オイストラフ
2008年11月30日
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形式と内容のどちらもこの協奏曲は斬新である。
夜想曲、スケルツォ、パッサカリア、ブルレスカの4つの楽章は協奏曲というより交響曲のスタイルに近い。
ヴァイオリンのパートは、至難の技巧が要求されているにもかかわらず、名人芸的な曲になっていないのは、その高度な技巧が、ひたすら内面的なものを表出するために向けられているからにほかならない。
オイストラフは、恐るべき凝縮力でこの曲を演奏している。第1楽章にあたる夜想曲が、オイストラフの求心的な苦悩の声を伝え、指揮のミトロプーロスがそれに悲劇的な陰影を添えている。
夜想曲の抑制した表現がスケルツォで解き放たれ、まるで悪魔の饗宴のような(オイストラフは邪悪で悪魔的と形容した)ところはミトロプーロスの独壇場である。
しかし、なんと暗く美しい音楽なのだろうか。
他にコーガン盤も注目すべき演奏内容。
カップリングのチェロ協奏曲はロストロポーヴィチに捧げられているだけに、全編に自信と誇りのみなぎった演奏である。
ロストロポーヴィチは実に美しく深みのある音色で、表情豊かに弾きあげていて、聴かせる。
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2008年09月23日
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新旧数多くの録音があるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲だが、1958年の録音ながら今もってこのオイストラフ盤を推す。
1974年に66歳で亡くなったオイストラフの、心技ともに最も円熟し、最も脂の乗った時代の演奏で、おそらく彼自身も会心の作と思ったのではなかろうか。
スタイルとしてはやや古めかしさを感じさせるものの、これほど曲の内面を深く掘り下げた演奏というのも少ない。
一点一画もゆるがせにしない整然たる演奏で、それでいて音楽は暖かく、作曲者の肌のぬくもりといったものを感じさせる。
たっぷりとした音色を基盤に、健康的な明るさと甘美な歌にみちている。
線が太く、たくましく、旋律を朗々と歌わせている点も忘れ難い長所で、なつかしい魅惑とスケールの大きさによって、ひとつの規範的な演奏となった。
オイストラフ唯一の共演となったクリュイタンスの格調高いバックも見事というほかはなく、すぐれた音楽性をもとに堂々と立派に振り切っている。
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2008年08月25日
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交響曲は、オーマンディの数多い録音の中でも注目すべきものだ。
演奏は平衡感が強く旋律を存分に歌わせ、音楽的な充実感が作品の魅力を直接的に感じさせる。
しかも終楽章は熱気にあふれ、曲をじりじりと高みに押し上げてゆくさまが素晴らしい。
作曲者がオーマンディの演奏を絶賛したと伝えられるのも不思議ではない。
ヴァイオリン協奏曲は、ヴァイオリンという楽器がもつ限りない表現力に圧倒される破格の名演である。
確かにオイストラフが最も充実していた時期の録音だし、世代交代の点でも向かうところ敵なしの状況下の自信に満ちた演奏ではあるが、この恰幅のよい、男らしい表現は前人未踏の境地であり、ヴァイオリンの新たな可能性を切り開いた画期的録音として今なおレコード史上に君臨している。
しかもオイストラフの演奏には、この協奏曲に込められた寂寥感や幻想味といったものも心憎い巧さで盛り込まれており、味わいの豊かさの点でも申し分ない。
シベリウスらしい北欧の香りにはいささか乏しいが、弱音を重視した流麗な演奏であり、オイストラフがこの音楽に身を捧げているかのような愛情が感じられる。
特に、第2楽章の哀調や、ほとばしる情熱が聴きものだ。
オーマンディの指揮も充実、平板に陥ることなく、演奏をドラマティックに盛り立てて聴き手を離さない。
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2008年01月16日
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オイストラフとオボーリンによる記念碑的な遺産であり、20世紀の演奏芸術の最高峰といえるアルバム。
それは音の美しさや技術の練磨とともに、2人がきびしい客観性をもって楽譜を見つめ、あらゆる余剰を切り捨てた上に自分たちの音楽的活動を注ぎ込んだためだ。
そこに高貴なほど格調の正しさをもち、あらゆる音符に意志と感情を通わせた稀有の名演が成立し、深い精神性をもって聴き手を押し包む。
現代の最も普遍的なベートーヴェン像がここに屹立している。
オイストラフとオボーリンは全体に遅めのテンポをとり、それによって豊かな表情を付けている。
「クロイツェル」がそのいい例で、第2楽章はロマン的香気にあふれる演奏。
両者ともに絶頂期にあった演奏で、しっかりとしたテクニックに裏づけられ、表現意欲に燃えている。
現代となってはそのスタイルに古めかしさを感じないでもないが、ベートーヴェンのソナタ演奏を代表する名演といえる。
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2008年01月06日
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ブラームス/ヴァイオリン協奏曲の名盤は数多いが、私はオイストラフを第一に推す。
まずクレンペラーとの60年盤だが、オイストラフは元来が楽天的なヴァイオリニストなので、激しさや厳しさには乏しいが、若々しい気迫の感じられる演奏だ。
オイストラフは、おおらかな気分でじっくりとひきあげており、そのコクのある表現はなんとも素晴らしい。
なによりも、しみじみと心にしみいるような美しい響きが聴きもので、大変印象的だ。
特に、第2楽章の出来がすぐれている。
クレンペラーもフランスのオーケストラを指揮しながら、さすがにずっしりとしたブラームスの味をたっぷりと満喫させてくれる。
セルとの69年盤は、オイストラフならではの蠱惑的な美音を駆使し、人の心を捉えずにはおかないカンタービレと大家の安定感をもったブラームスだ。
しかし、そうした大柄で温かい人間味が楽天につながらず、きりりと締まった音楽の像を結んでいる。
それがときに底知れぬ魂を実感させ、さらには胸に熱いものをこみあげさせもする。
セルの指揮には一分の隙も見られない。
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