みどりは、10歳の時アメリカに渡り、ジュリアード音楽院で学んだが、バーンスタインやメータなどにその才能を認められ、以来、アメリカやヨーロッパなどの主要オーケストラと次々に共演を重ねてきた。

特に14歳の夏、タングルウッド音楽祭でヴァイオリンの弦が切れるというハプニングにもかかわらず、落ち着きはらって演奏を続けたという出来事はセンセーショナルに報道されたが、ここでも、そうした彼女の自信とたぐい稀な才能を強く感じさせる演奏となっている。

若くしてすでに《伝説》の持ち主である五嶋に最も感心するのは、彼女のこの作品に対する繊細な注意力をもった知的アプローチである。

超絶技巧を集大成したこの曲は、弾き手はその技巧を大げさに発揮させたい誘惑にかられるはずだが、彼女はその誘惑から完全に一線を引き身を守り、作品におどらされたパガニーニの亜流ではない自分の音楽を表現している。

五嶋は、この難曲を極めて精確に弾き切っているが、それ以上に驚かされることは、彼女がこの作品を完全に高度な芸術作品として表現している点にある。

繊細な表情やみずみずしい歌が際立つ彼女の表現は、スリリングな感性の冴えや即興的な閃きをも随所に示しており、それは、聴き手を強く惹きつけずにはおかない独自の感覚的な魅力をかたちづくることとなっている。

ことに、作品のもつ甘美な美しさを見事に引き出しているのは立派だ。

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